第9話
あれから仕事にも集中できなくなった早川である。
「お前最近集中できよらせんな。どうしたんじゃ?」
と上司の河本が言った。すると早川は
「いえ、最近寝不足が続いていまして...。」
と返すと
「健康管理も仕事の内じゃけえの。しゃっきりせえ。」
と言われてしまった。
しかし人間不思議なことに恋愛感情に入るとIQが落ちるものである。まともな思考もできなくなり、早川のこういった場合だと極度に情緒不安定になるものである。いくら屈強な男でも、恋愛の悩みだと少し小さくなってしまうものではある。ましてやこういう早川と桜井の関係であるから他者に話を聞いてもらうことも出来なかった。
「(ああ、桜井さんは今日もお弁当を作ってくれるのだろうか?作ってくれるとしたらどういう気持ちで作ってくれているのだろうか...。はぁ。そうだ。LINEでもしよう。)」
『桜井さん、今日はお弁当を作ってくださっていますか?それともう彼氏の方は...?』
とLINEを入れると
『もちろんお弁当は作ってますよ。早川さんには申し訳ないですけど、ようやく彼氏と本当の恋仲になりました。これからは早川さんとのデートはできないです...。すみません...。』
「ええええええええええ!?マジかよ!?それはないよ桜井さん!」
思わず声にしてしまった早川だったが、運よく周りは聞こえてなかった。気を取り直して
『それは良かったですね!桜井さんたちを応援してます!もうお弁当も大丈夫ですよ!』
とLINEを入れると、
『確かにそうかもしれませんね。せめてもの罪滅ぼしかと思っていましたが、早川さんの想いを無下にしてしまうかもしれませんね。』
と入ってきたので、
『そういうわけではありませんが、もう私のことは気をかけないでください。』
『分かりました。』
とLINEを終わりにして、
「あああああ、俺はどうすればいいんだ?未練たらたらだよ。でも断ち切るしかないのか...。」
そう思いながらますます仕事に手がつかなくなった。
「(そうだ。こうなったら桜井さんの彼氏のことをとことん調べてやる。その品定めをして桜井さんに相応しいか俺が選んでやる。)」
少し怪しい雰囲気の早川になっていった。
とある日
「おい!早川!水島商店街で刺傷事件だ!急げ!」
と上司の河本が
「はい!分かりました!」
と早川。
そこはあの桜井が通っていた男の家のすぐ近くであった。刺傷事件はすぐに取り押さえ、現場検証を終えているところであって、周りに聞き込みをしているところであった。早川はまっさきに『その』部屋へと聞き込みに行った。
「失礼します。水島警察署の者ですが。少しお伺いしたいことがありまして。」
「はい。」
と山本がドアをあけた。すると早川は圧のある感じでそこに立っていた。
「どうされましたか?」
と山本が問うと、早川は
「あなたのお名前は?」
「山本大悟です。」
「職業は?」
「無職です。」
「そうですか。ここら辺で変わったことはなにかありましたか?」
「いえ、私は最近ここに住みだしたばかりでして。すみません。」
「分かりました。それでは。」
と、早川はそれとなく桜井の彼氏の名前を聞き出すことに成功した。
「(取り合えずこの名前をデータベースで照合してみるか。何か引っかかるかもしれない。)」
そう思って早川は署内に持ち込むのであった。
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