第十三話 二つの後日談

 マーヤマ王国側 数日後


 パサイセンでは王が配下に責任を追求している、それと同時期にマーヤマではそろそろ勝利するであろうと楽観視する世論ができていた。なぜなら小嶋一行が首都乗っ取りを謀ったパサイセンの精鋭部隊クラスメイトを潰したため、そんな人の首都を直接攻める精鋭部隊クラスメイトがいなくなったのならきっと勝てるだろうと思われていた。



「パサイセン王国侵攻の件についてですが、王国内にいきなり現れた敵集団はすべて仮面のつけた謎の四人衆に討伐されました。残党はまだいるようですが、全て逃げたようです。」


 マーヤマの拝見の間にて配下が王へ戦場の近況を伝えており、王はそれを厳粛な目つきで見守っていた。



「そうかい、どうやら謎の戦士が助けてくれたようじゃい。もしかして彼らが予言に現れると言われる伝説の勇者パーティかもしれぬ。彼らにぜひ拝見してみたいな、見つけ出したら、彼らに拝見することも予定に加えれるか?」


 その報告を聞いたマーヤマ王は己の自慢の髭をさすりながら、ニコニコと微笑む。



「国王様、それは流石にいつも通り能天気すぎます!彼らの素性はわからないんですよ?功績をあげてこっそり王に近寄ろうとするような王の命を狙っている恐ろしい組織の手先なのかもしれません。一応我が国としては彼らを指名手配として手配書を出したほうがよいと考えておりますが……」


「ホホホ、よいではないか。それなら、ワシのことを狙うより敵集団につくはずであろう?しかしそこをわざわざ敵側につかずにそこからワシらを守ってくれた。つまり何か考えがあるのは本当じゃろうが、それでも我々を魔の手から守った事自体が尊重に値するんじゃ」


 マーヤマ国内ではその正体知らぬ四人衆の話はすぐに伝えわたり、その四人衆を讃えようとする動きができており、そんな話を聞いた国王もぜひ会いたいと考えていた。



「それは国王様のおっしゃるとおりです。確かに、彼らのおかげで我が国は一日で敗北するところをいきながらえたわけですから……」


 そう答えられて配下は返す言葉がなくなる。



「ふむ、姿かたちはわからない名無しの権兵衛であったとしても、我々を助けてくれたのはたしかじゃ。神と彼らに感謝せねば。どうにかして会えないのかね?」


「それは無理です、痕跡がないことからして、おそらく何かしらの空間魔法の使い手なのでしょう。どうやら彼らには全く出入りした痕跡はないので、詳しい情報は我々にもわかりません。そしてこの国の強者たちは今前線にいるので、その間に国から抜けられるともうどうしようもありません。」


 なぜか入国を管理する衛兵らも彼ららしき人物の情報を持っていなかった。聞いた話によれば、その四人衆はすべて魔導師だそうだ。それなら仕方ないと王は納得する。

 今では国際的に犯罪者などの魔法乱用に対する規制を進めるために魔力制限装置を開発する動きが過激しているが、魔力自体誰にでもあるものなので、明らかに武器だとわかるような杖でも持ってない限り、これらの犯罪を犯そうとするものたちの摘発はかなり難しい。



 四人衆にしてやられた、おそらく彼らはその穴をついてこの国に入ってきたのであろう。と配下は考える。



「そうかい、なら仕方ないのう。そんな国の英雄には我が娘でもあげようとでも考えておったがのう」

 どこかと抜けてる国王は冗談か本気かわからない話を口にした。


「それはあまりにも能天気すぎますよ、国王様!」


「ホホホ、よいではないか、よいではないか!」

 王は自分の太ももを叩いて笑った。




   ◇ ◇ ◇




 クラスメイト側(崩壊済)


「いやいや、まさかあの小嶋がクラスを崩壊させるとは思いもしなかったな」

 暗殺者の西村が違う国へ向かう馬車の中で残った二人のクラスメイトと一緒に過ごしていた。


「そ、そうですね。僕もよくわかっておりません。彼、異世界に来てからハブられというよりわざとハブられに行こうとしてるような姿勢が多くて、わざと今の状況を作ろうとしてたんじゃないかって思うくらい不思議なことをしまくっていて、一体何を考えてたのでしょうか」


 クラス一の本読みである小松はいつもの調子で早口で色々話す。



「俺も信じれない。確かにクラスの中央人物には嫌なところがあったが、それらを終わらせる原因なるとはいまだ信じれない」


 目を閉じながら話す久世。彼は学校にいた頃は風紀委員だった。



「だな、まああいつらは俺らが殺しちまったからもう戻りはしない。草加のやろう、最後まで邪魔したが、目の前で一人殺ったら逃げちまった。」


 あの日、小嶋が如月らの作戦を打ち砕いたあと、俺たちは決起した。如月の在り処はわからなかったが、草加が一時的にこの国から借りてた宿の一室であるけが人がたくさんいる療養部屋に突入して、そこにいたすべてのクラスメイトを容赦なく殺った。



 小嶋の後始末が甘かったのか、全員は死んではおらず、重症ではあるけど療養すれば復活するという状況だった。



 前から俺はあのメンバーの態度が嫌いで、卒業後は絶対関わらないようにしておこうなんて考えていたが、今ここで復讐するチャンスが巡ってくるとは意外だったが、もちろんそのチャンスを無駄にせず全員殺した。草加と如月の状況はよくわからないが、きっと長くは生きられないだろう。



「あれは面白かったですね!僕も傑作だと思ってました!回復役だのででしゃばっていましたが、やっぱり佐藤という友達を殺されてほんと可哀相でした!彼女の大親友である如月も行方不明ですし、ほんと神様はこういう気高い女たちに罰を与えるのがうまい!!」


 小松は頬釣り上げて、今すぐにでも倒れそうな勢いで大喜びしていた。



「ははは、小松お前さすがに喜び過ぎだよ!でもあの優等生もこれで終わりか。まあ人間なんてそんなもんだわな、いくらきれいなことを言っていても目の前で夢を壊せばすぐこれだよ。いくらいいやつでも心は砕かれて、そのまま三日三晩寝込むんだぜ」

「やはり西本、お前についてきて正解だった。面白いものをたくさん見せてくれる。」


 久世は目を閉じて微笑みながら言う。



「はは、言わずとも見せてやるよ。娼館とかもたくさんいこうな久世、小松」

「行きましょう!僕の調べによれば向かう先のリレイネークは世界一の強国で、今は転移者を募集してるそうですよ!転移者の証明ができれば国内でできることの全てが無料になるらしいです!」

「まじかよ、それを早めに言ってくれよ小松。最高じゃないか」

「とても面白そうな場所だ。私としては早く着いてほしい」


 三人はリレイネークに馬車を走らせ、彼らはまだ後に小嶋と再開することを知らないのであった。


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