第10話

あれから恋仲になった山本と桜井は逢瀬を交わす度にセックスをしていた。それはまるで覚えたての十代のようなパッションであった。毎日毎日飽きもせずずっとセックスをしていた。


「私達、体の相性もぴったしね。」


と桜井が言うと、


「そうだね。日奈子さんがこんなにも激しいなんて。」


「やめてよ、恥ずかしい。大悟さんの前だけだからね。」


と照れたように話す桜井。


「そういえば日奈子さん、この前、屑鉄屋の採用が決まったよ!」


「ほんと?よかったじゃん!おめでとう!」


「これから俺もちゃんと食費を出せるね。」


「これでお互いに成長していけるね。」


そこはかとない二人の幸せなひと時であった。


とある日。山本が


「たまには外に出ませんか?そうだ。僕らが出会ったあの公園に行きませんか?」


「それもいいわね。行きましょう。」


そういって二人は近くの水島中央公園に向かった。そこではそこそこ子供たちが遊んでいた。


「こらー!君達ー!そこでのキャッチボールは危ないよー!」


と桜井が子供たちに声をかけた。


「お姉さんだれ?」


と子供が問いかけると


「お姉さんは警察官よ。」


「ちぇ。」


と言って子供たちはそこから離れた。


「そういえば大悟さん、ここで鳩にエサをやってましたね。」


「そうですね。あの時、桜井さんが声をかけてくれたから人生が180°変わりました。」


「ふふ。私もよ。どことなく放っておけなかった。そんな魅力が大悟さんにはあったわ。」


「こんなしがない私によく手を差し伸べる気になったものですよ。私にそんな魅力があったなんて本当に奇特なひとですよ、日奈子さんは。」


そんな懐かしい話などをしていると、キャッチボールをしていた子供たちが戻ってきて、


「あ、ボールが外へ出る!取ってきて!」


「わかった!」


とその瞬間、桜井が


「あ、あぶな!」


キキーーーーーーーーーーーーーー!ドン!


と、猛スピードでやってきたバイクと子供が衝突した。


「ああああ!私は子供を見るわ!大悟さん、バイクの人を見て!それから救急車を呼んで!」


「わ、わかりました!」


子供もバイクに乗っていた人もほぼ即死に近い状態だった。打ちどころが悪かった。山本は119に電話して、


「子供とバイクの衝突事故です!二人とも意識がありません!えーと、公園、水島中央公園です!」


と言った。桜井は


「私がいながら何で...。何でこんなことに...。私がいたのに...。交通課の私なのよ......。」


「落ち着いて、日奈子さん!日奈子さんは悪くない!」


と山本が桜井をなだめようとした。しかし桜井の困惑は取れなかった。


しばらくして救急隊員と警官が来て、交通課の中塚と、河本と早川だった。早川は着くなりに山本に


「ああ、桜井さん...。お前か!山本大悟!」


と山本の胸ぐらを掴んだ。そしてそれを河本が止めに入った。


「おめぇ、どんな事情があるか知らんが見当違いも甚だしいぞ。みっとねぇ。」


と杭を刺され早川は我に返り


「あぁ、すいません。」


現場検証の間、ずっと桜井は震えていた。それをかばうようによりそう山本であったが、いちいち気に入らない早川でもあった。


それを終え、


「桜井は我々が連れて帰る。山本さんでしたっけ?君はもう帰りなさい。」


そう河本が言って山本を帰らせた。


山本は


「桜井さんをどうにかお願いします。」


と言い、早川が


「お前に言われるまでもない。」


と言ってその場は解散された。

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