道場訓 十九 漢女との苛烈な出会い
「どうした? 誰か前に出る奴はいないのか?」
俺は首をコキコキと鳴らしながら、
俺の
全員が全員とも、凍り付いた表情で口をパクパクとさせている。
俺はそんな冒険者たちを見ながら
本当なら
しかし、死と隣り合わせになったときほど人間は暗い
ここに集まっている冒険者たちがそうだ。
死と隣り合わせのSランクの
という恐怖感はいとも簡単に仲間割れや
そうなると
だからこそ、俺は少々
それとは別に俺の本当の実力も分かってもらえれば、少なくとも俺がSランクの
事実、冒険者たちの中からは、
「す、すげえ……何だ、この力は?」
「誰だよ、あいつを無能のサポーターと呼んで馬鹿にした奴は……とんでもねえ腕前じゃねえか」
「やっぱり、
次々に俺への見方を変える者が現れ始めた。
どうやら、これでスムーズに話を進められそうだな。
正直なところ、いつまでもこんなところでたむろっている場合ではなかった。
気を失っている騎士によると、すでに魔の
そして騎士団の
となるとやはり魔物たちを迎撃する場所は、アリアナ大森林と続いているアリアナ大草原しかない。
なぜなら、この街はアリアナ大草原の先にあるのだ。
もしもアリアナ大草原を突破されたら、間違いなくこの街は魔物たちに
俺はもう一度だけギルド内を見回した。
冒険者たちは誰一人として口を開くどころか、一歩も動かずに俺の次の言葉を待っているようだった。
つまり、俺の一言で冒険者たちがどう動くのか決まるということだ。
それならば俺の口から出る言葉は決まっている。
「どうやら俺が今回の
向かうぞ、と全員を
ダアンッ!
同時に真上から突風のような殺気が吹きつけてくる。
「――――ッ!」
俺はすかさず後方に大きく
ヒュンッ!
すると俺がいた寸前の場所に、
「お前は……」
俺は床に着地すると、真上から不意打ちをしてきた襲撃者と向かい合った。
「
襲撃者の正体は、
顔立ちは恐ろしいほど整っている。
そして眼光は生来の気の強さを表すように鋭い。
俺は改めて襲撃者を見つめた。
年齢はエミリアと同じ16歳ぐらいだろうか。
けれども170センチの俺よりも頭一つ分は身長が高い。
とはいえ間違いなく女だった。
それも超がつくほどの美女だ。
だが、一方で
年齢が若いという意味の
その理由の一つは彼女が着ていた服装にあった。
ヤマト国の独特な衣服――純白の
それだけではない。
黒髪の美女の両手には、
お前は女なのにサムライなのか?
俺が襲撃者の女に思わず
「勇者パーティーの切り込み隊長――カチョウ・フウゲツの妹のキキョウ・フウゲツだ!」
「何だと! あいつがあの
〈
噂には聞いたことがある。
商業街の北にあるヤマト国からの移民たちが作り上げたヤマトタウンにおいて、天才剣士として名を上げてきた女武芸者の異名だ。
まあ、それはさておき。
カチョウの妹か……そう言えば以前に妹がいるとか聞いたことがあったな。
言われると独特な喋り方や格好以外にも雰囲気がかなり似ている。
ただし、明らかに実力はカチョウよりも上だった。
2階から飛び降りても平気な
空中からでも正確に
まったくブレない
全身から
どれをとっても超一流の武術家のそれだ。
一対一の正々堂々とした闘いならば、それこそ上位ランカーの冒険者とも互角に渡り合えるかもしれない。
だが、微妙に何かが引っかかる。
全身から発せられている
Aランクに昇格できるほどの腕前なのに、あまり
などと俺が小首を傾げていると、キキョウは大刀の切っ先を勢いよく俺に突きつけてきた。
そして――。
「勇者パーティーから追放されたサポーターであり、
そう言うとキキョウは、キッと俺を
「おいおい……いきなり斬りつけてきて、アレをやっているなと言われてもまったく分からん。俺が何をやっているって?」
「とぼけるな! お主が非合法な
非合法な
あまりに
そんな俺に対して、キキョウは図星だなとばかりに不敵な笑みを浮かべる。
俺は右拳の
さて、どうするか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます