第11話

「そういえばあの刑事の方、なんで俺の名前知ってたんだろ...?」


色んなことがありながらふと疑問が浮かんだ。


「あ!そうか!この前、刺傷事件の日に訪ねてきた刑事さんだ!しかしなんで俺に突っかかって...。恨みでもあるんだろうか?日奈子さんか?それなら有り得るな。恋敵というやつか...。しかし日奈子さんが気になるな。今日奈子さんの家に行っても警官がいるだろうからどうしようもない。LINEでも入れとくか。『日奈子さん、少し落ち着いたら一報ください。』これでよし。」


「しかし凄惨な事件だったな。交通課の日奈子さんには耐えられないかもしれないな...。」


そんなことが目まぐるしく思い浮かんでは消えていき、その繰り返しでずっとモヤモヤしていてむず痒い気分であった。どうしようにも行動ができない歯がゆい気持ち。やるせない気持ち。日奈子へ対する想い。そんなものがロープで体をギュッと縛られる感じで息苦しい。


そんな日がしばらく続き、桜井からLINEが届いた。


『今日、大悟さんの家に行っていい?』


大悟は即座に返した。


『もちろんです!会いたかったです!』


LINEのやり取りはそれだけで、桜井は夜8時頃に山本の家に来た。


桜井は山本に


「大悟さん、私は、私は...。」


と情緒不安定な桜井。そして山本は


「大丈夫ですよ。日奈子さん。僕がついてます。」


と桜井を強く抱きしめた。そして考える間もなく二人は求めあっていた。


「大悟さん、ずっとそばにいて。お願い。」


「わかりました。ずっとそばにいます。」


山本はその言葉の重みを知る由もなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る