第5話 思ってたのと違う!
俺は日記を読み終えると、再びダンジョン攻略に励んでいた。
11階層では、バーサークしてるイノシシが真っすぐと突っ込んでくるだけであった。
そんな敵であればスキル・幻影回避さんに活躍してもらうだけで簡単に倒すことができる。
ということで、サクッとイノシシを倒しつつ幻影回避の練習台にさせてもらった。
バーサーク猪は階層が上がるごとに、少しずつアクロバティックな行動をするようになった。
例えば、横移動するイノシシが現れたり、ジャンプするイノシシだったりと俺の経験値になってくれた。
そのおかげで幻影回避のレベルが2に上がったよ、感謝感謝。
元々レベルの上がりづらいスキルたち。
俺は早熟で通常の2.2倍で成長するが、それでもこんな苦労して1レベルしか上がらない。
なんと世知辛いダンジョンなのだろうか。
そういうことで、俺は16階層に到達した。
なんと驚くことに11階層からここまで体感1日半ほどで着いた。
これも成長している影響なのだろう。
しかし、実際の時間は分からないので体内時計の時間なのだが。
そうして例の如く、階段を降りるとすぐに休憩所が見えた。
すぐに中へ入る。
すると、ここにはシングルベッドが一つ置いてあったのだ。
「お邪魔しまーす。そしてベッドも頂きます」
「ホーホー」
そして、俺はベッドに疲れた体を沈めた。
「…………って、えっ、誰??」
「ホーホー」
俺はすぐに上半身を起こし、部屋を見渡す。
すると、部屋の隅には灰色のフクロウがこちらを向いて佇んでいた。
魔獣かと思い、武器を取り出して構えるも一向に襲ってくる気配が感じられない。
鑑定してみると、
【status】
種族 ≫精霊・フクロウ
レベル≫?????
スキル≫?????
魔法 ≫?????
説明 ≫稀にしか姿を見せない存在。プレゼントをすると、気分次第で見返りが貰えるという話が有名。
鑑定結果は魔獣と同じような表示の仕方がされた。
にしても、精霊か………。
?ということは俺よりも遥かに強いのだろう。
違う!そういうことじゃない!
説明のところにもっと重要なことが書かれている。
見返りか……。
ここは何をプレゼントしようかな。
そんなことを考えながらとりあえずフクロウの頭をなでなでしておく。
こういうのは好感度が重要だからな!
すると、フクロウは気持ちがいいのか目を細めている。
俺は片手でアイテムボックスを操作し、良さそうなプレゼントを探していた。
そんなとき一つのアイテムのところで手が止まった。
なんだこれ、見覚えないんだが。
取り出して確認してみると、
【result】
名称 ≫イノシシの宝石
効果 ≫土堀りイノシシの腹の中で形成された宝石。純度が高く、愛好者も多い。レアドロップ。
あっ、10階層に出てくる魔獣のレアドロップか。
もう練習台としか思っていなかったから、ドロップ品とかあまり詳細には確認してなかったからな。
それで気づかなかったのだろう。
俺が目の高さまで宝石を持ってきて、綺麗だなぁーと眺めていると、フクロウにくちばしで器用に分捕られてしまった。
「あっ返せよ、それ。結構、気に入ってるんだぞ。こら、フクロウちん」
すると、フクロウは段々と薄くなっていき消えていった。
「あっ、逃げるなよ。このー、盗人フクロウめ! 返せー!!」
【contents】
精霊との扉×1
急に視界にアイテムボックスの画面が表示された。
ん?これがフクロウの見返りなのか?
取り出して詳細を確認してみると、
【result】
名称 ≫精霊の扉
効果 ≫極稀に精霊に会うことができるようになる。好感度・微上昇。
その小さな扉は少しすると光の粒となり、俺の体に吸収されていった。
んー、なんとも微妙な気持ち。
精霊に会えるのは確かに可愛かったし嬉しい。
しかし、あの綺麗な宝石には見合ってないのではないだろうか。
俺は少しモヤッとした気持ちを胸にベッドに再び体を沈めた。
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おはよう、ダンジョン。
俺はいつも通りレインの魔法で体を洗い、味付けのないゴブリン肉を食べた。
さて、攻略開始だ!
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「って、違ーう!!」
いや、なんか思ってたダンジョン攻略と違う!
もっとこう苦戦するボス戦、スキルを駆使してギリギリの戦いをするアクション、宝箱を見つけて一喜一憂するダンジョンならではの高揚感。
今までどれも感じたことが一切ないのだが!
てかもう、50階層ですよ。50階層。
なんだよ10階層以降新しいスキルは獲得できないって。
それなのに超動体視力さんと早熟さんが仕事しすぎて、もはやヌルゲー。
いやむしろ、ヌルゲーというよりは無双ゲー。
魔法を放てば魔獣はすぐに光となり、武器を一振りすれば光となる。
もう、本当に違う。
せっかくのファンタジーなのにこの仕打ちはないわ。
はい、ということで早速50階層のボス戦です。
目の前には、4m級の横にも縦にも異様に大きいブタがいる。
自分の体重を支えることができないのか、地べたにドスンと居座って両手に果物を持っている。
鑑定結果はこうだ、
【status】
種族 ≫貪る成金ブタ
レベル≫70
スキル≫奴隷操作Lv.max
投擲Lv.4
自己再生Lv.3
地揺らしLv.2
魔法 ≫召喚魔法Lv.4
なんと醜い魔獣なのだろう。
早速、成金ブタは召喚魔法で小さな金色のブタを大量に召喚した。
ざっと数えると、30体ほど召喚されたようだ。
じゃあ、戦闘開始だ。
『レイン』
俺は水魔法レインを発動し、この部屋全体に雨を降らして移動阻害魔法を掛けた。
この魔法は範囲内全てを対象に効果を発揮するため、もちろん自分自身にも掛かってしまう。
しかし、それでも問題はない。
このブタ、めちゃくちゃ動きが遅い。
加えて、俺は今までの戦闘で敏捷を重点的に鍛えていたため超動体視力と相まって、もともと遅いブタは亀のように遅く見える。
俺は走りながら躊躇することなく、金色ブタに対して脇差を振るう。
その場に残ったドロップは「黄金ブタの肉」だった。
めちゃくちゃ美味しそうだ。
そういうことでサクサクと倒していくと、あるブタを倒したとき肉ではないアイテムがドロップした。
【result】
宝石・サファイア×1
おお、宝石か!
さすが成金の奴隷だ。
おっと、もう金色のミニブタちんを全て倒してしまったようだ。
MP的なものが勿体ないので、俺はレインの魔法を解除する。
すると、成金ブタが手持ちの果物を投げつけてきた。
しかし、投げる動作が大きすぎてどこに向かって投げるかが一目瞭然だ。
スラスラと躱していき、波動水をだらしないお腹に放つ。
波に打たれた成金ブタは悲鳴を上げる間もなく、光の粒となり消滅した。
そこに落ちたドロップ品は光り輝いていた。
【result】
大ブタの霜降り肉(特上)×1
おお、霜降り肉だと?!
いけない、いけない、つい涎が出てしまった。
ダンジョンに入ってからはずっとゴブリン肉しか食べてこなかったからな。
あっでもせっかくの霜降り肉なんだからせめて調味料が欲しい。
手に入るまでは我慢だ、我慢。
俺は柄にもなくスキップしながら51階層へと降りていく。
「ささ、ここの休憩所には何が置いてあるかな?」
そう呟きながら、俺は扉を開ける。
しかし、そこには何もなかった。
ただ、四角い空間がそこにあるだけだ。
「な、何もないだと?!」
6階層ではキッチン類、11階層では本と眼鏡、16階層ではベッド、21階層では七輪、26階層ではあったか毛布、31階層では快適枕、36階層では石鹸類、41階層では絵画、46階層では大量の布がそれぞれ置いてあったので、俺のアイテムボックスに吸い込まれていった。
もう昔の偉人も置くものが思い当たらなかったのだろうか。
まあ、今までの道具があれば十分に生活できるから問題はない。
本当に名前も知らない異世界の偉人さん、今までありがとう。
ということで、もう寝ようかと考えたがまだ体は疲れていないようなので51階層の魔獣に少しだけちょっかい掛けてから寝ることにした。
ということで、いざ再度出発!
そろそろ新たなスキル来てくれー。
******************************
現在、俺は今までにないぐらい全力で走っている。
「無理、無理、ムリーーー!!」
休憩所に向かってひたすら走る。
キモい、何あの魔獣生理的に無理。
そう最初、俺は51階層の魔獣・カブトを少しだけ苦戦はしていたが順調に倒していた。
そして、5体ほど倒した後に事は起こった。
そこに現れたのは、白い! デカイ! キモイ! を兼ね備えたカブトの幼虫と思われる魔獣だ。
確かに生理的に無理な容姿をしているが、ゲーマーな俺にはそれだけでは引き下がれないほどの経験値を持っていると自負していた。
いつもであれば撤退なんてありえなく、前進あるのみなのだ。
しかしこの戦略的撤退には理由があるのだ。
この魔獣、俺との相性悪すぎる!
スキル・水魔法耐性を持っており、かつ物理攻撃がほとんど効かないのだ!
そんな魔獣俺には倒す手段がないのだ!
そして、俺は勢いよく休憩所に駆け込んだ。
「あー、耐性スキル持ちの魔獣がついに出てきたか。まあ、50階層も越えたからなそろそろ出てきてもおかしくはないか。普通の魔獣のカブトも強かったしな。1階層の中で2種類以上の魔獣…………。そろそろダンジョンのアルゴリズムも変わってくる頃合いか」
俺は肩を少し落としながらベッドに横になった。
パーティーとか組んでればこの階層も楽なんだろうな。
しかし、俺は過去も現在もずっと一人。
ゲームでも大体ソロ。
おし、明日からは一階層上の50階層を周回で新たなスキル得るまで頑張るぞー!
あわよくば新魔法とか入手できないかな。
魔法は2種類以上使えないとこれからも立ち止まってしまう階層が出てきてしまうからな。
そんなことを考えながらまだあまり眠くない瞼を閉じた。
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