奴隷商人の百鬼夜行 〜職業を奴隷商人と認定され、クラスから軽蔑されながら左遷されると最強パーティを作ってしまいました。ハッピーエンド目指してじっくり悪役ライフ〜
第五話 訓練と転移者の今後を伝えられる
第五話 訓練と転移者の今後を伝えられる
シリエル捕獲作戦から数日がたち、森の火災はレアの知り合いの協力によりうまく消せたそうだ。そして今、俺はその捕獲したシリエルに火属性魔法を教えて貰っている。
「魔法っていうのは、詠唱ありとなしで精度と威力が変わるのですわ。精度が高くするなら詠唱あり、乱暴に行くなら技名だけでいいですわ」
「先生!なら技名なしはどうなるんですか」
「それだと魔力が暴走するので魔法が出ませんわ」
「そういえば、この世界の魔力ってどうなってるんだ?そしてその限度はどれぐらい?」
「人によりますわ。どれぐらいあるかは気絶するレベルまで魔法を打たないとわからないでしょう」
「ステータスでみることはできないんですか?」
「その技術はある魔術師の開発した二十年前から普及し始めたモノで、まだまだ発展途上の技術なのでそういったことはできませんわ」
「いわれてみればシリエルさんがこれを使ってるところみたことない」
「あれって実は魔法陣を身体に書かれないと使えない技なので、基本的に一般人はそういった能力はもっていませんわ。あなた方が珍しいだけですの」
「なるほど」
他にもいろいろと彼女に聞いた。ここは異世界なだけあって、現世の常識とは違うことが多いことが沢山あった。例えば神を侮辱すると国に反逆するレベルの犯罪になったり、国のよっては元奴隷しか入れない国があったり、奴隷を奴隷用ではなく神様への献上用として購入する国もあるそうだ。
そして今住んでいるパサイセン王国がある地域は長い間戦争が続いていたが、今は魔王に備えて休戦中だとか。
「そういえば、このスキルを受けてからの気分はどうなんだ?変なところが痛かったりしない?」
「ただ技の出力が下がっただけで、それ以外の気分は悪くないわ」
「そうか、なら良かった」
服従というスキルは、俺の意識で人のことを縛れてそれをある程度コントロールができるようになるようになり、位置がわかるGPSのようなものが追加されるから変に逃げれなくなるようだ。
欠点はその相手が人間だからそのコントロールはあくまである程度限界がある。例えば、本人が剣術を全く使えないのに服従によって剣で剣聖と渡り合えるとか水属性を全く使ったことがないのに水属性で攻撃させるとか。
スキルの雰囲気としては確かに指揮官に近いもので、ステータスの言うように奴隷商人向きなスキルだ。ただ問題はこのスキルの解除方法が今のところまだ分からないので完全に奴隷商人向きとは言えない。まあ、最近できた技術だし、そんなもんか。
「ひとまず訓練に戻りましょう。
「もちろんだ。火の精霊よ、火を多数形成して発射したまえ。
手の先に火の球を数個形成して屋敷にある枯れ木に打ち込む。打ち込んだあと見事に着火して木は燃え切った。
「いい感じですわ、ひとまず今日はここまでにしましょう」
「了解です!」
転移してから火属性魔法の訓練も上手くいってる。前までは魔法すら打てなかったが、今はおかげで中級手前の火属性魔法を打てるようになっている。
シリエル曰く俺の吸収力はかなりはやく、このままいけば半年後ぐらいには上級にいけるような実力はあるみたいだ。やっぱり授業を聞いてないおかげで俺はたくさんある脳の容量をうまく転用できてるみたいだ。ざまあみろ!先生!
「では、一度レアのいる場所に戻りますわ。彼女はきっと暇してることでしょう」
「うん、そうだな」
いつもみんなが集まる応接室だった部屋に戻り、椅子に座ってシリエルから貰った手書きの魔法書を読む。
「レア、茶に甘いものばかり入れないでくださいませ!それだと味が壊れますわ」
「いいじゃないの、甘ければ甘いほどいいのよ」
「……やめてくださいませ」
あの二人はここに集まってから暇さえあればイチャイチャしていた。俺としては前の世界にいたときの時間をほとんどソロで過ごしていたので、ちょっと羨ましく思う。
「はい、コジーもこの茶を飲みなさい。遠い国から輸入したものを私が直接出向いてまで頑張って入手したんだよ」
「おお、美味しそうな茶だ。」
ひとまずそのお茶を味わってみる。
変な味がする。なんだこれ?ネバネバした感触があり、はちみつでも入ってるのか?お茶にこの甘味は合ってない気がする。
「どう?シリエルの評判と違って美味しいよね」
「お、おう。おいしいな……」
レアはきらきらとした目を見せて、その顔を見て思わず俺はお世辞を言ってみたものの、やっぱり茶の味は変だった。本当に何だこの味?何を入れたんだ。
「ほら、シリエルの考えと違っておいしいって」
「絶対、言わされてるだけですわ」
「そんなわけないない」
「ひとまず、変な食べ物入れるくらいなら今から私が買い出ししに行きますわ。皆様はやくついてくださいませ」
「行きたくない〜」
「あなたのような味音痴はぜひ行くべきですわ」
羊革のカバンを持ったシリエルは、家の外にそのまま歩いて出ていき、俺たちもついていくことになった。
◇ ◇ ◇
外は晴、外出日和だ。
「レア、わかったかしら?肉や魚に甘いものを混ぜてはいけないのはもちろん、苦みを楽しむものにも甘いものなんて入れちゃいけませんわよ」
「甘いものこそ至高だよ。他の味覚なんていらない」
「……冗談はほどほどにしてくださいませ」
シリエルは街から離れた商店でレアに説教をしながら買い物をしていた。俺は買い物なんて全く分からないのでぼーっと外で立っていた。
「緊急ニュース!我が国パサイセン国は隣国のマーヤマ王国に宣戦布告!勇者らの初出陣は二日後!」
男が荒い感じの紙を持ち、道行く人に配っていた。物騒な話が聞こえたのでせっかくだしひとつ貰おう。
「お兄さん、ひとつくれ」
「おう、あいよ」
一応お金はレアから分けてもらってるので買える。それにしても銅貨三枚と比較的安い値段でよかった。
この世界の貨幣通貨というのは、ざっと三つある。銅が基礎通貨であり、銀がやや高い服や食べ物を買うときに使い、金は高級品を買うときに使うそうだ。他にもあるらしいが大まかな分類はこれだそうだ。
新聞に書かれた内容を大まかに言えば、突如この国に現れた希望の星である勇者たちが、パサイセン国周辺を探索しているうちにマーヤマ王国に魔王を庇護している痕跡を発見したので、それを理由に戦争を仕掛けるそうだ。記事の最後には勇者たちの門出に期待をと書かかれていた。
全く、人を適当に追い出しといてよく希望の星なんて書けるな。そう思いながらもう一度物思いにふけた。
「コジー、何か新聞買ってたけど何書かれていたの?」
店内で買い物を終えたレア達が出てくる。二人とも両手に色んな食材を買っており、その量は何に使うんだと思うぐらいあった。
ひとまず屋敷に帰ることになった。
「パサイセン国が戦争を始めたらしい。出発は二日後だってさ」
「嘘!?こんなに早く動くの?戦争するとしてもてっきり一ヶ月後だと思ってたよ」
「それは大変ですわ。私たちはどうすればよいのかしら?」
「もちろん悪役として妨害をして戦争を上手く行かせないようにするんだよ」
「悪役?何の話かしら?」
話の内容を知らないシリエルは不思議そうに首を傾げる。
「そうか、シリエルは知り得るわけないのか」
「……?」
「……?」
一瞬だけ空気が凍った。うーん、やっぱりジョークは難しいな。
そしてレアは俺の発言を無視して話し始めた。
「この子に復讐しようって話したら、本人が復讐は嫌いだから悪役になりたいなんて変なこと言ってるから、今私が協力してるの」
「は、はあ……?どういうことかしら」
「つまり、魔王の予言に対して蠢く各国の陰謀を阻止しようって話!」
「なるほど、それは面白そうですわね。」
「でも前言ってた仲間を集める話はどうするんだ?俺はまだ火球しか打てないぞ。レアの街の知り合いとかに頼るのか?」
「うーん、知り合いはこの国の偉い人の息がかかってたりするかもしれないから、そこは成り行きに任せよう!」
知り合いはだれだか知らないけど、そんな偉い人と仲良かったりするのか。
「成り行きって、それはそれでかなり雑な考えだな。まあここは奴隷商人らしく、奴隷を買おう。特に普通の方法ではコントロールできないような危ないやつ」
「そういうのはこの国にあるのかな、意外とこの国奴隷の流通を地味なところで制限してたりするから、そういうのはむしろマーヤマ王国に行かないといない気がする」
「ん?宣戦布告されたマーヤマ王国って奴隷の国なのか?」
「半分あってるけど半分は昔、強国だったから色んなやばい奴隷とかが増えまくってたの」
「昔は強国って何があったんだ」
「やばい奴隷が増えまくったから、その奴隷が集結したり、それを持ってる一部の貴族が独立しまくって弱体化したの」
「へ、へえ……俺も気をつけとこう」
奴隷が多くなると反逆されるんだ……今後のために気をつけとこ。
「コジーのスキルのことなら別にその問題は無いと私は思いますわ。奴隷が暴れやすいのは封印してる魔法がそこまで強くないためなので、あの魔法はある程度の限度を超えた実力を持たれるといとも簡単に封印が外れるの」
「なんだそりゃ、てっきりそういう奴隷を封じ込む魔法は最強かと思ってたよ」
「じゃないとこちらの幽霊姫さんが呪殺した話なんてありえないでしょう?」
「あーたしかに」
「とりあえず、明日からマーヤマ王国に出発だ!はいコジー、掛け声!」
「……頑張りましょう」
「面白くないねぇ」
屋敷につくとレアは前のように掛け声を要求してきた。やめよう、こういうノリは。転移されたときのようないじりをされたときのことを思い出すからこういうことはやりたくない。
いったんマーヤマに行くための準備することになった。
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