道場訓 七十五 死闘開始
「あの小僧、面白いな……今まで色々な外からの参加者はいたが、ここまで観衆の前で大口を叩く奴は1人もいなかったぞ。いや~、
円形の
年齢は70を軽く過ぎているだろう。
銀色のような白髪に、
ヤマト国の富裕層が着る
老人の名前はカイエン・ハザマ。
ヤマトタウン最大の
「ですが、お父さま。外からの参加者など
カイエンの隣には、同じく豪華な椅子に座っている女がいた。
20代前半ほどの黒髪の美女だ。
170センチ以上の長身と、朱色を
「そうは言うがワシの目に狂いがなければ、あの小僧は今までの外から来た参加者とは少しばかり毛色が違うようだ。何より、堂々と
「どうですかね。もしかすると、そこまで頭が回っていない2流の使い手なのかもしれませんよ」
マコト、と呼ばれた美女は
「それに
マコト・ハザマこと私は、右手に持っていた小型の
すでに事前に入手したプロフィールには目を通してある。
ケンシン・オオガミ。
見た目と名前通りのヤマト人であり、戦闘スタイルは服装からでも分かるように
でも、身体付きはそう悪くないのよね。
それに私
あれで本当に強ければ申し分ないのだけれど……。
私は「はあ」と大きなため息を吐いた。
予選を勝ち抜いたのだから決して弱くはないだろうけど、やはりそれはあくまでも外の世界の強さだ。
私たち〈
しかも1回戦には主催者である〈
とはいえ、真の実力者である
あくまでも外の参加者の相手をする役目の
それでも表の武人たちよりも実力は折り紙付きで、観客たちも外の参加者が1回戦を突破するとは
しかし、今回の
言わずもがな、外からの参加者――ケンシン・オオガミが観客たちに
これには観客たちも大いに
そういう意味においては、ケンシン・オオガミは満点だった。
観客たちの興奮と欲望を搔き立てる
そんなことを私が考えていると、
『残念ながらオオガミ選手の申し出は
司会進行役の
続いて観客たちの間からどっと笑いが
だが、当の本人であるケンシン・オオガミは
それどころか、その表情には何の感情も見えないのだ。
いや、無表情というわけではない。
これから散歩に向かうと思えるほどリラックスしている。
何なの、あの子?
お父さまが言ったように、あのケンシン・オオガミという
などと小型の
上半身には何も着ていない筋骨たくましい総髪の大男と、見すぼらしい外見をした細身の男だ。
『さあ、ここでもう一組の出場者の登場です。〈
2人はまだ20代の若さだったが、私たち〈
だが、2人ともではない。
身長2メートルの総髪の大男のほうが、実際に相手と闘う
『長らくお待たせ
さすがに年季の入った
観客たちを盛り上げる
『そして両者の
その後、すぐに両者の
専用の
やがてリングの上にはオンマとケンシンの2人が
「お父さま、この闘いの
私はお父さまに
「くくくっ……驚け、マコト。先ほどの小僧の大口が効いているようでな、何と珍しく1回戦の
確かに珍しかった。
いつもなら1回戦の
もちろん、〝9〟が私たち〈
観客たちの本心は10対0だっただろうが、ここには金と
なので賭け金を文字通りドブに捨てる行為をする観客たちが一定数いる。
けれども、今回の1回戦の
いつもより金をドブに捨てる観客の数が増えていた。
これはお父さまの言う通り、ケンシンの
とはいえ、本当のところ誰もケンシンが勝利するなど思っていない。
あくまでも面白半分でケンシンに賭けているのだ。
その気持ちは私にも分かる。
オンマは頭が悪くともかなりの実力を誇る魔法拳士だ。
一方のケンシンは武器を持たない
これでは勝敗の行く末などほとんど目に見えている。
『――すべての準備が整った今、果たして勝利はどちらの手に転ぶのでしょう。これまで数々の外からの参加者を
やがて
『両者――始め!』
直後、観客たちから地鳴りのような歓声が
そして試合が始まって間もなく、私はあまりの衝撃に小型の
なぜなら――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます