リレイネーク編
第十四話 戦いを終えた後
時は戻り、クラスメイトの決起を阻止して約一日がすぎ、
俺は今宿の中で、その
俺がこの
うーん。俺の物覚えが悪いのか全然クラスでこの人を見たことない。まあ当たり前か、俺はずっと寝てたからな。
「如月さん、始めまして。小嶋忠正と申します。今日の調子はどうですか?」
彼女は一応監視のため俺と同じ部屋に寝かせており、俺は彼女のベットの近くに椅子をおいて座り込む。
「ん、ああ。奴隷商人の。この度は助けてくれてありがとう。どうして私なんかを助けてくれんだ?」
俺がこの部屋に来たことを見て、如月はベットから起き上がる。
「まあ、な、な仲間がほしかったから、で、ですかね?」
ちょっと下心を持って彼女を仲間にしたとは一言も言えない。
「ほう、そうか。でも、考えたことがないか?もし私がここで
挑発するかのような不敵の笑みを彼女は俺に見せた。
「大丈夫です!私のスキルが抑え込みますので!」
俺は負けじと満面の笑顔を作ってみせた。
「うん……奴隷商人という話だけ聞いてたけど、君のスキルは何なんだ?」
その顔を見て如月は引き下がる。
「服従ですね。格下または仲いい人に使える感じです」
「ほう、つまり私は君の格下になっとということか?」
如月の逆鱗に触れたのか、彼女の髪少しだけ逆立つ。
「あ、ごめんなさい言葉が悪かったです。ひとまず仲良くなる感じのやつです」
「ふーん、まあいい。他のクラスメイトはどうなったんだ?」
「ああ、それはですね――」
それを聞いて今日マーマヤ王国で配られる新聞を購入したことを思い出す。
新聞には、パサイセンの
俺は決心して、ゆっくりと口を開いた。
「おそらく、全員死にました」
「……」
如月はその結果を完全に予想していないような面食らった顔で、絶句していた。
「全員死んだのか?」
俺の方に顔近づけ、彼女は聞き間違いではないかと考えもう一度聞いた。
「はい、私たちはあくまで行動不能にさせただけで、殺してはいません」
「ああ、それはわかる」
如月はうなずく。
「でも、新聞では焼死体で発見と書かれていました。」
「焼死体……本当か?」
信じられないような顔を彼女はする。
「本当ですよ。私が嘘つくわけ無いじゃないですか」
「いや、私たちはまだ会って、いや話して間もないよね?それをどう信じるんだ」
その返しを聞いた如月は呆れた顔を見せる。
「それは……ご想像におまかせします」
クラスメイトとはほとんど話したこと無いことを思い出して俺は苦笑いする。
「だが、もしそれが本当なら私が直々に行って見なければ――」
如月は一度外に出ようとベットから降りようとするが、
「ゲホ、ゴホッ」
激しい咳で彼女の考えは止められた。
「ごめん。風邪が治ってから行くことにする」
「そっちのほうが良さそうですね。では私は用事があるのでまた夜に会いましょう」
俺は苦笑いしながら、この部屋から離れた。
◇ ◇ ◇
そして数日後、如月の風邪が治った頃。
「おーい、いくぞ!如月くん」
「了解です。レアさん」
俺たちは変装服と仮面を出国時にバレないように処分して、いつもの服装に着替えた。なぜかレアのおすすめで俺はずっとボロボロの服を着させられている。
てか、悪役やるならどこかで名前を名乗ったほうがいいよな。何もしなかったからこの国の新聞では常に謎の組織、四人衆とか変な呼び方で呼ばれている。
そして、今はまえ風邪を引いていたときに如月が行こうとしたていた燃やされた宿に向かっている。
「いやーシリエル、あの新技本当に難しいな。俺未だにあの火傷治ってないぞ」
「あら、小嶋が中級魔法習得しない限り、これ以上の成長は見込めませんわ」
俺の右前腕は数日前に練習したときに魔力ミスで怪我をしてしまい、それによって包帯を巻いていた。一応全部解けそうなほど治ってはいるが、まだ解かない方がいいと聞いたから巻いている。
「ねえ、コジマ。あなたは私の氷属性魔法を勉強する気はない?」
「氷魔法ってあれ、この前言う通りにやったけど、冷気すらできなかったぞ」
「それは君が私から習う気がないからですよ、真面目にならえばきっとできます」
「本当か?シリエルに聞くと氷属性魔法の使い手ってこの世界ではかなり少ないから、習得難易度は初心者にとって高いって聞いたぞ」
「でも氷魔法の使い手が目の前にいますよね?言い訳してないでこれから勉強していきましょうよ」
ネーヴェが不服そうに体を揺らす。勉強するのは嫌だー!
「レアさんは色々知っててすごい」
「はは、そんなそんな。私はただ寿命の長いおばさんだよ」
レアの方を見ると如月と話していた。この二人は気が合うらしく、前からよく会話をして、仲良くなっていた。
しばらくすると、その話題の宿についた。その宿跡には一人の女性が意味ありげに花束を並べて一人寂しく座って祈っており、きっとこの宿関係者の遺族なのだろう。南無。
「本当に燃やされてるではないか。一体これはどういう――」
如月は不思議げに宿に近づくと、そこで祈っていた女性がすっと彼女の方に振り向く。
「もしかして、カオル?」
「ん?お、お前はもしかして草加!?」
あれ?二人は知り合いだったのか?
「私の好きなものはなに?」
「メイプルホットケーキだ。私のは何かわかる?」
「えっと、カレー!」
「合ってる!本物だ!」
二人とも知り合いのようで本人かどうかを確認し合ったあと、抱き合った。
「なんかあの二人感動的だねえ」
「そうだな。どうやら俺の元仲間っぽい」
「っぽいってどういうことなの?コジーは仲間の名前すら知らないの?」
「いや、俺はソロだ。だから仲間なんていなかった」
「うわ、自慢できることじゃないよそれ」
自信満々でドヤ顔をする俺を見てレアを呆れた顔をしながら文句を言った。
「でも、不思議ですわ。新聞には全員死亡と書いておりましたが、仲間が何人か生き残ってるみたいですわ」
「マーヤマの人も相手の勢力図をよくわかってなかったからでしょうか?でも、不思議ですね。そうだとするならすぐにトドメをさせる人は思いつきません。一体誰がトドメを刺したのでしょう」
「だよね。国が彼らにトドメを刺すなら放火なんてするわけないし、そんな彼らの位置が分かる人でいるのかな?」
「なんか裏切り者でもいそうな言い方だな、レアちゃん」
いつもの四人で雑談をしていると、如月は怒ってるようで髪を逆立たせてこちらに歩いてきた。
「小嶋くん、草加と一緒にリレイネークに行こう」
「如月さん、どうしたんですか?」
激昂した如月は真剣な目つきで俺の顔を見る。
「今回の件の犯人がわかった。クラスの一部の人たちが裏切った」
「うん、俺のこと?」
「違う!西村たちがクラスメイトを全員殺したの」
冗談で言ってみたことが本当だとは思わなかった。まさか本当にクラスメイトが裏切ったのかよ。
「西村……」
西村、ああ思い出した。クラスの中でもかなり目立つ個性的な男だ。歯に衣着せぬ物言いでわが道をいくような、俺とは正反対のような人物だったと思う。
「ああ、あいつか。俺と違う変わった性格してるよな」
「いや、小嶋くんとはほとんど一緒の性格をしてる」
「そ、そうなのか?」
それは心外だ。俺は別に歯に衣着せぬ物言いでわが道をいくようなやつじゃない。
「うん、まあそんな冗談を言ってるような暇はない。確か向かう先がないって話してたよな?なら、リレイネークにいくべきだ」
「いいよ、いこう。みんなはどう思う?俺は行く場所も決まってなかったしここでもいいと思うんだけど」
ちょっと考えようとでも思ったが、まあ行く場所ないしそこでいいか。と俺は思った。
「私は別にいいよ」
「いいですわ」
「賛成です」
三人ともどうともないような顔でうなずく。
「ありがとう」
三人賛同を受けて、如月はお辞儀をして感謝を示した。
俺たちは西村たちの向かったリレイネークに向かうことになった。妙な出来事に巻き込まれなければいいが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます