第33話 ネコをモフる姉

~姉視点~


 大学からの帰り道、私達は世界一可愛い生き物に出会った。


「み、美優!!あそこにいるのネコちゃんじゃない!?!?」


 脇道の隅で丸まって寝ているネコがいた。


「えっ?あっ、そうですね。」


「わぁ~!!だよねだよね!可愛いなぁ~。近くまでいこ!」


 美優の腕を引き、ネコに近づく。そして二人でしゃがみ、寝ているこの子を見守る。


「ほんとに可愛いなぁ。家の近くにもネコちゃんっているんだねぇ。」


「確かにあまり見かけませんね。」


「ね~。…流石に触ったら起きちゃう…よね?」


「そうですね。おとなしく見守るだけにしましょう…ってあら?」


 私達がうるさかったのだろうか。急にネコが目を覚まし、伸びをした後にこちらを見つめて固まってしまった。


「あっ、起こしちゃった。気持ちよく寝てたのにごめんねぇ…。」


 そう言いながらゆっくり瞬きをし、ネコの鼻先に指を伸ばす。ネコは警戒しながらも指の匂いを嗅いでくれた。


「わぁ…鼻にタッチしちゃった。ちょっと湿ってるんだねぇ。」


 私の匂いに満足したのか、ネコは同じように指を伸ばした美優の匂いを嗅ぎ始める。


「本当ですね。初めてネコの鼻を触りましたが、こんな感触なんですね。」


 匂いを嗅いで悪い人ではないと判断したのか、警戒をといたネコがあくびをしている。可愛い。


「可愛いよねぇ。喉触らせてもらっちゃおうかな。」


 毛づくろいをし始めたネコの喉に手を伸ばしてモフモフしていると、次第にゴロゴロという音が聞こえてきた。


「わぁ~!ゴロゴロ言ってるよこの子。可愛いねぇ。」


「お姉さまの触り方が上手だからですよ。」


「え~、照れる~。…ふふっ、ここが気持ちいいのかにゃ~。」


 ネコは目を閉じてうっとりした表情で身を委ねてきた。しかも、そのままゴロンと寝転がり、お腹を見せてきた。え~、めちゃかわじゃん。


「ほれほれ、ここがいいのかにゃ~。それともこっちがいいのかにゃ~。」


 巧みな手つきでネコをモフる。触れば触るほどゴロゴロ音が大きくなっていく。


「ん~、ほんとに可愛い。肉球触りたいなぁ…。でも触ったら嫌がるよねぇ…。」


 視界に映る可愛い肉球をぷにぷにしたい欲が強くなる。しかし、その欲求を鋼の精神で押さえつける。


 それと、モフってて思ったが、この子は毛並みが良い気がする。もしかしたら地域の人たちにお世話されているのかもしれない。


「…お姉さま、そろそろ帰宅しないと暗くなってしまいますよ。」


「あ~、もうそんな時間か…。それじゃあ名残惜しいけどそろそろ帰…ってうわっ!」


 名残惜しくも帰らなくてはと手を離すと、なんとネコは膝の上に飛び乗ってきた。そして、そのまま私にすりすりしてきた。


「!?!?!?えっ、なにこの子!?きゃわわすぎない!?!?えっえっ、待ってどうしよう!?もううちの子になっちゃう!?」


 もうこの子はうちの子にしちゃおうか。うん、そうだ。それがいい。この子もこんなにすりすりしてくるのだ。これはもうお持ち帰り合意でしょ。そうに違いない。


 そう思い、この子を持ち帰ろうとするが、美優に止められてしまう。


「ダメですよ。その子にも帰る場所があるかもしれないですし。」


「うっ…やっぱそうだよね…。ん~~~~。じゃああと少し!!あと少しだけモフらせて!」


 あと少しだけモフれば我慢できる…気がするから!!


「…仕方ないですね。少しだけですよ?」


 美優はしぶしぶと許可を出してくれた。


「ありがとう美優、大好き!!」


 流石私の妹!懐が大海原より広い。


「ん゛っ…どういたしまして。」


 口を抑えて悶えている美優を少し不思議に思いながらも、改めて膝の上のネコをモフる。


「はぁ~。またいつかキミと会えるかにゃ~…。そのときは私達のこと覚えておいてほしいにゃ~…。」


 ひとしきりモフった後、ネコを膝の上からおろす。おろした後も足にすりすりしてきた。ほんとに可愛すぎる。


「…じゃあ名残惜しいけど、帰ろっか。ばいばいネコちゃん、また会おうね。」


 最後に一撫してから家路につく。


 帰り道、美優とさっきの猫について語り合う。


「いや~それにしてもほんとに可愛かったね。」


「そうですね。とても可愛かったです。特に、にゃ~にゃ~言っているのが可愛くて仕方なかったです。」


「ね~、本当に可愛かった。いつかネコちゃん飼いたいなぁ。」


 そんでもって思う存分モフモフしたい。


「では、将来はネコを飼いましょうか。」


「お~いいねぇ。父さんと母さんを説得しなきゃだね。」


 父さんと母さんはネコ嫌いだったりしないかな。大丈夫かな。




 私たちは将来ネコを飼ったらこんなことがしたいという会話をしながら家に帰った。

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