第十五話 道中での事故

 マーマヤ王国付近の馬車乗り場にて


「コジーいってらっしゃい。私も少しあとに行くからね」

「おう、じゃあ行ってくる。到着した先で会おう!」


 レアの掛け声とともに馬車に乗る。もうシリエルや草加、如月は出発しており、レアと俺とネーヴェが街の出口でリレイネークに向かう馬車を待っていた。



 マーヤマから向かうリレイネークの道中は盗賊団が活発な地域で、そして話によれば彼らが道中に現れる可能性が高く、そのため、六人一緒に乗る馬車より一人用の馬車のほうが小型で価値のある物を積んでないことを示すことができるために、俺たちは安全を期して、馬車を分散させて時間差で出発して、リレイネークに行くことになった。



「一人だ、何しようかな。とはいっても馬車の中だから本読むか、それ以外には寝ることしかやることがないな」


 手にはシリエルから借りた魔導書があった。それを手に取り、内容を見ることにした。



 そこにはこれから学ぶ中級魔法や上級魔法が書かれていた。どうやらシリエルのよく使う火炎放射や初級で学んだ魔法の上位互換が主な魔法のようだ。直線に放つ魔法や扇状に放つ魔法や鑑賞性の高い派手な魔法もある。



 早くこれらの魔法を学んで最強になりたいな。と思いながらページを巡る。シリエルによれば俺の魔力量は多い方なので上級魔法は後々学べるだろうと言っていたので、ぜひ頑張りたい。



 外の景色は普段とあまり変わらない。森に山に大きな道があるだけで、特に気にかかるような場所はない。



 こんな場所に盗賊なんて本当に出てくるのだろうか。




   ◇ ◇ ◇




「逃げろ!盗賊だ」


 そして気がつけば俺は、崖から奈落の下に落ちそうになっていた。



「ちょっ、ちょっと待てよ。どうして起きたらこんな状況になってんだ」


 外は真っ暗で、どうやらこの馬車は深夜に彼らに襲われたようだ。



 俺は馬車から出ようとしたが馬車の扉がなぜか閉められていた。ギリギリ見える外では馬車



「逃げろって言われても、逃げれないじゃねえか!」


 外の様子を見ながら何か逃げ出す方法はないのか?と考える。馬車にある窓は小さく無理やり通ることはできないから、扉を壊すしか無いよな。



 そうだ、まずは火属性魔法で燃やしてみよう。



炎火えんか


 俺は一度手から火を吐かせて扉を燃やす。しかしその扉は燃えない。



「ど、どうなってんだこの扉?耐火性能でもついてるのか?」


 そして俺は馬車から脱出することができずにガンッとの音がなると、馬車ごと奈落に落ちていった。




   ◇ ◇ ◇




「なんでこうなっちまったんだ……」


 俺は馬車からうまく脱出することができ、洞窟の中を一人寂しく歩いていた。


 火属性魔法のおかげで視野は確保できたが、洞窟の中は真っ暗で壁や床は湿っていた。俺は滑らないように歩くため、慎重に歩いていた。



 如月に頼まれてリレイネークに行くことになったが、その乗っていた馬車が道中、夜に突如盗賊に襲われ、馬車が奈落に落ちて、気づけば見知らぬ洞窟に到着するとは思わなかった。



「とは言っても久しぶりに個人行動だ。その時間を堪能してみるか」


 俺は体を伸ばして、立ち上がって探索する。火属性魔法であたりを照らして歩いているが、ここはかなり気をつけて歩かないといけないようだ。



「しかし、もし他の人も落ちてきてるなら、この暗い洞窟を探索できるのだろうか」


 いつもの三人はおいといて、他の二人の実力は未知数なのでもし山賊に会ったら大丈夫なのだろうかと思いながら、洞窟を歩く。



 そしてこの洞窟にある長い道をしばらく歩くと、キュッキュッと音らしきものが聞こえて、あたりにゆっくりと砕かれた氷が少しずつ広がる。



 うん?なんだろう。



 その氷が気になり奥の方に火球を放って見ると



 氷が一瞬燃えて光の屈折で見える。



 そこではネーヴェが床に伏せたまま前に進もうともがいていた。



「おーいネーヴェ。そこで何してるんだ」

「あ、コジマ。はやく私を引っ張ってください、馬車の木片に引っかかったみたいです」



 炎火で顔を確認しながら彼女の周りを確認する。ネーヴェは馬車の残骸の下敷きになったみたいで俺はどう引っ張ろうか考えてみる。



「わかった、燃やすよ。小型版火炎放射スモールファイヤスロワー


 シリエルに教えられた新技である威力の下がったバージョンの火炎放射を使う。彼女によればこれが火属性の火力向上練習にとって一番いい技だと聞いた。もうちょっといい名前はないのかとちょっとは思うが。



「ちょ、ちょっとそこまでやってとは言ってないです!」


 放出される火を見て焦ったネーヴェは上にある木が燃えて重量が軽くなるのを見て、急いでその中から逃げ出す。



「すまん、これが効率いいと思った」

「私のことぐらいちゃんと気遣ってください!あなたが買った奴隷ですよね」


 ネーヴェは立ち上がるとジト目で俺のことをみる。



「いや、普通に強い仲間だと思ってるから大丈夫かと思って」

「それはそうかもしれませんが、でも私もレアさんやシリエルさんのように気遣ってほしいんです」


 ネーヴェはこちらにちゃんと目を合わせて感情を込めて俺の両手を握った。



「ごめん、じゃあ次からはそうするよ」

「ぜひ、そうしてください」

「おう、でもネーヴェも襲撃にあったのか。他の人とかも落ちてるのかな?」

「それなら一回他に仲間が落ちてない探しましょうか」

「そうだな。これからどこに行くべきだろうか」


 ネーヴェを連れてもう一つの道のような場所を見つけたので奥に進む。



 すると巨大な空間に通じそうな道を見つけたのでそこを抜けると



 そこにあったのは大きな光源を持つクリスタルが中央に鎮座する、断崖絶壁な道が広がる小さな街があった。



「なんで地下になんかがあるんだ?」

「私もわからないです。見つかりませんし、行ってみましょう」

「そうしよう」


 二人で街に向かいそこのことを探索することにした。


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