道場訓 七十七 凶女、マコト・ハザマ
一体、何が起こったというの?
マコト・ハザマこと私はあまりの驚きに立ち上がり、肉眼でリング状の光景を食い入るように見つめた。
リングの上では外からの参加者である、ケンシン・オオガミという
当然だった。
現在、リングの上に五体満足で立っているのはケンシンのほうなのだ。
一方、私たち〈
頭部から大量の血を
生きてはいない。
遠目から見ても完全に絶命している。
それは誰が見ても明らかだったため、オンマの
勝敗が決したことで一気に興奮した観客たちが見守る中、オンマの
専用の
その光景を見ても私の心は毛ほども
外の参加者以外の出場者において、
なので
しかも余計なことをしないように、純度の高い
まあ、そんなことはどうでもいいのだけれど。
それよりも今はケンシンという
あのオンマを一瞬で倒してしまった謎の
私はもっとケンシンを見ようと
「マコト、それ以上は危ないから止めなさい」
と、お父さまから注意された。
「あ……ごめんなさい、お父さま」
そうだった。
あまりの1回戦の衝撃にすっかり忘れていたわ。
円形のリングと穴を囲うように設けられている観客席には、リング上で闘う選手たちの攻撃から守るため強力な結界系の魔法とスキルが2重に張られている。
これは
トーナメントも上に行けば行くほど選手の試合も白熱し、使う魔法や技も強力になっていくのが
なので選手たちから放たれる攻撃系の魔法やスキルから観客たちを守るため、観客席の表面には強力な
ほとんど透明な結界なのでリング上の闘いを観るのに支障はないが、強力な結界なので生身で触れれば
落ち着きを少しだけ取り戻した私は、そのままゆっくりと椅子に座った。
同時にお父さまが話しかけてくる。
「今の闘いを見えたか? マコト」
私は首を左右に振った。
「いいえ、まったく見えませんでしたわ」
嘘偽りのない本音だった。
私には両者が互いに向き合ったところしか視認できなかったのだ。
試合開始の合図を受けたあと、オンマは魔法を発動して
これはいつものことで、絶対的な防御に自信のあるオンマが岩人間と化して外の参加者を
そして外からの参加者がどんな武器や魔法を使っても、厚い岩の装甲に防がれて最後はオンマに殺されるという結末だった。
ところが、今はその光景がまったく逆になっている。
いや、逆どころではない。
ケンシンが何をしたのかは分からないが、
これには観客たちも大興奮だった。
大穴でケンシンに賭けていた人間も、オンマに賭けていた人間も関係ない。
これまでの外からの参加者は2通りの行動をする人間しかいなかった。
この場の
ただし、どちらにせよ最後はオンマに殺される運命を
それが
あくまでも
にもかかわらず、それが根本から
私は高鳴る鼓動を必死に
外からの参加者とは思えない、秘めた実力を持った
ゾクゾク、と私の背中に暗い感情が走り抜けた。
欲しい。
あの
けれどもオンマはサディスティックな試合を行う
つまり、2回戦はいつもわざと試合を
それでも観客たちからは苦情は来ない。
この
あくまでも観客たちの娯楽として存在しているのが
ただし、私たち以外の
何とか自分たちの選手を優勝させようとあの手この手を使ってくる。
もちろん、どのような小細工をしてこようが〈
なぜなら
裏工作の結果からではない。
完全な本人の実力による優勝だ。
それゆえに他の選手はいずれかの段階で〈
動くのなら早いほうがいいわね。
外からの参加者とは思えない圧倒的な腕前を見せたケンシンだったが、それでも〈
そうなればケンシンを
私はおもむろに立ち上がると、出入り口の扉へと向かった。
「おやおや、マコト。またいつもの悪い
私は立ち止まり、満面の笑みを浮かべているお父さまに言った。
「変な言い方はやめてください。私はただ欲しいモノを手に入れてくるだけです」
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