やりすぎた魔法練習!大迷惑の気配!
翌日の朝、シオン達は大魔の森にいた。
「さて、魔法の練習をしようか。」
シオンは天体魔法と大地魔法が適正だ。この二つは希少魔法と呼ばれるものであり、魔法の中でも最強と呼ぶにふさわしい効果になっている。と先ほどエルに教わった。
「エル、どうすればいいの?」
「まずは魔力を感じるところからね。ご主人様は(スキル・真実の目)を持っているわよね?まずはそれを使ってみてくれるかしら?」
「はいよ。」
そうしてスキルを発動させる。すると自分の中にある何かと空気中に漂っている何かが見えた。おそらくこれが魔力なのだろう。
この世界において魔力とは自然の一部であり、全ての自然の事象に対して魔力が関わっているということが理解できた。地球のある世界とは根本的に構造が違うのだ。
「感じ取れたよ。それに魔力はいろんな色をしているね。これが属性なのかな?」
「さすがご主人様ね。そうよ、ただ希少魔法に色は存在しないわ。というより、自然に存在する魔力を自分の体内に入れると属性が勝手に変化するのよ。そういう体質の者しか使えない完全オリジナル魔法が希少魔法よ。ただ、魔力を全て自分色に染めてしまうから他の魔法は使えないわ。」
「そうなのか。まあとにかく使ってみようかな。」
「魔力を自分の中で圧縮させて、起こしたい属性に関わる事象を想像するだけで神であるご主人様は魔法が使えるはずよ。」
「わかった。じゃあ…大地魔法を使ってみるね。」
そう言った瞬間エルとミカはシオンの中で魔力が完璧にコントロールされているのが感じられた。
「さすがご主人様だ。」
「本当ね。無駄がほとんどないわ。」
シオンは地面に両手をつき圧縮した魔力を放つ。すると、シオンを中心に半径20メートルほどの魔法陣が生まれる。その魔法陣がまばゆく輝き、大地魔法が発動した。
「大地魔法発動!」
そして、この世界が大きく揺れた。世界の全ての場所で被害が出た。作りのあまい建物などは壊れ、多くの負傷者を出した。これはこの世界において地の怒り(イーラクエイク)として語り継がれた。だが、ほんの数人だけはこれが魔法によって人為的に引き起こされたのだと感知していた者たちがいた。
この日を機に多くの力ある者たちが激しく活動を始める。
ここは大魔の森中央の奥深く、そこにはある竜の塒がある。一体のドラゴンが目を覚ます。それは世界竜アトム。この世界において最上位種の存在であり、その強さは神に匹敵するといわれる。
「魔力の中に神気が含まれている…。この世界に新たな神が降臨されたか。だが、この力…。今回の方は、危険かもしれぬ。おい!イグニール。いるかっ!」
アトムがそう呼ぶと、アトムより一回り小さな竜が炎と共に現れた。周囲の気温が一気に上がる。太陽そのものが竜の形をしたと言われるドラゴン。太陽竜イグニールだ。
「何の用だ?まあ言わずとも想像はついているがな。」
「話が早くて助かる。新たな神が降臨された。行ってくれるな?」
「あぁいいだろう。すぐに出発する。それではな。」
イグニールは全身から炎を吹き出し忽然と姿を消した。
「まだ安心はできないがイグニールならば良い方向に導けるだろう。」
再びアトムはゆっくりと目を閉じた。
トウカ国の王城の一室。そこはいつも以上に騒がしくなっていた。理由はもちろん大地震だ。
「何が起こった?」
「被害の状況は?」
とてもあわただしい。それを見ていた壮年の男が杖を強く地面に叩きつけた。この男こそトウカ和国の王。ジオラ・フォル・トウカだ。
「静まるのだ!冷静に事に当たれ。そして、イシュタル様に協力を要請するのだ。騎士団長リヒト・セルマーよ。行ってくれるな?」
王の一番近くにいた女性が胸の紋章に手を当て返事をする。
「お任せください。それでは行ってまいります。」
「うむ。頼んだぞ。他の者達は被害状況の確認を急務とせよ!」
「「「はっ!」」」
そこにいる全員が返事をし行動を開始した。先ほどとは見違えるほどに統制が取れており、これだけでこの王の手腕がうかがえる。そしてリヒトはイシュタルに会うべく教会の孤児院に向かった。
トウカ和国の教会では多くの祈りをささげる者達であふれていた。
「大変なことになりました。」
教会の隣にある孤児院の女性がそう呟く。
「イシュタル様、魔力に神気が含まれていることを確認しました。アイデアルを調べに向かわせています。」
「わかりました。ならば私たちは子供たちの元へ行きましょう。」
2人は急ぎ足で孤児院へと入っていった。
シオンは肩で息をする。魔力をかなり消耗していた。だが、興奮もしていた。
「魔法ってすごいね!地震も起こせるんだ。おっと。」
ふいにシオンの体が倒れそうになる。ミカとエルが急いで近づき支えた。
「素晴らしい魔法でした。「最高だったわ。」
シオン至上主義の二人にとって世界への被害は関係なかった。また、シオン自身も神としての精神変化の影響か。それとも魔法への感動による失念か。気に留めた様子はなかった。
「ありがとう。少し休もうかな。」
「では、準備します。エル、ご主人様を頼む。」
そう言ってミカは少し離れると(スキル・創造)を使い簡易的に小さめのログハウスを建てた。
「ご主人様お入りください。」
「すごいな。快適そうだ。」
入ると中は教室ほどの広さがあった。敷いてあったふかふかの絨毯に寝転がる。とても気持ちがいい。すると疲れもあってか、そのまますうっと眠ってしまった。
「うふふ、やっぱりご主人様寝ちゃったわね。」
「うむ。この寝顔を見られただけでこれを作った甲斐があるというものだ。」
「そうね。相変わらずかわいいわっ。」
そう言いながら二人はシオンを起こさぬようにそっと抱き上げ寝室へと運んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます