第11話 交流会の話を聞く姉

〜姉視点〜


 リハビリにも慣れてきた頃、久しぶりに美優が病室に訪れた。


「お久しぶりですお姉さま。ここ数日お姉さまにお会いできず、私はとても寂しい思いをしていました。」


「や、やっほ〜美優。私も寂しかったよ。履修登録はばっちり?」


 実は4月の初めは入学準備等で忙しいだろうと来ないようにしてもらっていた。まぁ毎日ビデオ通話はしていたが。ちなみに講義は明日から始まる。春休みも終わりかぁ…。


 それにしても美優との距離縮まったなぁ。出会ったときの距離が嘘みたいだ。なんか知らんけど、お姉ちゃんは仲良くなれて嬉しいよ。まぁなんで距離縮まったのか分かってないんですけどね!!なにが美優を変えてしまったの…。


 そして美優が豹変してから半月は経ったけど、まだまだ全然たじろいてしまう。そりゃ美優みたいな美少女が近づいてきたら誰でもタジタジになるに決まってる。良い匂いするし。てか、今もちけぇ!もうちょい離れて!自分の匂いとか気になるから!


「ええ、もう済ませてます。お姉さまと同じ講義も取れる範囲でいくつか取りました。」


「そっかそっか。私は最初の方はオンラインで受けるけど、来月くらいには対面で受けられるようになると思うから、その時は一緒に大学通えるね。」


「はい。その日を心待ちにしてます。」


「うんうん。私もだよ。」


 私もその日が待ち遠しいよ。せっかく同じ大学なんだし。それに、一緒に学校に通うってすごく姉妹っぽくない?口に出すのは恥ずかしいけど、私には姉妹っぽいイベントにちょっとした憧れがある。これからいっぱいチャンスがあるだろうからとっても楽しみ。もちろん私より友人や恋人を優先してほしいけどね。そういえば、お出かけもまた行きたいな。


 ………恋人かぁ。美優にもいつか恋人が出来たりするのかな。というか今いるのかな。めちゃんこ可愛いのに付き合ってないなんてことある?男の人が放っておくわけ無いでしょ。…うわっなんか気分悪くなってきた。鬱。病みそう。


「と、ところで美優、入学式はどうだった?」


「そうですね…入学式自体は特に何か思うところはありませんでしたが、そのあとの交流会で友人ができました。」


「わぁ!それはよかったね!」


 本当に良かった。事故前に一度だけ高校の様子を聞いたことがあったんだけど、その時だけ明らかに美優の反応が他の時と違った。地雷踏んじゃった手ごたえがやばくて後悔したよね。それっきり学校のことは極力聞かないようにしてたけど、大学では大丈夫そうかな。いい思い出を作ってほしい。


「ええ。ナンパから助けてくれたとても良い人です。」


「うんうん!良かっ…ナンパ???」


 ナンパ???マジ???


「はい、ナンパされました。」


「なっ、はっ、え???だ、大丈夫だった?変な事されてない?」


 あまりの衝撃にオロオロしてしまう。


「肩とか腰とか触られそうになりましたが、友人に助けられたので大丈夫でした。」


「はぁ~~~~~!?!?!?!?触られそうになっただって?その変態どもはどこのどいつだ?お姉ちゃんが懲らしめてやる!!!」


 急激に頭に血が上り、他のことが目に入らなくなった。


「いいえ、もう気にしていませんので大丈夫です。今後関わることも無いでしょうし。それに、お姉さまのほうがお綺麗なので、私よりひどい目にあってしまうかもしれません。」


「よくも私の可愛い妹を!!絶対に後悔させてやる!!」


 絶対に許さん。大事な妹に何しようとしてんだ。


「お姉さま。」


 クソッ、そもそも教師達は何をしてるんだ。そういう迷惑行為があるなんて簡単に想像できるだろ。美優は可愛いんだし、もう少し気を配ってくれよ。学校主催の交流会だろ?何してんだマジで。


「…お姉さま。」


 美優のひんやりとした手が頬に当てられ、顔を覗き込まれる。血が上った頭が急激に冷やされ、冷静になる。そういえば頬を触られるのはあの時以来だな。


「お姉さま。私はもう大丈夫です。友人が助けてくれましたし、触られもしませんでした。私のために怒ってくれるのは嬉しいですが、それで冷静じゃなくなってしまったら悲しいです。」


 美優が悲しげな顔をしている。…私がこんな顔にさせてしまったのか。


「そっ…か。うん、ごめん美優。頭に血が上って冷静じゃなかった。とにかく、なにもされなかったのなら良かったよ。」


「はい。お姉さま以外の他の輩に身体を触らせる事なんてありませんのでご安心ください。」


「うん。……うん?」


 なんかおかしい気もするけど美優は普通にしてるし、気のせいかな。きっと身持ちが硬いって伝えたかったんだよね?




 ………そうだよね?

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