道場訓 五十一 勇者の誤った行動 ⑯
俺は「ジャイアント・エイプの首だろうが」と
魔物
それは
ゴブリンやオークならば特徴的な耳や鼻という具合にだった。
けれども、俺たちに今回の
その王宮からは
おそらく、身体の一部の提出だけでは小細工をされる可能性があると思われたのだろう。
冒険者の中には自分で魔物の
それはそれで別に冒険者ギルドの
たまに物好きなベテラン冒険者が、金のない新人のために行ったりすることもあったからだ。
けれども神剣を没収した王宮としては、神剣を返す条件として俺たちにそのような行為でジャイアント・エイプを
そこで王宮が提案してきたのはジャイアント・エイプの生首だった。
さすがに近年の冒険者で魔物の生首を冒険者ギルドに持ち込む奴はいない。
手間が掛かる上に運搬する時間も掛かるからだ。
だからこそ、王宮は神剣を返す条件として生首を持ち帰ることを出してきたのだろう。
生首を持ち帰ることを条件にすれば、さすがの俺たちに不正は出来ないと思ったに違いない。
ただ、やはりそうなると問題なのは
ジャイアント・エイプは3メートルもある猿型の魔物だ。
身体もそうだが頭もそれなりにデカい。
上手く倒して首を斬り落としたとしても、その首を王宮まで持ち帰るのは中々に骨が折れる。
しかも魔物は人間よりも死ぬと
どちらにせよ普通の魔物
しかし、それも〈
持ち運びが面倒で、かつ重いジャイアント・エイプの首を1人で持たせればいいのだから。
もちろん、それはカガミも了承した上で今回の
だが、ここで俺が暴力を振るえばカガミはすぐに俺たちから逃げ出すだろう。
それがカチョウとアリーゼにも分かったから、俺のカガミに対する暴力行動を
「お前の気持ちも痛いほど分かるが、ここは少しばかり我慢しようではないか。俺たちは国から認められた勇者パーティーであり、お前は神剣を
しかし、とカチョウは真剣な顔で言葉を続ける。
「ここでお前が感情に任せて動けばそれも
カチョウの言いたいこともよく分かる。
〈
その状態で他の魔物に襲われでもしたら、それこそ
「……分かったよ。あいつに手を上げるようなことはしねえ」
俺は身体の底から込み上げてきた怒りをぐっと
「うむ、それでこそ勇者だ……よし、それでは気を取り直して進もうぞ」
俺は
その後――。
俺たちはカガミにはケンシンの言われたことを守りながら進むということを条件に納得してもらい、
出発して30分ほど経っただろうか。
やがて俺たちは森の中でも開けた場所へと辿り着いた。
どうやら職人街の職人たちが
そこは人間の手で木々を
だが、俺たちが見つけたのはそれだけではない。
「……俺たちは運がいいな。ちょうどいやがった。しかも1体だけみたいだぜ」
木々の隙間から様子を
間違いない。
黒と白の
しかもジャイアント・エイプは地面に寝そべって昼寝をしていた。
これは
標的が寝ている隙に3人で取り囲んで一気に倒してやる。
「カチョウ、アリーゼ。いいか? 相手は都合よく爆睡中でしかも1体のみだ。余計な作戦など立てずに一気にぶっ倒すぞ」
「承知した」
「OK、任せて」
そう言って俺たちがジャイアント・エイプに近づこうとしたときだ。
「待ってくださいッス」
またしてもカガミが邪魔をしてきた。
「相手はBランクの魔物のジャイアント・エイプッスよ。賢さだけならゴブリンの比じゃないッス。ここはもっと様子を見た上で作戦を立てるべきッス。少なくとも
……ピキピキピキ。
この発言にはさすがの俺も本当に我慢の限界を迎えた。
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