ねらいうち ③
その後、俺たちが先生とかに怒られたりした云々はあったが、運良く秀平は一人だけハブられる、ということにはならなかった。
それどころか襲った男子たちを敵視する連中が他のクラスでは多かった。
その時の俺は心底不思議だと思っていた。
運動が出来る男子を優遇したりするのって男子の特徴だな、なんてことも思っていた。
だけど、これは後から納得したが秀平はサッカー部で一番の選手であった。秀平がエースでムードメーカー、そのくらいの存在であった。
だからその秀平が傷つけられてキレる人がいてもおかしくはない。
内心おもしろくなかったし、初めの女子やその女子の裏アカを教えた同じ部の男子については、何も言及しないのがどこか男子らしいと思った。
そして、時は大学生に移る。
なんだかんだで運悪く俺と秀平は同じ私立大学に受かってしまい、学科とかも一緒になってしまった。
そして決まって、一緒のグループになる。
もうそこら辺の下りとかは省略するほど下らない。俺がいると話しかけてくる。何人かのガラの悪そうな男子を引き連れている。
そして俺は断れない。なんかマゴマゴしてしまう。その隙にあいつが肩組む他の奴らに俺の話する他の奴ら面白がる俺に来る。
そしてつるむ、そんな感じだ。
同級生だから仕方ないっちゃ仕方ない。
こっちも何か特別な理由が無いから尚更だ。
他人の不幸は蜜の味、なんて言葉があるが秀平はそれをとてつもなく使って友達を増やしていくタイプだ。
なんらかの噂を聞きつけたり見たりして言いふらす。そして自身はスペック高いから偉くなれる。流石に大学になればそうならないだろうと思っていたけど、そうでも無かった。
同じ学科のグループとかで集まるイベントとかあったりして、どんどん繋がりが増えて固定のグループになっていく。
その中でアイツの話は面白いとされた。
何人か彼女と付き合っては別れて付き合っては別れるの繰り返しをあいつはしている。
因みに俺はそんな奴ではない。俺は恋人はいないが、大体参加したイベントでは一人誰かとは必ず寝ている。
まあ俺も飽きやすいしワガママだから一日で捨てるけど。
まあ、そういうこともあって新しいような生活をしていた。そこで秀平はとんでもない提案をしてきた。
それで冒頭に戻る。
秀平は今時の動画投稿者とかより、自分たちの方が面白いし顔も良いと思っている。
だから俺たちでもいけるだろ、と考えて撮影の準備をしているのだ。
いけるわけねえだろバカ。声に出そうになったが、彼らの様子を見ると、言うのはどこか憚られた。
仕方ないし、小遣い程度になれば良いと思い、俺も参加することにした。
『え〜っと、ナオナオ……え!? 貴方は誠実なら性格で様々な女性に愛を育ませることができるでしょう!? ウソだろこれ!! こいつがそんな奴なわけないじゃん!! そんな経験ないのに!! あれあれ、あれ』
『百人LINE?』
『そうそうそれそれ!! タクティン分かってる〜』
うぇーい、なんて声が今にも出てくるような気配がするノリだ。正直、俺はこういう雰囲気があまり得意じゃない。だから早く終わって欲しい、そればかりが頭の中をぐるぐる回っていた。
「はい終了〜」
やっと一回目が終わった。
「これ……天下とったっしょ」
全員大爆笑。何が面白いのか全く分からない。大口開けてバカみたいな笑い方をしている。
ブーブー
ああ、多分LINEだ。こんな時にとっくに別れた彼女からかよ。
面倒くさいと思いつつも俺は返信した。
それから半年後
「え……これは引くんだけど」
「うん、同感だわ」
「いや予想外すぎんだろ」
「てかこれ、そこまで面白いか?」
「はは!! やった本人たちが言うとか!!」
「でも面白くなくね? この動画自体は」
ああ〜〜。全員納得の長返事をした。
俺も同感だ。この動画そんなに面白くない。だけど再生数が百万回を超している。
あの後、なんか知らないけどバズってウィキとかピクシブとか色んなサイトに俺らの説明とかイラストが描かれるようになった。
登録者とかも十万人くらいになり、結構良い。いや、調子が良すぎるくらいだ。
正直ありがたいけどここまでとは思わなかった。
一体何がそうさせているのか、皆目検討もつかなかった。
「誰かが異様な人気なんじゃない?」
たっくんのその言葉に俺は同意。
「じゃあナオナオは無いでしょ」
真っ先に秀平がそう言った。
全員が小馬鹿にしたような顔を向けてくる。分かってる分かってる、そういう扱いするんだろ。
「なあ……たっくんのが一番人気なんじゃね? イラストとかコメントとかが多いし」
「え? マジ?」
……あ〜マジか。そりゃヤバいかもな。
さっきから秀平がずっと食いつくようにたっくん見てるし。
昔から嫉妬深いのは治んねえよなこいつ。
「てか……俺へのコメント……ある?」
秀平が少し苛立ちを見せたのでメンバー全員の顔がこわばった。死に物狂いで探しているのが分かる。
だけど、それもすぐに止んだ。
なぜなら、こういうコメントを見たからだ。
「てかさぁ、ナオナオいらんとかいうコメントあるんだけど」
「え? マジ? うわ、すげえなこのアンチコメ」
そこからは俺のアンチコメントがあることに対して笑い始めた。そんな中、秀平は目を皿にして微動だにしない。あ〜あ、まずいなありゃ。
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