第2話 姉と妹の出会い
~姉視点~
「父さんな、再婚するかもしれない。」
「えっ、びっくり。おめでとう。」
急すぎて本当にびっくりした。でもめでたい。今まで男手一つで育ててくれたんだし、そろそろ自分の幸せを掴みに行ってほしかった。
「それでな、明後日新しい母さんと陽菜の妹になる子を連れてくるからよろしく。」
「早すぎない???」
いやまじで何考えてんのこの人。心の準備をする時間すらないじゃん。
てか妹!?まじ!?嬉しい!!
ずっと妹がほしかった。お姉ちゃんになることへの憧れがあったんだよね。
「とりあえず1ヶ月ほどお試しで一緒に暮らしてみて、相性が悪くなかったら結婚するつもりだ。」
「分かった。結ばれるといいね。」
「そうだな。」
うげ。父さんの頬を染めた姿なんて見たくなかった。まぁでも祝の気持ちは本心から。不安もあるけど、明後日が楽しみ。
―――――
「はじめまして陽菜ちゃん。由美です。よろしくね。」
はぇーゆるふわ美人だ。てかわっか。めちゃくちゃ若く見える。あと何がとは言わんがでかい。
「陽菜です。よろしくお願いします。ねぇ父さん。よくこんなきれいな人と知り合えたね。」
「たまたま仕事関係で知り合ってな。そのまま意気投合して今に至る。」
ふーん。まぁ私としても美人な母親は嬉しいのでヨシ!
「ほら、美優も挨拶して。」
「………藤井美優です。」
はーぎゃんかわだこの子。まって、めっちゃ可愛い。この子が妹になるの?まじ??人生勝ち組では???大和撫子っていう言葉が似合う美人さんじゃん。姉妹代とか払わなくて大丈夫か???
それと昨日教えてもらったんだけど、今は高校3年生らしい。
……なんか目つき悪い。というか睨まれてるのか?何故睨まれてるの???
え???なに???この子に何かしたことあったか???さすがに初対面のはずだけど…。ってかこんなに可愛い子に会ってたら忘れるはずがない。
…あれかな。緊張してるのかな。…うん、そうに違いない。じゃないと困る。お姉ちゃんになるっていう夢がやっとかなったんだから。
「私がお姉ちゃんになる陽菜です。よろしくね美優。」
―――――
~妹視点~
登校中、昨日の出来事を思い出す。
お母さんが再婚するかもしれないとのこと。しかも明後日から相手の家で過ごすことになるらしい。正直とても嫌ではあったが、お母さんには幸せになってほしい。今までの恩があるのだから、私は我慢するべきだろう。
もし再婚したら、1歳上の姉ができるとのこと。その上、私が通う予定の大学の先輩なんだとか。
明後日のことに想いを馳せながら歩いていると、学校へ到着した。私を見て、周りがひそひそと何かを話しているのが聞こえる。今日もまた憂鬱な一日が始まる。
私は学校で腫れ物扱いされている。なんでも「孤高の姫」なんだとか。ばかばかしい。少し前にどこかの部活のキャプテンだって人の告白を断ってからそう言われ始めた。その人のことを何も知らないのに受け入れるわけ無いでしょうに。今までの告白もすべて断っているから孤高なんて言われるのだろう。
そして、どうやらそのキャプテンに好意を寄せていた人がいるらしい。告白を断ってからある女子グループに呼び出された。調子にのってるだとか尻軽女だとか言われたけど、ぼーっと聞き流していたら翌日から女子による無視や陰口が始まった。仲が良かった子たちからは目を逸らされ、友達とは何だったのだろうかと思った。これに結構堪えてしまい、私は対人恐怖症になった。特に女の人が怖くなった。
そんなわけで私は学校で孤立してしまったのだが、教師やお母さんに言うのは情けなくて出来なかった。女手一つで育ててくれたお母さんに余計な心配は掛けたくない。卒業まで1か月程度だし、授業もほぼない。それまでの辛抱だ。
―――――
目の前にはこれから父と姉になるかもしれない人達が並んでいた。
「ほら、美優も挨拶して。」
私はせめてもの抵抗として、元の自分の名字も告げる。
「………藤井美優です。」
何やら陽菜という女の人が見つめてくる。私は恐怖心からにらみつけてしまうが、その人はへらへらしながらよろしくーなんて言ってくる。私によろしくする気はない。
その後は共に食事をすることになったのだが、隣に座ってきた自称姉がうるさくて鬱陶しかった。
―――――
翌日からも自称姉は事あるごとに話しかけてきて不愉快な気分にさせられた。学校はどうだとか近くの喫茶店の新商品が美味しそうだとか、とにかく鬱陶しかった。少しは黙っててほしい。
そんな日々が続き、ある日私はついカッときて感情をぶちまけてしまった。あなたを姉だと思っていないだとか私に関わるなって言った気がする。内容はよく覚えていない。だけど、そのあとの自称姉の申し訳なさそうな顔が脳裏にこびりついて離れない。どうして暴言を吐いた私より自称姉の方が悪びれるのだろうか。この人のことを理解できない。そして吐いた言葉を悔やんでいる自分のことも。
後日、自称姉からお母さんの誕生日プレゼント選びを手伝ってほしいと言われた。私は先日の出来事の罪悪感から承諾することにした。
まさかあんなことになるなんて、この時は思ってもみなかった。
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