初めての野営、魔法発動!勝手に…

 アルテミア王国に向かう途中、俺は非常に気になることを聞いた。それは、自分の外見についてだ。簡潔に言えば視点が明らかに低い。エルとミカと比べると、より小さく感じる。




「なあ。俺って何歳くらいに見える?」


「うーん。10歳くらいねぇ。」「同じくです。」




 やっぱり。まあ自分自身外見はそこまで気にしない。それに前世の顔も思い出せなくなっているしな。ただ、この人を見上げる違和感は慣れていくしかないか。と考えていると。


「ご主人様。川が近いです。日も暮れてきたので野営をしましょう。」




「そうだな。確かマジックバックにキャンプセットがあったはず。おっこれこれ。」


 マジックバックから少し大きめのテントなどを取り出す。


「結構立派だな。中は……。」




 言葉が出ない。驚いた。中に入ってみると、家具のついた10畳ほどの部屋になっていた。とっさに(スキル真実の瞳)を発動する。




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名称:マジックテント


レア度:★×7


効果:空間魔法が施された魔法のテント。


   魔力を感知できない者はこのテントを認識できない。


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 すごいものが出てきたな。


「そうなると俺は無意識に魔力を感知できているのかな?」


 ボソッと口に出す。するとミカが教えてくれた。




「おそらく真実の瞳のスキルでテントを認識されているのでしょう。」


「なるほど…ん?なんでスキルを知ってるの?」


 エルが野営の準備をしながらも答えた。




「守護天使として応じる際にご主人様の情報は私たちに送られることになっているのよ。その情報開示が守護天使召喚の唯一のリスクね。安心して。魂の繋がりによってその情報は確実に守られるから。」




 確実というくらいだから安心だろう。それにスキルを知っておいてもらった方がさっきみたいに解説されて便利だな。よし、とりあえず今日はマジックボックスにある食糧で食事を済まそう。




「それじゃあ食事にしようか。」


「そうですね。」「そうね。」




 そして、完全に日が暮れた。




 見上げると満天の星空がどこまでも広がる。とても美しい。先ほどテントにあった簡易ベットで寝ようと思ったのだが、思いのほか興奮していて眠れなかった。本人は気が付いていないが、(スキル超健康体)のおかげで、睡眠はさほど必要ない。具体的に言えば、1か月は飲まず食わずの状態で歩き続けることができる。




「眠ってていいんだよ?」


いつの間にか後ろに控えていた2人に声をかける。




「大丈夫です。」「大丈夫よ。」


 今日半日ほど歩いていたというのに2人は疲れた様子をまったく見せなかった。おそらくステータスがとんでもないんだろう。




「そっか。」


 俺は再び空を見上げた。そこで自分の中の何かが膨れ上がり魔法が発動した。


(天体魔法・星読)




 頭の中に映像が流れる。それは豪華な広い部屋に何人もの日本人だろう高校生が現れた瞬間だった。そして、困惑していた集団に一人の若い女性が声をかけた。




「ようこそ、勇者様方。どうか魔王から私たちの国をお救いください!」


そこで映像が途切れた。ふらっと体が倒れる。ぼすっ。


「大丈夫?」




後ろから抱き着くようにしてエルが抱えてくれた。女性らしい匂いが鼻をくすぐる。


「ありがとう。どうなったの?」




「おそらく魔力の使いすぎでしょう。命に問題はありません。」


すぐそばに来ていたミカが答える。




「…そっか。…眠くなってきたよ。」


そう言った頃にはシオンはもう眠っていた。




「うふふ。かわいい。」


「うむ。同感だ。…サマエル、私にも抱かせてくれ。」


「えぇいいわよ。はい。」


「おぉご主人様。とても愛らしい。」


「さぁベットに行きましょう。ご主人様を休ませなきゃ。」


「そうだな。」




そういって二人はシオンと共にテントへと入っていった。








 目が覚めると俺は布団に寝かされていた。体の調子を確認する。


「うん、大丈夫だな。」




 そう言いながらベットから出て体を伸ばす。テントを出ると朝食が準備されていた。


「おはようございます。ご主人様。」「おはよう、ご主人様。」


「2人共おはよう。準備してくれたんだ。ありがとう。」




 平然とあいさつを返しながらもその光景に驚いた。なぜならそこには昨日までなかったはずのイスとテーブルが置いてあったからだ。しかも、それらの家具には、丁寧に装飾が施されており、自然の背景と相まってとても幻想的だった。




「それじゃあ食べようか。いただきます。」


「「いただきます。」」




 おいしい。食材はわからないが、まるで高級料亭の朝食のようだ。夢中で食べる。気が付くとすべて完食していた。


「ご馳走様。おいしかったよ。これからも料理については任せるよ。」


「はいっ!お任せください。」「えぇ任せて。」




 うん。朝から美人二人の手料理とは最高だね。などと考え、少しゆっくりする。


「そういえば、この世界には冒険者はいるのかい?」


「いるわよ。ご主人様の想像通りの感じかしらね。」




 なるほど。つまり、ラノベによくあるパターンのだな。それにしても、冒険者ってやっぱりあこがれがあるよな。




「せっかく異世界に来たんだし、なってみようかな。」


「今向かっている町に冒険者ギルドがあります。身分証にもなるのでよろしいかと。」


「そっか。じゃあ町についたらギルドに行こうか。」


「はい。」「わかったわ。」




 そうして町へと出発し、しばらく歩いた。後から聞いた話だが、野営をしていたあたりは魔獣が多く生息する場所だったが、ミカの(スキル・威圧)で魔獣が近づかなかったらしい。




「おっ、あれが最初の町か。」


「はい。アルテミア王国の玄関口とも言えるテレムの町です。大魔の森が近くにあるので力をつけたい冒険者が多くいます。」




 ミカの一言メモは参考になる。ん、じゃあ力をつけた冒険者はどうなんだろう?


「そういった冒険者達は迷宮都市に行くわ。」




 さすが魔法のある世界。そのうち言ってみようかな。そうこうしているうちに立派な城壁が目の前に迫って来た。


「さあこの国ではどんな偉人、英雄に会えるかな。」


 そう言って神は天使と嗤う。






「そこの3人!見慣れないな。冒険者か?一応身分証を提示してもらう。」


 フードをかぶった三人は顔が隠れており見るからに怪しかった。




「私たちは旅をしている者よ。身分証を無くしてしまったのだけど、どうすればいいかしら。」


 その声を聞いたとき、何故か守衛の中にあった疑念が無くなっていた。




「そうか、では、仮の身分証を発行する必要があるな。銀貨一枚だ。…よし。早く新たな身分証をつくれよ。通ってよし。」




「えぇ分かったわ。ありがとう。」


 ここに他の守衛がいれば様子が明らかにおかしいと気が付く。本来であれば、身分証を持っていない者を今のやり取りだけでは町にはいれない。




 それなりの取り調べをし、犯罪者かどうか、また、種族を調べるマジックアイテムを使用しなければならない。なぜそうならなかったのか。それはエルの(スキル・催眠)によるものだった。




 こうしてシオン達は簡単に町へと入った。

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