道場訓 五十 勇者の誤った行動 ⑮
「キースさんたちはゴブリンに品定めされていたッスよ」
カガミは
「キースさんたちは森の中で
なぜなら、とカガミは森の中で
一流の
そして、そこで終わっていたら俺もブチ切れずに済んだだろう。
しかしカガミは自分の正当性や知識を必要以上に
「まずはキースさんたちが使っていた虫よけの薬ッスね。キースさんたちは効き目の強いことと安価だったという理由で今の虫よけの薬を使っていたッスが、森の中で不自然な強い匂いは敵に気づかれる確率が高いッス。だから本来は高価でも匂いが薄い薬を買うべきだったッスよ」
……ピキッ。
俺のこめかみの奥で変な音が鳴る。
「それにキースさんたちは一直線に森の中を進んでいたッスが、それも
「え? どういうこと?」
疑問の声を上げたのはアリーゼだった。
「魔物がいる森の中を歩くときは一直線に進まず、
ふむ、とカチョウが両腕を組みながら
「ここ最近は森の中で活動することがなかったから忘れていたが……3ヶ月前にお主を雇っていたパーティーと
「あ、思い出した。そうそう、確かに私たちはケンシンに虫よけの薬や森の歩き方なんかを色々と注意されたわ。そうよね? キース」
「……覚えてねえよ」
実際のところは覚えていた。
あのとき、ケンシンはカガミが今言ったようなことを俺たちに話していた。
だが俺は
そして、それ以降に森の中で活動しそうな
ケンシンの俺たちを馬鹿にしたような指示や意見を聞きたくなかったからだ。
そもそもケンシンは単なる雑用兼荷物持ちとして雇ったサポーターに過ぎない。
いつもCランクをうろうろとしていた俺たちパーティーに誰も近づいてこなくなったとき、ちょうど都合よく目の前に現れたのがケンシンだった。
そのときケンシンは自分が魔力0な
俺たちに
けれども、それは間違いだったと今では胸を張って言える。
あいつと……ケンシンと出会ったことがそもそもの間違いだったんだ。
などと俺が怒りに奥歯を
「そして、もっとも致命的だったのは
カガミは俺たちが倒したゴブリンたちを見て言った。
……ピキッピキッ。
俺は利き腕であった右手の拳を硬く握り
そんな俺の心情に気づかないカガミは、さらに自分の意見をごり押ししてくる。
「悪いことは言わないッス。ケンシンさん抜きで今回の
などと言われた俺は、今度こそ我慢の限界だった。
その得意げになっている顔をぶん殴ろうとカガミに歩み寄る。
しかし――。
「待て、キース。落ち着け」
カチョウが俺の目の前に立ちはだかった。
「
「いいや、
カチョウが俺を
「私たちは最近、森の中で活動するような
だが、それはアリーゼの本心ではないことはすぐに理解した。
アリーゼは俺の怒気がカガミに伝わらないよう意識を
「場の状況を考えろ、キース」
直後、カチョウは自分の口を俺の耳に近づけて
「お前がここで怒りに任せてカガミに暴力を振るってみろ。今度こそ
チッと俺は小さく舌打ちする。
「忘れてねえよ」
そして俺は自分に言い聞かせるように
「ジャイアント・エイプの首だろうが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます