第十二話 敵の撃退と王国の動向
「時間がないから手短に伝える。あのでかいやつに氷で身動きさせなくしたら、油を撒いて着火しよう。そして最後に幽霊で首を絞めれば勝てる!名付けてコンビネーションだ!」
これが先程俺の考えた、あの誰も止めることができなさそうな
前を見ると、三人は俺の指示通りに魔法を打つ準備をしていた。まあ、レアの技は魔法なのかはよくわかっていないけどな。
「氷の精霊よ、敵を串刺しにして最も残酷な封印を其の者に施せ。
ネーヴェがそう唱えると
「いつもなら避けられてばかりですが、さすがにこの大きさは当たるようですね」
「行きますわ。後は私のスキルに任せて、全てを焼き払うよう、勢いよく消し去ってくださいませ。
シリエルは詠唱を終えると、きれいな油と炎の混ざった魔法を撃ち、火は油に乗せられ徐々に勢いが強くなっていき、やがてネーヴェの氷をも燃やした。
しかしそれでも
(バーサーカーって本当に体力があるんだな……)
「じゃあ、最後に私のわざで――絞めて!」
「よし!作戦成功!」
「おお、初めて共同作戦がうまくいったね!みんなすごいよ!」
「ふう、うまく行って本当に良かったですわ」
「ですね。ってあの子、あのままにしておいても大丈夫なのですか?」
三人の成功を祝っているとネーヴェがいきなり話に割って入った。指をさした先を見ると先程の
肩にかかる程度短い黒髪に黒いジップパーカーと制服を着ており、意外と体つきがいい。運動部所属だったのかな?見てわかるように異世界にはいない服装なのでおそらくクラスメイトの誰かだ。だが俺は異性と交流、いやクラスメイトと交流がほとんどなかったので、意外と名前を覚えれてない、誰だっけ?
「そうだな……決めたぞ」
彼女に近づいていき、俺は彼女を仲間に加えることにした。理由は?強くて可愛いからだ。それだけ。
「バーサーカーさん、服従しろ!」
前と同じように手から大量の御札の帯がゆらゆらと現れ、それがミイラを作るかのようにその子の全身を縛り付けた。今回も無事に成功した。これを見るとなんでレアには失敗したのか不思議になる。
「ちょちょちょっと!勝手に仲間増やさないでよ!」
「それ彼女のような
「今、何をしたんですか?」
俺がスキル使ったのをみて三人は色んな反応をする。
「別に仲間増やしても困りはしないよ。ほら、近接できる人ってこのチームにちょうどいいだろ?」
「近接が必要なのはわかりますが、その
「そもそもバーサーカーは基本的に、スキルを使わないと戦えない近接職じゃないのはかなりきついと思いますわ。そしてそういうスキルは悪役として目立ちすぎないかしら?」
「そもそも私に許可を得てから仲間を増やしなさいよ」
「いや、一つずつ説明させてくれ。実は俺のスキルは服従っていう、絶対的にコントロールができるようになるやつだから暴れないようにコントロールするよ。そしてシリエル、目立つのは仕方ないよ。今のところ目立たないように攻撃できるのはレアぐらしかいないわけだし。そのあとレアちゃん、それはごめん。でも彼女は絶対仲間になったら強いと思ってしたんだ」
三人に詰められるようにして質問される。俺はちょっとドキッとしながらも三人に説明して己の自信ある目つきを見せて信用を得ようとする。
「はあ、そんなに自信があるなら、君のことを信じるよ。ほら、一旦その子を宿まで運ぼう」
レアは俺の自信あるげな顔を見て、ため息を吐きながらも同意した。
「おお流石レアさん!とても寛大だ。ありがとうございます。」
俺は合掌をしてレアに感謝を示す。
「そういえば他のクラスメイトとかはどうなったんだ?」
そして、帰る途中俺は少し気になることを聞いた。
「そうですわ……他に魔術師カップルがいたけど、魔法に慣れてないようで火力によるゴリ押しをするといとも簡単に倒せましたわ」
「うん、この作戦に参加したのはこのバーサーカー含めて十人程度しかいないようでした。他の人はどこに行ったのでしょう」
「そうか……他の十人が行方不明なのか。まあいいや、彼らがこの戦争に参加しないならそれに越したことはないし、それなら一度帰ろう」
「はい、そうしましょう」
残ったクラスメイトがどこに行ったのか俺らは知らないが、ひとまずこの場から一度立ち去ることにした。
◇ ◇ ◇
パサイセン王国側
小嶋たちがクラスメイトを止めてから数日、戦争を始めて一ヶ月が立つと、パサイセンでクラスメイトたちを転移させた主犯であるフィセップに対して王は失敗した責任を追求していた。
王国の転移させたクラスメイトたちを敵首都で決起させ、そのまま占領する作戦は何者かに阻止された。そしてその勇者らは皆失踪し、事件が起きた場所は他国であるため、ことの詳細を確かめようにもできない。
「おい、フィセップ。お前の管轄下である転移者チームはどうなっているか知っているのか?」
「すみません国王陛下、ワシもよく存じ上げません。わかることは、何者かに襲撃されて、全滅したということだけです。いかんせん他国の国内なので情報が本当にすくないのです……」
「なに!?お主らの作戦は百パーセント成功すると聞いて私が賛同したんだ。それを知らないのかね?」
「それはもちろん存じでおります。しかし……」
謁見の間にてクラスメイトたちを転移させた主犯であるフィセップは土下座をしながら王に対して謝罪をしながら話していた。
「だいたい、お前らは勝手がすぎるぞ。戦争を始めようと私に要請した割には、目立った戦果が出ておらぬではないか!転移者ではない我が軍はマーヤマ王国に徐々に侵攻できておるが、苦戦しまくりではないか」
「すみません、それについては本当に申し訳ありません。ただ、我々はそれについては新しい案が考えました」
「ほう、なんじゃ?」
「国の所有する無法地帯である奴隷街を我々上層部が破壊して、そこにいる強力な幽霊姫及び火炎魔術師を仲間に加えて強制的に戦わせましょう。もちろん、先々代の話も知っております、だが私たちは新しい方法考えたのできっと仲間になるでしょう」
「幽霊姫を仲間に?ほう、先々代の王が恐れたことを行うのか。どうやるのかね?」
「破壊してそれをマーヤマのしわざにするのです。それで彼女らの恨む心を引き出して仲間に加えさせます!」
「それはいい案だ。よい、やれるならやるがよい。フィセップ、絶対この戦に勝つのだぞ!」
「承知しました!王のご厚意に感謝いたします」
そして謁見の間からフィセップは抜ける。男はそのまま急いで馬車を呼んで自分の家と違う方向に進む。
「ふう、ワシの母国であるフィリアンセムに要請して奴隷街とこの国を全部まるごと潰してもらうぞ……」
転移者がマーヤマ王国で負けたのは予想外だったが、彼らよりもっと使えるコマがある。むしろこんな落ちゆくのが見え見えなこの国に長年付き添ってきたが、そろそろ時間だ。さっさとフィリアンセムに攻めさせて潰そう。国の半分を呪い殺した姫なんぞ知らんが、そんなもの我が国にいた霊媒師に成仏させて貰えばよい。そして奴隷街のようすを見に行かせるときに必ず出てくる火炎魔術師も我が国いる水使いの魔術師にやらせてもらおう。
(ホッホ、この国に媚びるのはもうごめんだ。さっさと消えてもらおうではないか!)
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