chapter 22

「なに? 丸山ハルカが撃たれた?」


 マルムスティーンは目を丸くした。


「はい。死にました」狙撃手は言った。


「撃たれたってぇのは、つまり、その、浅倉サトルにやられたってわけじゃねぇのか?」


 頭に包帯をまいた天王寺が聞く。


「ええ……丸山隊長は浅倉サトルに、隊長が仮死状態になっている間に隊長の弟妹が配給の停止で飢え死んだと伝えて、それから、暴れるようにそそのかしました。隊長はとても正気には見えませんでした」


「丸山の家族?」


「ええ。それまでは研究所への出勤ついでに家族の分も持ち帰っていたようで」


「そう、か……それで、撃ったのは誰なんだ? お前の隊はスナイパーライフルを一丁持って行ったようだが」


「それはたしか、田代が。けど彼じゃありませんよ。だって、撃つ理由がない。アイツは冷静な奴で、そりゃ確かにみんな戸惑ってたけど、だからってあんなことしない」


「そうだろうな……生き残りはお前だけなんだよな」


「はい。あ、いえ……その、田代は分かりません。浅倉サトルが田代の方に飛んでったのは見たんですが……」


 天王寺は眉をひそめた。


「なあ――」


 なにかを言いかけた天王寺を、マルムスティーンはジェスチャーで静止した。


「誰が撃ったかは問題じゃない。こちらの戦力は減り、浅倉サトルとの交渉が難しくなった。重要なのはそれだけだ……とにかく、まずはアーマーを回収しよう」


「ああ、そうだな」


 天王寺は狙撃手を睨んだ。


 狙撃手は目を逸らした。

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