第十七話 謎だらけの出会い

「貴様ら、どうして政府の立ち入り禁止区域にいる」


 脱出の手がかりとなりそうなクリスタルの中にて、仮面を被りフードのついたロングコートを被った、俺の想像しているザ・悪役のような服装をした人物が二人おり、今彼らと対峙していた。



「お前らは何者だ?」


 その二人に問いを投げかける。



「我々はこの国にある数々の禁止区域を取り仕切る八大官だ。リレイネークにおける重要区域は全て八大官の管轄下にあり、そこに立ち入った者はすべて八大官の管轄下にある。つまり、八大官の考えによって君らは不法侵入として逮捕することになった」


 俺たちをただ奥から見つめるだけで何もしない、手を組んだロングコートの者とその前にいる部下であろうロングコートの男が前に一歩踏み出し、そう声を荒げる。



「ほう、残念ながら俺はこの国のものじゃないんでな。お前らの法律は俺に効力を示さない」


 いつもの調子で立ち上がり、よくわからない戯言を口にしながら相手の反応を見る。



「そんなふざけたことを抜かすな!犯罪は犯罪だ。我々は今より自首をしないものに対して逮捕するため実力行使を行う!」


「そうか。ならやってくれ」


「ちょ、ちょっと待って!どうしてそうやってすぐに人と戦い始めようとするのですか!」


 調べ物をしていたネーヴェは慌てて本を戻してこちらに向かってくる。



「いや、不法侵入したのは事実なのと、もうここまで来たら悪役になるしかないから、まあ、戦うしかないよね?」

「なんでそんなに悪役にこだわるんですか!」

「そりゃあ、悪役とかかっこよくない?」

「気持ちはわかりますが、それはさすがに……」


 俺たちが彼らの話を無視して小声で会話をしていると、彼らに投げナイフを手前の方に投げられる。



「聞いているのか!こちらにおられるのは八大官の一人、彼女から逃れることは一度もない魔眼使いのイザベル・ラフォーレですぞ!」


「いやこの国の人じゃないのでしらないです」

 俺は手を振って知らないことを示す。


「彼ら話を全く聞いていません。どうしますか?イザベル様」

「やれ」


 その声が聞こえると彼らはもう一度、投げナイフをこちらに投げ込む。



 俺はそれを避けて、二人から警戒するように距離を取るように後ろへ下がる。



「待ってください、コジマ」

「ん、どうした?戦わないのか?」

「相手は魔眼使いですよ。仮面外されたら終わりですので気をつけて戦ってください」

「わかった。気をつけることにするよ」


 ネーヴェに注意されたので俺は奥にいるロングコートの女の動向を注意しながらこちらに向かってくるロングコートの男に魔法を放つ。



「火の精霊よ、火を形成して多数発射したまえ。火球連弾ファイヤボールレイン

 流石に下級魔法は彼に効かないようで相手は難なく技を避ける。



「流石に命中しないか」

「ここにやってきたお主らが何者かは知らないが、ここで消えてもらう」

 ロングコートの男は俺に接近し、詠唱を始める。



「リレイネーク流奥義、強制鎮圧コンファイメント

 俺の上から数本の鉄の柱が現れ、あたりにそれらが一本ずつ床に突き刺さる。



「コジマ、ぼーっとせずにその範囲から離れなさい!」

 ネーヴェはそこでぼーっと立っていた俺の手を引っ張って柱の刺さった範囲の外に連れ出す。



「おお、ごめん。どういう技なのだろうっておもってさ」

「だとしても明らかに発動に時間がかかってるから恐ろしい技だと思いますよね」

「ごめんごめん。そこまで理詰めしないでくれ。次からちゃんと逃げる」

 俺たちは一度クリスタルから出れる場所を探すためにクリスタルの中をロングコートの男から逃げるようにかけめくる。どうしてか、女のほうは元の場所に立ったまま、こちらに興味がないのか一切攻撃してこない。それ自体は俺たちにとって好都合だが、一歩も動かない彼女の狙いがまるでわからない。



「ネーヴェ、この男はどう片付けるんだ?」

「狙いがわかりませんが、私たちが負けたとしても檻に入れるだけでしょうね」

「どうしてそうおもんだ?」

「あのロングコートの男が全く攻撃してこないからですよ」

 そして、ロングコートの男も何故か逮捕という割には追いかけるだけで、前クラスメイトと戦っていたときと違い、派手な魔法や物騒な剣技などを振るう気配がなかった。



「実はすでに魔眼を使われて、もう捕まってるとかないか?」

「流石にないと信じたいです」

「確認する方法はないのか?自分の体を刺してみるとか」

「効果はありそうですが、もしこれが現実だったらただ痛いだけですよ」

 よく見るそういう技の解除方法を思いつき、試しに言ってみるが反対される。



「じゃあどう確かめた方がいい?あの男を攻撃してみるのか?」

「うーん、ひとまずそうしましょう。」


 俺たちは男から逃げることはやめて、もう一度後ろに振り返って、今度は魔法を打ち込むことにした。



小型版火炎放射スモールファイヤスロワー

「氷の精霊よ、炎のように氷を巻き散らかせ。氷乃息吹こおりのいぶき


 シリエルより威力の低い魔法だが、上手くネーヴェと一緒打ち出すことに成功した。



「防げ!リレイネーク流、魔術防御」

 男は立ち止まり、先程とは違う金属の壁を呼び出し、それを倒すようにして魔法を物理的に防いだ。



「氷の精霊よ、我に万物を守る壁を与え給え。氷壁」

 そして男はそのすきにこちらに向かってこようとするが、ネーヴェがとっさに放った氷壁によってその目論見は阻止される。



 ロングコート男の技は独特だ。何故か魔法を使った痕跡がないのに、魔法のようなそれらしい金属を放出する魔法をこちらに打ち込む。



 不思議に思った俺はネーヴェに聞くことにした。



「ああいう詠唱っぽいのが全く技ってどういうものなんだ?」

「おそらく元は召喚魔法でどこかから呼び出してるのだと思います」

「じゃあ俺もそういうの学習すればあんな感じの技が使えるの?」

「いや、人によります。こちらは国家に属してるのでやりやすいのだと思いますが、私たちは身の宛もない名もなき放浪者じゃないですか。だから無理だと思います」

「そっか……」

 ちょっと落ち込む。俺はかっこよくすごい建造物を召喚して敵を抑え込んだり、それを使って倒したりしたかった。



「ひとまず、私が前と同じように縛って君がそこに火炎を打ち込めばいい」

「わかった。この前のようにかかるぞ」

 合図をしてネーヴェは氷の壁を倒して、壁を登ろうとしたロングコートの男はそのまま壁に押しつぶされる。



「氷の精霊よ、敵を串刺しにして最も残酷な封印を其の者に施せ。樹氷串刺じゅひょうせんし

 息を吸って、氷の壁の下敷きになったロングコートの男にネーヴェが前と同じような氷の柱を突き刺す。



「じゃあ、燃えろ!小型版火炎放射スモールファイヤスロワー

 身動きのできなくなった男にそのまま火炎を放ち、すぐに男から離れる。



「よし、成功だ。ってあのイザベルって人はどこだ?」

「わからない。いや、あの男の後ろにいる」

 男が火炎に燃やされ苦しむ後ろから、魔眼使いのイザベルが現れる。



「合格、君たち私に協力してくれない?」


 イザベルは男を無視して、意味深な言葉を発しながら前に現れた。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る