第25話 ペアピアスを買う妹と姉

~妹視点~


 スイーツ店を出てから、お姉さまは何かを考え込んでいる様子だった。そして、私と腕を組むことに少々躊躇いがちだった。


 それでも傘は一つしかないので、腕を組んで歩くほかなかったが。………家を出る前に他の傘を隠しておいてよかった。


 少しは女性同士の恋愛というものに意識を向けてくれただろうか。そうであったのなら今日の収穫はすでに十分と言える。


 ただ、できればもっと私のことを意識してほしい。流石に恋愛対象として見るようになってほしいとまでは言わないが、ドキドキはしてほしい。何かしら後で仕掛けてみようか。




 実質、初めての買い物デートだ。絶対に無駄にはしない。


―――――


〜姉視点〜


 前回行けなかったデパートについた。今から美優と買い物デートだ。


 ……なんかデートって言うの気恥ずかしいな。スイーツ店であんな話をされてからどうにも美優との距離感が掴めない。


 さっきの話と照らし合わせると、私たちも恋人の距離感ということにならないか?それとも、姉妹だから関係ないのか?………よくわからない。


 っと、そうだ。前回できなかったことをやっておかなきゃ。


「そうだ美優、先に母さんの誕生日プレゼント選び手伝ってくれない?時間経っちゃったけど、まだ買えてなかったからさ。」


 流石に買わずになあなあで済ませたくはない。


「ええ、もちろんです。というか、私もタイミング逃して買えていませんでした。」


 二人共事故ったんだし、用意するの難しかったよね。美優は大学生になったばかりでバタバタしてただろうし。


「まぁそうだよね。じゃあ一緒に一つの物を買う?」


「いいですね、そうしましょう。お母さんも喜ぶと思います。…どこから周りますか?」


 良かった良かった。一緒に一つのものを買うって姉妹っぽくてやってみたかったんだ。しかも母さんの誕生日プレゼント選びってことで、これはもう誰がどう見ても仲良し姉妹でしょ。


「ん〜、無難に雑貨屋さんからはどうかな。」


「分かりました。雑貨屋は……三階ですね。では、行きましょうか。」


 そう言って手をこちらに差し出す美優。


「う、うん。」


 初めて一緒に大学に行った時のような恥ずかしさが再びよみがえった。




 腕組もそうだけど、これは本当に普通の姉妹がやること………なのかな。


―――――


「う~ん、なかなか良いの見つからないね。」


 かれこれ一時間半この店にいるけど、なかなか良いのがない。


「そうですね…。どれも悪くはないとは思いますが……なんとも言えないですね。」


「そうなんだよね。ん~、どうしようかなぁ。…気分転換にコスメでも見に行く?」


 ずっとここにいても進展がないだろう。


「そうしましょうか。ビューティーフロアは一階でしたよね……あら?」


 ふと立ち止まり、何かを見つめる美優。その視線の先を追ってみると、可愛いらしいピアスが目に映った。


「このピアスが気になるの?」


「…はい。ただ、普通につけたいわけではなくて…。」


「ん~?普通につけたいわけじゃないってど~ゆ~こと?」


 悩ましい顔で口を開いては閉じるを繰り返す美優。なにか言いにくい事なのかな?


「その…お姉さまと一緒につけたいなって思いまして………。」


「一緒にって、このピアスを私達で片耳ずつってこと?」


「はい…。」


 つまり、ペアルックみたいなものか。…ふ~ん。


「いいよ。やろうか。」


 私のお姉ちゃんセンサーがビンビン言ってる。これは姉妹っぽいぞって。


「……いいのですか?」


 驚いた顔の美優。どして?姉妹っぽくて良くない??


「うん。だけど、私も美優もピアスしてないし、穴を開けるところからだけど大丈夫?」


「大丈夫です、ありがとうございます。開けるときは一緒にやりましょうね。」


 笑顔になった美優がそう言う。


「う、うん。………穴開けるのほんのちょっとだけ怖いからやってもらってもいい?」


 別に本気で怖がっているわけじゃない。本当にマジで全然怖くない。ただ、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、痛そうなのが怖い。


「もちろんです。その時は私のも開けてもらって良いですか?」


「わかった。じゃあ今日の夜にでもやろうか。」


「そうしましょう。では、買ってきますね。」


 美優がピアスを買いに行った。


 人生で初めてピアスをつける。開けるときあんまり痛くないといいな。痛いのはやだなぁ……。


 絆創膏とか買っておいた方が良いかなぁ。いや貼れないか。どうしよ。




 穴を開けるときのことを考えながら、私は美優が帰ってくるのを待った。

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