第16話 妹の友人と会う姉

~姉視点~


 本日最初の講義が終わった。今日はお互い二限の授業からだった。


 やっぱりオンラインより対面の方が、緊張感があるからとても疲れる。ここだけの話、オンラインに戻りたいという気持ちが無きにしも非ず。うだうだ言ってもしょうがないので、ちゃんと受けるけどね。


「ではお姉さま、この後は友人との顔合わせで大丈夫ですか?」


「うんうん、だいじょ~ぶ。会えるのを楽しみにしてたよ。」


「良かったです。友人も楽しみにしていましたよ。」


 昼休みになり、美優の友人と顔合わせする。どんな子かな~。この前聞いたときは他の事考えてて、右耳に入った言葉が左耳から抜けてったからなぁ…。明るい子って事しか覚えてない。まぁ美優が友人って言ってるし、悪い子じゃ無いでしょ。たぶん。


「こちらで待ち合わせをしているので、もうすぐ来ると思いますよ。」


「りょ~かい。」


 どんな子かな?美優と同じでザ・大和撫子みたいな子が来るのかな。それとも明るいお調子者みたいな子が来るのかな。


「お~い!!美優~~~~!!!!」


 おっ来たみたいだ。元気そうな声が聞こえてきた。


「やっほ~美優!隣にいるのがお姉さん!?」


「ええ、そうです。私のお姉さまです。」


「きゃ~!!初めましてこんにちは!!工藤萌って言います!!」


 そう言って私の右手をとり、上下にぶんぶん振るう。


 わ、わぁ…めちゃくちゃ陽キャっぽい。高校とかで絶対カースト上位だったやつじゃん。まぁ私も?陽キャですし?やろうと思えば初対面で握手できますし?


 ってか多分ギャルだわこの子。もうちょっとこう…おとなしい子が来ると思っていただけにびっくり。


「こ、こんにちは。美優のお姉ちゃんの小倉陽菜です。」


「お会いしたかったです!!それと退院おめでとうございます!!」


「あ、ありがとね。」


 あまりの勢いにタジタジになってしまう。この子も美優と一緒で距離感バグってない??これが本物の陽キャか?つまり美優も実は超陽キャだったってこと?


 まぁ私も?美優と初めて会ったときは(怒られたけど)グイグイいったし?病院ではモテモテだったし?つまり私も本物の陽キャ。異論は認めん。


「あっ、手大丈夫でした!?テンション上がっちゃってすみません!!」


「ん~ん、大丈夫。もう治ってるから。それに、怪我してた方と逆の手を握ってくれたじゃん。」


「それなら良かったです!」


「うん。それとこっちからもありがとう。交流会で美優を守ってくれて。」


「いえいえ!!うちが抜け出す口実もあったんで、気にしないでください!!それに美優と友達になれましたし!」


 なんだこの子。めっちゃいい子じゃん。ギャルでいい子とか最強か?陽キャ具合で張り合ってすみません。私の完全敗北です。


 ……陽キャ具合で張り合うってなんだ?本物の陽キャはそんなことしなくね?自分で自分を苦しめてない私?


「お姉さま、萌さん、そろそろ食堂に向かいましょう。席が無くなってしまいます。」


「それもそうだね!食堂でも話せるし、行こっか!!」



―――――


「―――それで、犬のマネをしたお姉さまが愛らしくて仕方なかったです。」


「へぇ!!お姉さん天然なところあるんですね!!カワイイです!」


「美優…萌ちゃん…お願い忘れて…。」


 現在、私は食堂で年下二人からいじられていた。赤くなった顔が上げられない。萌ちゃんに至っては私のほっぺたをツンツンしてきてる。わ、私の方が年上なんだぞ!!萌ちゃんよりはお姉さんなんだぞ!!!!偉いんだぞ!!!!


 …まぁ、これだけテンション高くて、いじってきている萌ちゃんだが、所々に気遣いは感じる。さっきの手のこともそうだし、美優の話を遮ったり私を馬鹿にしたりすることもなかった。一緒にいて不快にならない。これが本物の陽キャなのか…。私にはまぶしすぎる…。


 というかそろそろ話を変えなきゃ。このままではいつまで経っても私の恥ずかしい行動をいじられてしまう。


「そ、そういえば萌ちゃん。15時半から文芸同好会の顔合わせあるけど大丈夫?来れそう?」


「はい!!美優から聞いてました!!大丈夫です!!」


「ん、なら良かった。まぁ人数が多いわけでもないし、緊張とかしなくて大丈夫だからね。っと、そろそろ昼休み終わるね。残念だけど解散にしようか。」


 そしてそのまま私の痴態を忘れてくれ。頼むから。


「分かりました。ではお姉さま、また後でお会いしましょう。」


「うん、またね美優、萌ちゃん。こっちの授業が終わったら連絡するね。さっきの待ち合わせ場所で集合にしよっか。」


「はい!!うちらも講義があるので同じくらいに到着すると思います!!…あっ!連絡先交換しましょう!」


「おっけ~。はいこれ。…じゃあまた後でね。」


 お互いに連絡先を交換してから別れる。次が今日最後の講義だ。頑張ろう!


 いやぁ、それにしてもギャルってすげぇや。私が難しいって思うことをいとも簡単にやってのける。憧れちゃうねぇ。私もギャルみたいな格好すれば本物の陽キャになれるかな?




 …こんなこと言ってるうちは無理か。

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