つらつらと書く短編集
lien
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「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、うわっあっあっ……ああああああああああああああああああ、ひぐっ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ただひたすらに泣き叫ぶ。大事な人をなくした彼にはかける言葉が見つからない、そう、それを傍観する彼の友人は思う。
彼は大事な人をなくしてから部屋の様相を大きく変えた。いや、そうせざるを得なかった。散乱した物品、大事な人の誕生日から止まった時計……彼は一日中部屋にこもっている。彼の目の前には充電を切らしたパソコン。まるで目も当てられなかった。
「ねぇ……そう思う気持ちもわからなくもないけどさ……」
彼の友人は彼にそっと寄り添う。彼はそんなことを気にも留めず泣き続けた。
「うわああああああああああああああああああああああ、おえっ、ひぐっ、ひぐっ」
「はい、ちょっとストップ」
ところがそうはいかなかった。友人は彼に無理やり視線を合わさせ、彼に語りかける。比喩するならば、友人の態度は冷めたスープ、そのものだった。
「僕の声、聞こえるよな?」
「ぐすん……はいっ……」
「僕さ、実はずっと思ってたんだけど」
「……ズズッ」
ティッシュで鼻を噛む彼に、ついに友人は、口に出さずにはいられない”その言葉”を贈った。いや、贈ってしまった。
「推しって言うけどさ、所詮二次元じゃない? 推しが誕生日きっかりで引退したからってそんな感動マックスみたいにするの? あー残念だなぁくらいで終わるもんじゃない?第一……」
「おい、これ以上言ったらお前の首が飛ぶぞ?」
友人の首には、いつの間にか推しのカードが迫ろうとしていた。なんということであろうか! 正直、これを傍観している私、そう、天界の守護者である私でさえその所業を追うことができなかった。そんな馬鹿な……。
そして友人は慄き、それから離れようとする。いや、そこに反応できるのすごいな! そんな孤独ノリツッコミをしつつも、そこから回避できないのは私の目でも見えている。圧倒的に友人には”速さ”が足りない。
この勝負、終わったな……
「――と、思うだろ?」
瞬間、この私の心を見透かしたように友人は言った。「誰に喋ってんだ、お前」とカードを突き出されるが、そんなことお構いなしに。
グサッ。
え?
――彼に突き刺さるカード――え?結局死ぬじゃん。なーんだ、ただの死に際にかっこいいコメント残す勢の奴らの一端だったか。
そうしてほとほと安心した私と同じように、ひと仕事終えた彼は和らいだ表情で振り返る。しかし――
「……どこ見てんだ?」
「!?」
目の前には友人が、いた。
「「どういう……ことだ……?」」
私と彼の言葉が完全にハモる。もはやこの所業、人智を、いや天智でさえも超えている……!
彼は言った。
「さて、じゃあ、今度こそ始めようか、『推し大戦』を」
「……?」
「こんなふうに称しておけば、後の人間が勝手に言い残してくれるだろ。な、フレッツ?」
【……え?】
私の名前を知っている? なぜ? 後の”人間”? 友人は人間ではない?
「ちぇ、返事がねぇや。まぁ、じゃ、始めようぜ」
かくして友人は戦闘体形を取る。すると、彼から笑みがこぼれた。
「……そういうクチね。お前”も”か。じゃあ遠慮はいらねぇな」
……え?
いや、意図してデジャブを起こしたつもりはないのだ。その証拠として彼らに問いただしておくことでこれを読む読者に残しておくとしよう、偉大なる、”天界の守護者”のこの私がな。
【待ち給え。お主らは一体】
「「うるさ【すんませんでしたぁぁぁ!】
ごめん、無理だった。テヘペロ、許して☆ ……いや、返事聞く前に謝罪してたなんて聞き受けないから。
そんな茶番を他所に、彼らは真剣な表情に変わる。
「……今度こそ、な。行くぞ」
突如起こり出す大地の振動。まるでこちらにも伝わってくるようだ。
一体、なにが起ころうとしているんだっ……?
そしてこれから、推しとの別れを告げ絶大な力を得た彼と、神に語りかけし者である友人の壮絶な戦いが繰り広げられようとしていた――
これが後に
……すいませんでした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何でしょうね、これ。
そういえば今日ポッキーの日でしたね。
なんの関連性もない……!
あ、いい忘れてましたが、これは「感動的なクライマックスシーンを書いてください」というお題に対する文章でした。
感動的とは……?
クライマックスとは……?
コメントに「このお題でなんか書いてください」と書いたら、気が向いたらやるかもしれません。
つらつらと書く短編集 lien @Chamel76
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