第十六話 光るクリスタル
「それにしても私たち二人で行動するなんて珍しいですね」
「ああ、しかしこの地下街って何なんだ?」
「わかりませんね。こんな街、私は見たことも聞いたこともないです」
俺たちは一歩間違えれば底の見えない地底に落ちそうな危ない細い道を歩いて、奥にある街に入ることにした。
この洞窟の雰囲気はどちらかといえば廃鉱に街がたったような場所であり、正直どんなもの好きがこんな日光の当たらないような地下に住んでるのかわからない。
まあ、ここにある街には明かりがついてないから人がいない気がするけどな。
「しかし、ここは何なんだ?どうして崖から落ちたらこんな場所に来てたんだろうか」
「ふむ、盗賊が何か狙いがあって馬車をわざとここに落としたのでしょうか」
ネーヴェは俺の話について理にかなった答えを出そうと考えを巡らせる。
「ああ、それありそうだね。でも運が悪いよな。俺たちだけここに落とされるなんて、他の人が見当たらないってことはおそらくあいつらは襲撃にあってないだろうし」
「どうでしょう。レアさんやシリエルさんは遭遇したとしても勝てそうですけどね」
「だね。そんな気がするよ、でも俺が意外だったのはネーヴェがここに落ちてきたことだよ。あのスケールの魔法打てるのなら誰にでも勝てそうな雰囲気があるのに」
「仕方ないです。私は一旦寝ると絶対起きれないたちなのです」
自信ありげに拳をかかげるネーヴェ。いやそこまで誇らしいことじゃないよそれ。
「そうか。じゃあひとまず街についたからここから脱出するための情報を探そう」
「はい、手分けします?」
「そっちのほうがいいからそうしよう」
この街にある人が居住していたであろうたくさんの家を手分けして探ることになった。
遠くから見たときはこの街自体、何の違和感もない普通の街のように見えたが、ここに近づくとここ一帯の小屋には経年劣化によって壁にヒビが入りやあったはずの窓が割れており、誰もいないことを象徴するかのようにあたりからヒューヒューと吹く風の音とタッタッとあたりを歩くネーヴェの足音しか聞こえない。
全ての小屋の大きさはそこまで大きくはなく、例えるなら大学生が一人暮らしをするときにわざと格好つけて借りるマンションの一室ぐらいのサイズの小屋であり、二階はないあまり居住性を追求してないような小さい家だった。
「ここ、本当に人が住んでたようだな。ならどうして人が全くいないんだ?」
地下にある街が見えたとき、あれが街ではなく何かの勘違いではないかと少しでも考えたが、家の中にあった人がいなくなったであろう当時で時が止まったままの家具や食器をみてそれはただの気のせいだったことに気づいた。
「でも、特になにか目ぼしい手がかりはないようだな」
家の中には日常用品以外にも鉱夫がいたような痕跡である、あまり見ない鮮やかな緑色をしたツルハシや前いた世界と比べれば素材も材質もやや粗末なヘルメットを見つける。
他の家も同じようなつくりであり、もうこの場所に関する手がかりなんてないのだろうと諦めようと思ったときに、この街の掲示板にて少しここの情報を探る手がかりになりそうなもの、というより他に張っている紙と違う、くしゃくしゃな紙の上にとても目立つ黄色で書かれた掲示を見つけた。
町民に告ぐ、魔王召喚の儀に際して気をつけること。
1.にんにくのような匂いの強いものは品性がないのでやめよう
2.必要品はあなたの頭脳と心である。
3.失敗する可能性もあるのでその場合はここから逃げるべし
4.武器になる可能性のある危険物は禁止
5.場所はクリスタルのある場所の中、遅刻厳禁
「なんだこれ?」
明らかに異質な紙を見つけた俺はこれの表す意味がわからずその前で固まっていた。
「噂の魔王についての紙ですね。脱出の手がかりになりそうですが、正直何なのかよくわかりません」
分かれて探索をしていたネーヴェが歩いてきて合流する。
「ネーヴェはなんか使えそうなものとか重要そうなものとか見つけた?」
「見つけれなかったです。どれもただここに人がいたと教えるものばかりで、重要そうなのはなかったです」
「そうか、俺も同じ感じだ。でも、この紙が言うにはここで魔王召喚をやってるらしいな。俺はこの世界の人じゃないから何なのかわからない」
困ったな。特にこれと言った情報がここにはなさそうだ。ここ以外にはクリスタルか他の洞窟に行く通路しかないぞ。
「ん?コジマって異世界人なの?」
「ああそうだ。って前言ってなかったか?」
「そういえばそうでしたね」
「って、この世界で異世界人って普通なのか?」
「私のいた滅んだ国にもそういう人が時々来てたから知ってるんです。」
へ、へえ。意外と異世界転移が普通なんだなこの世界。確かにレアやシリエルも驚かなかったし、おかしくはないのだろう。
「まあ、あなたが異世界人なのはわかりますよ。だってあなたこの前外出して、嫌そうにこんなことするぐらいなら帰ってスマホしてた方がマシだ、なんていう訳の分から無い比喩をして文句を言ってたじゃないですか」
「いや、それはごめん」
「謝ることじゃないんですよ?」
あの日はあまり外に出たくなく思わずこの世界に存在しないもので文句を言ったことを思い出してしまった。あのときはあの場にいた全員にはは?何いってんだこいつみたいな顔で見られたことを思い出す。
「この実行場所はクリスタルの中にあるらしいから、なにかあるかクリスタルに見に行ってみるか?」
「そうしましょう。もしかすると出る方法がそこにあるかもしれないですもんね」
「よし、出発だ」
小さな街から離れた目立つ光源を持ったクリスタルの方へ向かう。
◇ ◇ ◇
「普通に入り口、目の前にあるじゃないですか」
「うわ、まじか。なんで気づかなかったんだ」
中央にあるクリスタルに到着すると、入り口が見つからないというドタバタはあったけれど、それ以外に問題はなかった。
「思ったより中がくり抜かれてるな。てっきりすごく狭い場所かと思ってたぞ」
俺としてはクリスタルの塊だから、きっと採掘に苦労して中は狭いものだと考えていたが、中はかなり広くて思っていたものと違う中身だった。ここはスタジアムのような構造で大きな広場が真ん中に広がり、中心には目立つようにかなり大きな魔法陣のようなものが描かれていた。そしてあたりには人の骨のような物が散らかっており、一体当時のここで何が起きたのか気になるような内装をしていた。
「でも変なものばかりですね。骨ばかりが散らかってて、まるでここでなにかすごいことが起きたみたいです」
「気になるな。ここで何が起きたんだろう」
魔法陣のある中央に向かってみるとそこに置かれていたのは、本棚や研究用の物品が置かれていたり、色んな読めない字が書かれた御札のようなものと何かの魔力が溢れたような跡があった。
「実は魔王がすでに復活してる話とか無いよな?」
「どうでしょう。実は復活していて裏で仲間を集めてるという話はありえなくもないですけどね」
「はは、そうじゃないといいな」
そう会話を交わして、俺は休憩がてらこのあたりにある木箱の上に座った。
調査しているネーヴェを背に体の疲れを取ろうと休憩をしていると突如
カンッカンッカンッと勢いよく手前にナイフが投げ込まれる。
「!?」
幸い当たることはなかったが驚いた俺はすぐさま対応するために当たりを見渡した。
そこにいたのは仮面を被りフードのついたロングコートを被った、俺の想像しているザ・悪役のような服装をした人物が二人立っていた。
「あれ、知り合いとかじゃないよな?」
「でも、投げナイフをする知り合いいませんよね。」
「いないな」
「なら、あれは敵ですよ」
軽く言葉を交わして俺とネーヴェはその二人に対峙する。
(街には全く人がいなかったのに、どうしてここに人がいるんだ)
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