第39話 妹とお風呂に入る姉
〜姉視点〜
美優と一緒にお風呂に入ることになってしまった。腕ががっちりと組まれているので、逃げようにも逃げ出せない。てか腕を組まれてるせいで美優の感触がばっちり伝わっちゃってるんだが。私の心臓をドキドキさせるのも大概にしてほしい。
「私から入るので、お姉さまは私の上に寄りかかるようにしてください。」
「美優の上に乗るの罪悪感があるんだけど…。」
「お姉さまは軽いので大丈夫ですよ。」
「そういう問題じゃ無いんだけどなぁ…。」
妹の上に腰掛けるお姉ちゃんって外聞悪すぎでしょ。そもそも大学生にもなって、姉妹で一緒にお風呂に入る時点でアレだが。
「細かいことは気にしなくて良いですよ。…ふぅ。ではお姉さまもどうぞ。」
美優が足を伸ばした体勢でお風呂に入った。
「私にとっては全然細かいことじゃないんだけど。はぁ…。も~、一緒に入るのは今日だけだからね。」
いくら浴室の中とは言え、何もせずに突っ立っていたらまた風邪を引いてしまう。私は諦めてお風呂に入ることにした。
「…じゃあ腰下ろすよ。」
罪悪感に駆られながらも、ゆっくりと美優の上に腰を下ろす。寄りかかる過程で水がかなり溢れてしまった。まぁどうせ後で父さんと母さんのために入れなおすし、別に気にしなくてもいいか。
私が腰を落ち着けると美優がお腹に手を回してきた。浅く腰掛けるようにしていたのに、お腹に手を回されたせいで深く座ることになってしまった。
「水の中とは言え、やはり軽いですね。それで、一緒に入った感想はいかがですか?」
「う~ん…落ち着きはしないかなぁ…。」
今になって気づいたが、この体勢だと美優との密着度が高い。美優の柔らかさが直に伝わってくる。特に背中に当たる二つの感触がやばい。どうにか意識を向けないようにするが、そんなことは到底無理だった。年齢=恋人いない歴の私にとっては刺激が強すぎる。
「あの~、美優さん……その…こんなこと言うのもどうかとは思うんだけど、背中に大きいのが当たってます…。だからもうちょっと離れてもいいんじゃないかなぁ~って…。」
お姉ちゃんは嫁入り前の女性がこんなことをするのは良くないと思うんですよ。
「あら?当ててるんですよ?」
「えぇ…うそぉ…。」
なんでよ…。当てることのメリットなんてなんにも無くない??私が恥ずかしくて困るだけなんだが??
てか美優も恋人がいないはずなのにどうしてこんなことが出来るんだ。………うん?あっ、あれ?美優って恋人いない…よね?そういえば一度も聞いたことが無い気がする。
「ね、ねぇ美優。美優ってさぁ…その……恋人っているの?」
「恋人ですか?いませんよ。できたこともないです。」
「えっ、ああそうなんだ。」
即答されたからちょっと戸惑った。こういうのってちょっとは恥じたりするもんじゃないの?てかこんなに可愛くてとってもいい子なのに恋人出来たことないってまじ?周りの人見る目なさすぎじゃない?
………でもそっかぁ…恋人いないのかぁ……。よかった。
「いやよかったってなんだ。」
「…?なんのことですか?」
「あっ、ごめん気にしないで。こっちの話。てかお腹むにむにするのやめてよ。最近気にしてるんだから。」
さっきから美優がさりげなく私のお腹を揉んでくる。人のお腹なんか触って楽しいの??
「すみません、触り心地が良くてつい。でも全然太ってないじゃないですか。むしろこのくらいの方が私は好きですよ?」
「私より細い美優が言っても説得力無いんだけど???」
もしかして私煽られてる??出るとこ出ちゃうぞ??いやお腹じゃなくて。
「本心からだったのですが、これ以上は止めておきましょうか。」
美優はお腹から手を離し、再度抱き着いてきた。それも止めてほしいんだけど…。
「あっ、ちなみに好きな人はいますよ?」
「……えっ!?ほんと!?だれ!?!?」
急な爆弾発言に驚き、思わず体を起こして美優の方を振り返る。
「ふふっ、さて誰でしょうね。そういえばファーストキスは頬だったような。」
美優は自分の唇に指を当てながら熱っぽい視線でこちらを見つめる。頬へのちゅ~を思い出し、思わずドキッとしてしまう。
「…じょ、冗談もほどほどにしてよ。さ、先に出るね。」
私は慌ててお風呂から上がり、軽くシャワーを浴びて浴室から出る。洗面所の鏡を見ると、ほっぺたが赤くなった私が映っていた。おそらくのぼせたわけではないだろう。用意していたバスタオルにくるまり、熱くなった頬と心を落ち着ける。
あの日からどうにも体がおかしい。ふとした拍子に美優の唇に目が吸い込まれ、ドキドキしてしまう。美優の冗談の頻度も上がってきており、それが拍車をかけている。このままだとどうにかなってしまいそうだ。
というか私はなぜこんなにもドキドキするんだろう…。生まれて初めての経験だ。なにかしらの病気にでもなったんだろうか。
どうにもモヤモヤした気持ちが収まらない。一度誰かに相談したほうがいいかもしれない。
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