第4話 姉と妹のお出かけの日
~姉視点~
おはよう!!!!!!とっても清々しい朝だ!!!!!!というわけで、バレンタインデートだぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!
いつもは朝に弱い私ではあるけど、今日は楽しみ過ぎて早起きできた。私は遠足が楽しみな小学生か???小学生でもいいで~~~~~す!!何故なら!!!今日は美優とデートだから!!!(意味不明)
……ふぅ、落ち着け私。ビークール、ビークール。こんなところで体力を使い果たすわけにはいかない。お出かけのために取っておかなくては。
というか猛烈に恥ずかしくなってきた。さっさと用意しよ。いやー、それにしても楽しみだなぁ。気合入れてこ。
そうこうしているうちに時間になったので、美優の部屋の扉をノックする。
「美優~、そろそろ行ける?」
「はい、大丈夫です。」
そう言って出てきた美優は清楚系の服装で、それはもう可愛かった。元から可愛いけれども、服のセンスも良いとは。あとベレー帽がめちゃんこ似合ってる。思わず見惚れてしまう。
「…?呆けてどうしました?」
「えっいや何でもない何でもない。それにしても可愛いね!」
「はぁ…ありがとうございます?心にもないことを言わないで良いですよ。」
「いやいや本心からなんだけどなぁ…。まぁいいや、それじゃあ行こうか。電車に乗って数駅先のデパートに行こうと思ってるんだけど、大丈夫?」
「問題ありません。」
よかったよかった。今日は数駅先にあるデパートに行くつもり。プレゼント選びができるし、そのあとお茶することもできる。完璧な計画だ。
―――――
外に出ると冬の寒さを思い出す。家の中はぬくぬくだったなぁ。そう思いながら美優を見てみると、彼女も寒かったのだろう。白い息を手に当てて暖めている様子がとても可愛い。美少女はどんな場面でも絵になるなぁ。
そのまま会話らしい会話もなく、駅までの道を進んでいく。
…?おっと、何か違和感があると思いきや、靴ひもがほどけていた。
「美優、悪いんだけど靴ひも直すから先に進んでて。」
「分かりました。」
おっかしぃなぁ。ちゃんと結んだと思ったんだけど。そう思いながら顔を上げると、美優がちょうど横断歩道を渡ろうとしているところだった。信号が赤にも関わらず。
ってまずい!!車が来てる!!!
この時、おそらく私は人生で一番速く走れただろう。
「美優!!!!!!」
私の呼びかけに反応し、美優が振り返ろうとする。そこでようやく迫りくる車に気づいたらしい。そのまま硬直してしまった。
引っ張るだけじゃ間に合わない!!
とっさに飛びつき、美優に抱き着く。次の瞬間、強い衝撃が私の身体に走る。
あぁ…今日は楽しい一日になるはずだったんだけどな……。ざんねん……。みゆは…ぶじかな……。
そのまま私は意識を失った。
―――――
~妹視点~
「美優~、そろそろ行ける?」
プレゼント選び当日、自分の用意が丁度終わったタイミングで自称姉が呼ぶ声がした。
「はい、大丈夫です。」
そう言って部屋から出ると、自称姉はこちらをぼーっと見つめて動かなかった。
「…?呆けてどうしました?」
「えっいや何でもない何でもない。それにしても可愛いね!」
「はぁ…ありがとうございます?心にもないことを言わないで良いですよ。」
何を言っているんだか。自分より綺麗な人に言われたところで嬉しくもなんともない。今までの私の態度に対する嫌味だろうか。もしそうなら…甘んじて受け入れるしかないだろう。自分でもどうかと思う態度を取ってきた覚えがある。
「いやいや本心からなんだけどなぁ…。まぁいいや、それじゃあ行こうか。電車に乗って数駅先のデパートに行こうと思ってるんだけど、大丈夫?」
「問題ありません。」
―――――
2月の外はとても寒い。自分の息で手を暖める。横目で自称姉の様子を伺うと、こちらを見てニコニコしているのが分かった。朝からずっとニヤけていて少し怖い。何を企んでいるのだろう。
何を話せば良いか分からず、そのまま会話らしい会話もないまま黙々と道を進んでいると、急に姉が立ち止まった。
「美優、悪いんだけど靴ひも直すから先に進んでて。」
「分かりました。」
自称姉は靴ひもがほどけたとのこと。特に気にも留めず、そのまま進んでいく。
…それにしても、今日は一体何を企んでいるのだろう。感情をぶちまけてしまったあの日から、自称姉に話しかけられることは少なくなった。かと思えば、昨日急にお母さんへのプレゼント選びを理由に買い物に誘われた。
当然わかっているが、今日はバレンタインである。何故わざわざバレンタインの日に買い物に行くのだろうか。普通こういう日は恋人と一緒に過ごしたりすると思う。見た目だけはとても綺麗だし、彼氏の1人や2人はいると思う。それなのに、自称姉がわざわざ今日を選んだ理由が分からない。まさかとは思うが、自称姉に彼氏がいるわけではないのか?
このような考えに没頭するあまり、私は赤信号の横断歩道を渡ろうとしていたことに気づかなかった。
「美優!!!!!!」
自称姉が自分を呼ぶ声が聞こえる。
「全く…なんで…す…か……。」
そこでようやく私は迫りくる車に気づくことができた。
時の進みが遅く感じる。
あぁ…どうして最近はよくないことばかり起きるのだろう。私が一体何をしたというのか。神様は私のことが嫌いなのだろうか。あの時の告白を受けておくべきだったのか。
色々と考えが頭の中をめぐる中、目前に迫る車から目線を外せないまま硬直していると、急に体が何かに覆われ、その後すぐに身体に衝撃が走った。
私を覆う何かと共に跳ね飛ばされ、ようやく止まったと気づいたとき、下敷きになっていたそれが何だったかを理解した。
それは自称姉だった。どうして…。
「な、なんであなたが…。」
私はその状況が理解できず、頭の中が何故という思いで埋め尽くされ、身体を震わせることしか出来なかった。
遠くにサイレンの音が聞こえ、周囲のざわめきが頭の中でこだまする。私は呆然としたまま動くことが出来なかった。
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