第3話 成長の兆し
ダンジョンの2階層から5階層まではゴブリンしか出てこなかった。
ゴブリンと言っても、魔法に特化したゴブリンシャーマンや近接特化のゴブリンファイターなど様々な種類のゴブリンだ。
稀に、ゴブリンキャプテンも出てきたが今ではそう強いとは感じない。
それよりも早熟と超動体視力のスキルがもの凄く仕事をしてくれている。
まず超動体視力だ。
相手の筋肉の動きや重心、目線から敵の次の動きが予測できる。
なので今までの投擲戦法はゴブリンシャーマンを倒す時ぐらいしか使わずに、ほぼ近接戦闘で勝つことができる。
さらには、戦うごとに超動体視力が最適化されていきより使いやすくなっていく。
これは恐らくスキルの効果倍率が元の動体視力のため、俺が持っている本来の動体視力が向上しているからと思われる。
そこにさらに早熟のスキルが素晴らしい仕事をしてくれている。
今までは何となく腕力が強くなったり、速くなったりと感じていた。
しかし、今では目に見えるほど自分が成長していくのが感じられるのだ。
その為、もはや魔獣との戦闘は単純作業と化していた。
ゴブリンを倒す時の流れはこうだ。
ゴブリンシャーマンに向かって、槍の投擲で倒す。
その後は、ウォーターフロアで動きを阻害。
走って近づき相手の攻撃を躱して波動水を放ち、よろめいたところに脇差で頭部を一刺し。
その繰り返しだった。
そして、稀に出現するゴブリンキャプテンはボス戦が嘘かのようにすんなりと武器が突き刺さるのだ。
やはり武器が弱いのではなく、自分自身の強さが問題だったようだ。
そして、各階のボスは順番にゴブリンの上位種となっていた。
しかし、期待していたスキルスクロールが一つも得ることができなかったのは残念だ。
もしかしたらあれはとても貴重なドロップ品だったのかもしれない。
そうだとすると、第一階層で得られたのはビギナーズラックだったのかもしれない。
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そして、現在6階層に降りたところのすぐ脇に扉があり入ってみるとそこには休憩所のような部屋があったのだ。
そこには、キッチンがあり、さらには畳が6畳分置いてあった。
まさに何でこんな所に普通の部屋がって気持ちだ。
だが、そんなことはどうでもいい。
今までの道中で碌に休める場所がなく、体感ではあるが2徹している気分だ。
スマホや時計を持っていなく実際の時間は分からない。
俺は残りのコンビニ弁当を食べてしまい、畳の上で死んだように睡眠をとった。
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次の日、起きてからまずはステータスを確認してみた。
【status】
名前 ≫雨川 蛍
称号 ≫Number 1
スキル≫パッシブ ≫超動体視力Lv.max
早熟Lv.max
≫アクティブ≫異世界鑑定Lv.3
アイテムボックスLv.max、
魔法 ≫水魔法Lv.7
装備 ≫
1階層のボス戦からは、異世界鑑定が1upのLv.3、水魔法が2upのLv.7しか変わっていない。
異世界鑑定は魔獣相手に今までは種族・レベル・スキルまでしかわからなかったが新たに魔法が鑑定できるようになった。
そして、水魔法は新たに2つの魔法が使えるようになった。
レインとウォーターヒーリングの魔法だ。
レインの魔法はウォーターフロアよりさらに広範囲に雨を降らせて、かつ威力を弱めた移動阻害魔法。
ただし、俺が使うときは基本的には体を洗う時だけだ。
なんとこれ温水にもできる優れ魔法なのだ。
ウォーターヒーリングの魔法は怪我をしたところに使うとその傷が治るという回復魔法だ。
瀕死の魔獣相手に一度使ってみたが、普通に全回復したようなのでかなり回復量が高いと読んでいる。
ちなみに称号に「Number 1」というものがあるのだが、詳細が何もわからず説明しようにも何もわからないのだ。
だからこいつは放置である。
俺は重たい瞼をこすりながら、簡単にレインで体を洗ってから本日最大の挑戦をする。
それは、ゴブリン肉が食べられるのかどうかの検証だ。
もう食料が尽きてしまったため止む無しの手段だ。
俺はキッチンを拝借してゴブリン肉を焼いてみる。
ちなみにキッチンには普通にガスコンロとフライパンや鍋、お皿までもが置いてある。
本当に謎の充実ぶりだ。
ガスコンロに火をつけるには魔法を使ってるときに何となく使っている魔力みたいなものを注いでみると普通に火が付く仕様だった。
早速、アイテムボックスからゴブリン肉を取り出して焼いてみる。
調味料はないので、もちろんそのままだ。
ジューッと美味しそうな音を立てながら焼きあがっていき、匂いは普通に豚肉を焼いているときと同じ匂い。
生焼けの部分があるとさすがに怖いので、外側が焦げても中身がしっかりと焼けるまでじっくりと焼いた。
中までしっかりと焼けた肉をお皿に出して早速食べてみる。
しかし、これがなんと意外にも美味しかった。
味はよくスーパーに売っている特売の臭みが残っている豚肉の味だった。
これなら食べられなくもない味だった。
そこで俺はドロップしたゴブリン肉を全部焼いて時間が進まないアイテムボックスにどんどん放り込んでいった。
ちなみにアイテムボックスの説明をすると、ページが1~10までありそれぞれのページ100種類まで収納が可能で、1種類当たりに99個まで収納することが可能だ。
そして、1~5ページは時間が通常通り進み、6~10ページは時間の進み方を調整できる優れスキルだ。
さて、食料も準備できた。
いざ6階層に挑戦しますか!
休憩所を出て進んでいくとこの階層にはホワイトドッグと呼ばれる白い大型犬の魔獣が現れた。
鑑定結果はこうだ、
【status】
種族 ≫ホワイトドッグ
レベル≫ 11
スキル≫散霧、強顎
魔法 ≫―――
特徴は白い体を活かして霧に紛れて不意打ちに噛むというシンプルな戦法だ。
しかし、足音は聞こえるし、今の俺の動体視力では不自然な霧の動きはすぐに察知できるのでそこまで強敵ではない。
しかし、かなり精神的には疲れる相手だ。
ドロップ品はほとんどが外れだったが一つだけ使えそうなものがあった。
それは白い毛皮だ。
俺はそれを繋ぎ合わせて毛布として活用する予定だ。
ボス戦も特に苦労することなくすぐに倒すことができるようになった。
目当てのスキルスクロールが全然出ないと思っていたら、なんと10階層のアサシンドッグを倒したらランダムスキルスクロールというドロップを落とした。
【result】
名称 ≫ランダムスキルスクロール
効果 ≫取得可能なすべてのスキルの中から一つレア度も含めてランダムに入手することが可能。
名称の通り、1階層で得られたのは自分で選べるスキルスクロールだったが、今回入手したのは完全にランダムで取得するタイプのようだ。
俺はすぐにランダムスキルスクロールを使用する。
<アクティブスキル・幻影回避を獲得しました。レア度・5、プラチナスキル。おめでとうございます>
【skill】
名称 ≫幻影回避
レア度≫5(プラチナスキル)
状態 ≫アクティブ
効果 ≫回避行動時、敵に幻影を見せて回避成功率が上がる。回避速度に大補正。
おー、また当たりスキル来たな。
ということで、何度か使ってみると回避後は敵が俺のことを見失うようで、不意打ちの攻撃が入りやすくなった。
しかも、なんか回避時の補正でいつもより倍くらいの速さで動けるのだ。
これは有用性が非常に高いだろう。
でも、アクティブスキルというよりは回避したときに自動で発生するようでどちらかというとパッシブ寄りのスキルだと感じた。
だけど、レア度の関係性が全然わからない。
そろそろレア度で一喜一憂してみたいよ、やっぱり。
せっかくのダンジョンなんだから。
などと考えていたら、11階層に降りたときにまたしても休憩所の扉を発見。
中に入ってみると、今回キッチンはなかったが一冊の本が置かれていた。
まあ、キッチンは6階層の休憩所から貰ってきてるので要らないのだが。
本は気になるが、またしても6階層から10階層まで一気に駆け抜けてきたからもう動けません。
おやすみなさい。
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ということで、おはようございます!
早速、昨日発見した本を開いてみる。
しかし、書かれているのはまたしても古代文字みたいな意味わからない文字だった。
だがしかし!
本の横には不自然に置かれている赤い眼鏡がある。
本と眼鏡の鑑定結果はこうだ。
【result】
名称 ≫イリスの日記
説明 ≫日常の出来事が記された本。
【result】
名称 ≫言語変換メガネ
効果 ≫書かれている文字を使用者の理解可能な文字に変換するメガネ。
俺はメガネを掛けて読んでみると、やはり本の文字が読めるように日本語に変換されたのだ。
結構な分厚さの本で全て読むのに一日も費やしてしまった。
内容のほとんどは、異世界の冒険者の日記のようなものだった。
書いた人は女性のようで、彼氏との惚気話ばかり書かれており、男の俺にとっては退屈な内容でしかなかった。
しかし、いくつかの有用な情報が得られた。
まずどのダンジョンでも5階層ごとに魔物の種類や形態自体が変わっていくのが常だそうだ。
そしてこの休憩所はやはり人の手によって作られた部屋のようだ。
異世界のある偉人が世界で唯一ダンジョン内に部屋を作るスキルを持っていたそうだ。
その人がいくつものダンジョンを駆け巡り、潜れるだけ潜って5階層ごとに部屋を作り歩いたそうだ。
俺としてはその偉人の方に感謝してもしきれない部分がある、本当にありがとう。
そしてスキルについてだ。
スキルの取得方法はやはりスキルスクロールで得るのが主な方法だそうだが、稀に他の方法でも入手が可能だそうだ。
そして、レア度5が一番希少なスキルだそうで、レア度6なんてスキルはほとんどお目にかかることのできない幻のスキルと呼ばれているらしい。
実際にこの日記を書いた女性はレア度6のスキルを初めて見た際のことを興奮気味に書き記していた。
そして最後に魔法についてだ。
魔法の種類は多種多様に存在しているようだ。
基本属性の火・水・土・風、そしてネタに分類されるような魔法。
これらの魔法が一般的であるようだ。
ネタ魔法というのは俗称のようだが、例えばお茶魔法は水を色々な種類のお茶に変換できる魔法で使い道の非常に少ない魔法たちを指すようだ。
それ以外だと、基本属性の上位属性である蒼炎・氷・生命・暴風、さらに光や闇、その他の有用性の高い魔法は非常に稀だそうで、さらに一般的な魔法よりも強力であるそうだ。
と、まあ、ダンジョンとスキル、魔法について少しだけ詳しく知れたので有意義な一日であったと思う。
ただもう女性の恋愛話だけは勘弁してほしいな。
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