道場訓 五十九 勇者の誤った行動 ㉔
俺と同じく
「気安く俺に話しかけるんじゃねえよ。この俺が誰だか分かって言ってんのか?」
「もちろん、分かってるさ……っていうか、あんな馬鹿デカい声で話されれば嫌でも耳に入ってくるぜ」
「初めまして、元勇者さま。俺の名前はソドムってんだ。以後、お見知りおきを」
「何がお見知りおきを、だ。てめえのような小物の顔なんざ誰が覚えるかよ」
「おいおい、連れねえな。一緒の
「てめえ、
「いやいや、そういう意味で仲良くしようって言ったわけじゃねえよ」
「アンタの話はしっかりと聞かせて
チッ、と俺は
「だから俺は焼きたくて焼いたわけじゃねえんだよ。俺と
「それはあくまでもアンタの言い分だろ。それに俺だって実際に現場を見ていなんだから、アンタが本心で焼いたのかそうでなかったのかなんて分からねえよ」
「だったら黙ってろ。俺はムカついてイライラしてんだ。てめえみたいな小物の1人や2人ぐらいぶっ倒すなんてわけじゃねえぞ」
おー怖いね、とソドムは
しかし、それが本気でないことぐらい俺でも分かる。
「てめえ、俺をおちょくってんならマジでボコるぞ?」
と、俺が
ソドムは
「元勇者さまをおちょくるつもりなんてサラサラねえよ。それに俺はさっきも言っただろ? この
ピクリ、と俺の
「……おい、何かここから抜ける手があるのか?」
俺もソドムと同じく小声に
確証はなかった。
あくまでもこれは俺の勘だ。
このハゲ頭は脱獄できる手段を何か持っているかもしれない、と。
するとソドムは大きく
「ああ、とっておきのやつがな。だが、そのためにはブツが来ないと話にならん。それにブツが来たとしても素質がある奴でないと効果が出ない」
俺は小首を
「おい、
「そう慌てなさんな。それにアンタにこうして話を持ち掛けたのは、
「はあ? そりゃあ何だよ? 勇者としての素質か?」
いいや、とソドムは口の端を吊り上げる。
「魔人になる素質さ」
その瞬間、俺の心臓が
魔人。
この世界で生きていれば必ず1度は聞くことになる。
魔物よりも上位の存在であり、一説によると
だが、魔人などというのは滅多にお目に掛かれない。
俺たちの世界にも存在していると言われているが、はっきりと確認されたことは少なかった。
なぜなら、魔人は単純に人間を殺し回ったり国を滅ぼしたりはしないのだ。
理由は分からない。
普段はどこにるのかも、何をしているのかも分からない。
ただ、俺たちの世界にも存在しているという噂だけが語り
闘いと魔法を極めながらも、何を
それが俺たちが知っている魔人の特徴だった。
「てめえ、ホラを吹くのもいい加減にしろよな。魔人になる素質だぁ? そんなことできるわけねえだろ。第一、どうやって人間が魔人になるんだよ?」
「そんなに
俺たち? 仲間がいるのか?
「おい、てめえは何者だ? ただの罪人じゃねえな」
「俺かい? 俺はただの罪人だよ。街中で非合法な
こいつ、
なるほど、だったら俺と同じ
これがただの強盗や暴行だったら、裁判なしに実刑が与えられるはずである。
しかし、そうなっていないのは俺が
だとすると、こいつは末端の
近年では非合法な
まあ、そんなことはさておき。
「いいから俺の質問に答えろ。てめえは一体、何者なんだ? その口振りや内容からするとチンケな組織の人間じゃねえな」
「ほう、さすがは元勇者さま。それが分かるということは、どうやらアンタは裏社会とも少しは
ソドムは「いいだろう」と
「ウロボロス……俺はウロボロスの人間だ」
俺は
やがて俺はハッと気づく。
「まさか……てめえは」
ソドムは「そうだよ」とニヤリと笑った。
「俺は〈
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