道場訓 十七 迫り来る、脅威への予感
俺は
よくもまあ、こいつらは赤の他人を簡単に
もしかすると、俺が勇者パーティーの一員だった
だが、それだけでは説明がつかないほどギルド内が暗い興奮に包まれていく。
俺は
やはり何かがおかしい。
俺に対する
まさか、
俺が半年前の
「分かったのなら出て行け! そして二度と冒険者ギルドに足を――」
踏み入れるな、と言いかけたドラゴの言葉を俺は遠慮なく
「その前に一つ
そして俺はドラゴに堂々と質問する。
「ここの連中はアンタを含めて何に対して
ドラゴはあからさまに動揺した。
「い、いきなり何を言うか! お、俺たちは別に何も
いや、明らかに口が回ってないぞ。
「まあ、俺は以前にもこんな雰囲気を経験しているから何となく
魔の
この言葉を聞くなりギルド内の
やはりそうか。
だとすると、相当に
俺は難しい顔で両腕を組んだ。
するとエミリアが「あのう」と小声で話しかけてくる。
「ケンシン師匠……魔の
「君がどの魔の
俺はエミリアからドラゴへと顔を向けた。
「そうなんだろう? 街の近隣に魔の
確か依頼といっても王宮からの
すなわち、冒険者たちは少なからず命を張らなければならない。
もちろん、その戦いで目覚ましい活躍をすれば騎士団や魔法兵団への入団だって夢ではないと聞く。
それはさておき。
実際、出現した魔の
事と次第によっては、俺の
などと考えていると、ドラゴは「お前に言われなくても分かっている」と大声で言った。
「ああ、そうだ。お前の言う通り街の郊外に魔の
「知らせ? 何のだ?」
「決まっているだろう! 騎士団だけで魔の
と、ドラゴが高らかに叫んだ直後だった。
バアンッ!
突如、入り口の扉が盛大に開かれて一人の人間が駆け込んできた。
全員の意識と視線がその人間に集中する。
息を切らせながら床に倒れ込んだ人間は、明らかに王国騎士団の騎士だった。
しかし、どう見てもまともな状態ではない。
兜の一部は砕かれ、着ていた鎧にはあちこち血が付着している。
「緊急事態だ! アリアナ大森林に出現した魔の
やがて騎士の口から
「そのため
そう告げるなり、騎士はがくりと膝を折ってその場に倒れた。
すでに心身ともに限界だったので気を失ったのだろう。
そしてしんと静まり返った中、ぼそりと誰かが
「マジかよ……Sランクの
この
「ふざけんなよ! 俺はせいぜい王国騎士団の補佐役ぐらいの
「私だってそうよ! それにギガント・エイプなんて
「くそったれが! Sランクの
それはさながら、
無理もない、と俺は思った。
冒険者たちが普段に請け負っている
もちろん、その代わり高い報酬や
しかし今回のような王国からの
それこそ、身元と場所を徹底的に特定されて処刑されるかもしれない。
「お、お前ら落ち着け! ここは冷静になって事に当たるんだ! 確かにSランクの
そんな風にドラゴは全員を
だが正直なところ声は大きく裏返り、しかも血の気が引いた真っ青な顔で言われても説得力に欠けている。
事実、無責任な発言をしたドラゴに対して
「うるせえんだよ! そもそもギルド長が留守なのをいいことに、この
「そうだそうだ! 楽して稼げるからってアンタ散々俺たちに言ったよな! あれは嘘だったってことか!」
「しかも最初の
ドラゴは何も言えず、全身を震わせながら
どうやら報酬を中抜きしていたのは本当だったようだ。
こうなるとドラゴが冒険者たちからどんな目に
ギルド長に告発されて職を
最悪の場合、冒険者たちに
実際のところ、今まさにドラゴを
まあ、俺とエミリアには関係ないがな。
はっきり言ってドラゴが
もっと言えば、このギルド自体がどうなろうとも俺には一向に構わなかった。
そもそもこの冒険者ギルドに来たのも、エミリアの実力を実戦で見たいがために簡単な魔物の討伐依頼を受けるためだった。
しかしよく考えてみれば別にエミリアの実力を見るためだけなら、ギルドの
ただギルドの
けれども、冒険者ギルドがこんな厄介なことになっているのならば話は別だ。
さっさとこんなところからは立ち去るに限る。
などと思いながら俺がエミリアに視線を移したときだ。
「エミリア?」
俺は思わず
エミリアは顔を蒼白にさせ、全身を小刻みに震わせていたのだ。
その理由に俺はすぐにピンとくる。
「おい、エミリア……まさか」
「……はい」
エミリアはすがるような目で俺を見つめてきた。
「私も今回の
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