第8話 やっと…やっと!
51階層から65階層では虫型の魔獣ばかりが出現した。
普通に虫嫌いな人であれば、かなり精神的に参る階層だっただろう。
もちろん俺自身も虫は普通に嫌いだ。
しかし、この環境が俺をそうさせたのか、今では魔獣をただのデータまたは単なる情報体として認識している。
こればかりは、ニートでゲームばかりしてきた昔の俺に賞賛を送りたいほどだ。
66階層から75階層。
今まで通り魔獣自体はそこまで強くないが、物量で攻めてくるようになった。
最初は、スズメ丸というレベル75の鳥型魔獣が一度の戦闘で15~30匹の群れで襲ってきた。
四方八方から体当たりしてくるスズメ丸を俺は幻影回避で躱し、注意がそれた瞬間にアイスチェーンで数匹を落とす。
ただ、その行動を繰り返すだけで殲滅が簡単にできた。
幻影回避を持っていなければ何度も何度も躱して、やっと数匹を倒せる、そうした流れになっていたに違いない。
本当に幻影回避スキルのおかげだな。
逆に、考えると幻影回避のせいでスリルのある戦闘ができていないとも言える。
もう喜んでいいのか、悔しがっていいのかわからなくなってきたよ!
どんどん強くなっていくのは嬉しいが、もっと楽しい戦いもしたいんだもん!
******************************
そして、現在75階層のボス扉の前にいる。
俺は疲れた体をゴブリン肉を食べながら休めていた。
そこで、自分のステータスをお肉片手に確認していた。
【status】
名前 ≫雨川 蛍
称号 ≫Number 1
スキル≫パッシブ ≫超動体視力Lv.max
早熟Lv.max
≫アクティブ≫異世界鑑定Lv.5
アイテムボックスLv.max
幻影回避Lv.8
魔法 ≫水魔法Lv.9
氷雪魔法Lv.5(共存共栄)
装備 ≫防具精霊・冷狐(マフラー)
はじめての脇差
そう、なんと幻影回避が4upのレベル8へと成長しているのだ。
この成長は66階層の魔獣が物量作戦に転換し始めたときから急激に始まった。
逆に、異世界鑑定と氷雪魔法、水魔法は同様に使っていたにも関わらず1レベルたりとも上がらなかった。
最初は、不思議に思っていたが今だと理解できる。
恐らくこの階層帯は回避系のスキルに対してのみ大幅な経験値を得られるのではないだろうか。
だとするならば、是非周回したい。
いや、させてもらいます!!
体も休まったところで、早速75階層のボス戦です。
部屋の中に入ると、俺は思わず目を見開いてしまった。
そこには、数え切れないほどの赤い鳥型魔獣が飛んでいたのだ。
鑑定してみると、
【status】
種族 ≫紅カラス
レベル≫90
スキル≫群体行動Lv.max
炎纏いLv.7
強襲Lv.5
魔法 ≫
やはり単体では魔法など使わないので弱いと分かるのだが、この数はちょっと……。
本当、見渡す限り赤いって精神病んじゃいそう。
「おっしゃー、やったるわ!」
もしかすると俺はこのダンジョンに来て初めてやる気が限界点に到達したかもしれない。
やっぱりダンジョンってのはこうでなくちゃね!
とりあえず水魔法・レインで広範囲に移動阻害魔法を掛けた。
俺はこの時、「こんなんで十分でしょ」と、そう思っていた。
「えっ、ちょ、それはないでしょう!」
なんと紅カラスは纏った炎で水を蒸発させてきた。
いやいや、水は火より強いってのが相場でしょう。
『スノウエリア』
これならどうだ!
すると、紅カラスはさすがに雪までは防げないようだった。
攻撃方法は氷雪魔法を中心に使ってくことで決定。
『アイスソード・ダブル』
俺は両手に氷の剣を纏う。
そして、紅カラスが突っ込んできたところを躱し、剣で斬った。
うん、やっぱり一撃だよね。
粘るとかないですよね、わかってましたよ。
躱して斬る、そして躱して斬る。
たまにアイスチェーンで撃ち落とす。
これを繰り返すのみでった。
またしても、単純作業ですよ。
――約1時間半後。
「はい、これでラスト一匹っと」
俺は氷の剣を一振りして、ボス戦は終了した。
あれ?そういえばドロップが一つも落ちていない……。
なんだよー、新しい羽毛布団でも作ろうと思ったのにさ。
そして、いつも通り自分のステータスを確認する。
【status】
名前 ≫雨川 蛍
称号 ≫Number 1
スキル≫パッシブ ≫超動体視力Lv.max
早熟Lv.max
≫アクティブ≫異世界鑑定Lv.5
アイテムボックスLv.max
幻影回避Lv.10
魔法 ≫水魔法Lv.9
氷雪魔法Lv.6(共存共栄)
装備 ≫防具精霊・冷狐(マフラー)
はじめての脇差
うおぉ?!
幻影回避のレベルが2つも上がってるだと?
このボス、回避系のスキル経験値効率がめちゃくちゃいい。
明日はこのボス周回で幻影回避のレベルmax目指しちゃおうかな。
てか、レベルいくつでmaxになるんだよ。
てっきり10だと思っていたよ。
そして、ついに氷雪魔法が1レベル上がったよ。
重用していた甲斐があったな。
鑑定で確認してみる。
【氷雪魔法】
スノウエリア
アイスダブルソード
アイスシールド
アイスソーン
アイスチェーン
新しく瞬間凍結という魔法を覚えたようだ。
早く使ってみたい!
ということで、まだ76階層へは下りずに75階層のボス部屋の前でリポップするのを待つことにした。
待っている間は暇なので瞬間凍結を空打ちする。
この新しい魔法は直接または間接的にでも対象と触れていないと発動しないようだ。
そして、凍結した対象は少し振動を与えるだけで粉々になった。
殺傷性が高すぎるなんて言うレベルの魔法ではなかった。
決まればほぼ即死の魔法だ。
ただし、任意で解除することも可能だった。
恐ろしや氷雪魔法さん。
水魔法も優秀なのだが霞んで見えてしまうではないか。
そんな検証をしているとすぐにボスがリポップしたようなので、早速俺の経験値となってもらおう。
******************************
「そいやっ!!」
75階層のボス周回、現在8回目が終了した。
俺はドロップが落ちないことを知っているので、早速ボス部屋の前まで戻ろうとしたらまたしても宝箱が現れた。
「あれ? このボスってドロップ落とすんだ。ラッキー!」
俺はウキウキしながら宝箱を開けた。
あっやべ、罠警戒するの忘れてた。
だが、もう遅い!
つい勢いで開けてしまった。
俺は急いで宝箱から離れるも特に何も起こらなかった。
またしても宝箱を前にひとり相撲してしまった。
と、まあ、頭を切り替えて中身を確認する。
そこには見たことのある物が2つも入っていた。
「こ、これは………。スクロールだよな?」
【contents】
確定ランダムスキルスクロール×2
と、表示されたので早速鑑定をする。
【result】
名称 ≫確定ランダムスキルスクロール
効果 ≫レア度5以上のスキルがランダムで手に入るスキルスクロール。
今までのドロップで一番の当たりの予感。
おーついに、新しいスキルゲットだ!
俺はつい涙でうるっときてしまった。
今までスキルを獲得したのが、1階層のボス戦と10階層のボス戦。
やっと、やっとだ。
10階層の次が75階層でどんだけドロップ率低いんだよ、クソゲー認定されてもおかしくないレベルだぞ!
と、少し荒ぶってしまったが俺は心を落ち着かせて76階層の休憩所へと入った。
「さて、早速一つ目のスキルスクロールを開きますか!」
<アクティブスキル・造形操作を獲得しました。レア度・5、プラチナスキル。おめでとうございます>
【skill】
名称 ≫造形操作
レア度≫ 5
状態 ≫アクティブ
効果 ≫魔法の造形変化および魔法の操作性に大補正が掛かる。
ん?
いまいちよくわからないが、魔法が使いやすくなるってことなのか?
まあ、明日確かめてみるか。
次だ次、俺にはもう一つスキルスクロールが残っているのだ!
俺は高鳴る胸を押さえながら、スクロールを開く。
<パッシブスキル・魔法力を獲得しました。レア度・6、ユニークスキル。おめでとうございます>
【skill】
名称 ≫魔法力
レア度≫ 6
状態 ≫パッシブ
効果 ≫元のMPからMPを2.2倍にする。魔法使用時の攻撃力に大補正。
レア度6ですか?!
これは大当たりでは?
というか、MPか………。
これで一つ判明したことがあるな。
今まで分からなかった、MP的な物の名前はやはり
増々、ゲーム感が増したな、このダンジョン。
と、ここでふと気づいた。
俺ってリアルラック結構高いんじゃない?
ソシャゲで課金したりしても今まで報われたことは少なかった。
しかし、このダンジョンに入ってから俺は運の絶頂期を迎えているのかもしれない。
だって、レア度の高いスキルしか今まで手に入っていないのだ。
異世界鑑定はレア度2。
アイテムボックスはレア度4。
これは元々貰ったものなのでそこまで実感はない。
早熟はレア度6。
超動体視力はレア度5。
幻影回避はレア度5。
そして、今回手に入ったのがレア度5と6が一つずつ。
確実に波に乗っていますね、俺。
地上に戻ったら宝くじでも買ってみようかな。
そしたら自宅警備員は卒業して、一家の主も夢ではない?
そんな妄想をしていると、急激に眠気が襲ってきたので、そのまま寝ることにした。
******************************
おはようございます。
起きてからすぐ、昨日獲得したスキルの検証を開始した。
俺は造形操作のスキルがめちゃくちゃ気に入った。
これ楽しい!
今までの魔法は決まった形や威力の魔法しか発動できなかった。
しかし、このスキルを使うと形や威力をある程度自由に変更できるのだ。
ただ、まだレベルが1なのでそこまでの自由度はない。
今後、もしかしてレベルが上がれば、氷の鳥を飛ばしたり、氷の薔薇を作ったりできちゃったりしちゃうのかもしれない。
そう考えると、ゲーマーとしては妄想が止まらなくなってしまう。
こういうのは熟練度的なものが必要だからな。
明日から毎日練習します!
そう、明日から頑張ります!
そして、魔法力のスキル。
これは、魔法の威力が体感1.5倍くらいになった。
加えて、魔法の使える回数が単純に2倍近くになった。
単純に魔法が強くなった、そういった印象だ。
強いと言えば強いのだが、あまり実感が湧かない。
まあ、レア度6だから強いのだろう。
早熟さんの例もあるしね。
さて、ニートは明日から魔法の訓練頑張ります!
そして、今までは近接戦を主に伸ばしていたが、今から魔法を重点に置いたスタイルに変えるのも悪くない、そう考えた。
だって、スキル構成的にスタイル変えろって言われているようなもんでしょこれ。
ふと、思った。
昨日あれだけ鳥さんを周回したのにステータスを確認するのを忘れていた。
ということで、確認する。
【status】
名前 ≫雨川 蛍
称号 ≫Number 1
スキル≫パッシブ ≫超動体視力Lv.max
早熟Lv.max
魔法力Lv.max
≫アクティブ≫異世界鑑定Lv.5
アイテムボックスLv.max
幻影回避Lv.24
造形操作Lv.1
魔法 ≫水魔法Lv.9
氷雪魔法Lv.6(共存共栄)
装備 ≫防具精霊・冷狐(マフラー)
はじめての脇差
おお、幻影回避がなんと24レベルまで跳ね上がっていた。
やはりあの鳥さん経験値が美味しいらしい。
てか、まじで最大レベルっていくつなんだよ。
はあ、今日も鳥さんの周回か…………。
そろそろ飽きた、けど頑張る!
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