道場訓 六十一 ヤマトタウンの武士団ギルド ②
ドンッ!
その音の正体は腹部への衝撃音だった。
サムライの一人がいきなりキキョウの腹を蹴ったのだ。
「かはッ!」
キキョウの身体がくの字に曲がって後方に吹き飛ばされる。
俺は瞬時に動いてキキョウの身体を抱き止めた。
一体どうなっているんだ?
俺が頭上に疑問符を浮かべた直後、エミリアが「いきなり何をするのですか!」とサムライたちに食ってかかった。
けれども、サムライたちはエミリアを無視してキキョウを
「よくもおめおめと
そう叫ぶとサムライたちは大刀を抜き放った。
「は、
俺から離れたキキョウが問いかけると、サムライたちは「何も知らんのか?」と怒りを
「カチョウのいる勇者パーティーがBランク程度のダンジョン攻略に失敗したのだ。それだけではない。あろうことか奴らは低ランクの魔物にも遅れを取り、おめおめと逃げ出したという」
もう一人のサムライが「まったくもって情けない」と同意する。
あいつら、ダンジョン攻略に失敗したのか。
どういう
そしてサムライたちはBランク程度と馬鹿にしたが、どのようなランクのダンジョンだろうと最初から
それはダンジョン以外の人間にも言えることだった。
「兄上が……嘘を
ふん、とサムライの一人が鼻を鳴らした。
「妹であるお主がそう思いたくなるのも
それに、とサムライは言葉を続ける。
「人の口に戸などは立てられんからな。このことはいずれヤマトタウンにも広がるだろう。そうなればこの街の評判も地に落ちる。カチョウが勇者パーティーの一員になったことで他の街からの評判が高まっていたのに、そのカチョウ自身の手で評判を落とすことになるのだから目も当てられん」
しかも、ともう一人のサムライが
「内容が内容だ。上級ダンジョンで上級魔物と闘った結果だったならばまだしも、たかがBランク程度のダンジョン攻略に失敗するとはサムライの
キキョウは「お待ちください」と
「消えろと
「消えろと言っているだろう! それとも痛い目を見ないと分からんか!」
次の瞬間、サムライの一人が大刀の切っ先をキキョウに向けてきた。
おいおい、本当に斬る気か。
俺は瞬時にキキョウの前に
それだけではない。
間髪を入れずサムライの腹部に
「うげッ!」
俺の
「こ……こやつ、やりおった。
残ったサムライが高らかに叫ぶと、あっという間に他のサムライたちが現れた。
その数はざっと20人。
このような場合を想定しているのか、全員とも大刀を片手にすでに
「どうした!
「いや、違う。だが、
おいおい、先に
俺は
殺すつもりは
下手な手加減をすると予想外のしっぺ返しを食らうかもしれない。
それに場の
だったら、少しだけサムライたちの目を覚ましてやる必要があった。
などと俺が思ったとき、一人のサムライが大刀を構えながら前に出てくる。
リーダー格の男だろうか。
年齢は30代前半ほどで、
そして他のサムライたちよりも頭一つ分は高く、衣服の上からでも
「どのような理由かは知らぬが、この
俺は
「俺の名前はケンシン・オオガミ。追放された……」
いや、と俺はすぐに言葉を訂正する。
「3人の弟子を持つ
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