第2話

 ふるりと震える身体と嘲笑うような泣きそうな表情をした美女たち。


 なん、で………、


 頭の中をかける言葉に、後ろで唖然としているお母様に、憎悪が、赫怒が、湧き上がる。


「13番とはどういう事ですの?」

「ん?そのままの意味だよ」


 にっこりと笑いながら言ったエスプレッソの言葉に、くらっと目の前が真っ暗になる。


「さあ、愛しの蝶たち新たな蝶を13番目の離宮に案内しておくれ」

『承知いたしました』


 感情のない美しい声が揃っているのを聞くと、ゾゾっと背筋に悪寒が走った。


 わたくしもこうなるの………?


 ———いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ………!!


 エスプレッソが本邸に入って行く背中を見送ったラテは、咄嗟に後ろに下がろうとするが、それは叶わなかった。


「ダメよぉ?逃げようなんて考えたら。そんな事をしたら、あの子みたいに羽をもがれちゃう」


 露出の多い服を身につけた褐色の肌を持つ異国風情溢れる妖艶な美女がおっとりと視線で指した先には、車椅子に座る美女がいた。

 12人の美女の中でも1番正気を失っているあの子の足には靴がなく、鎖で足が縛られている。


「私たちは毒牙に群がってしまった愚かな蝶。逃げるなんてできないわ」


 黒縁の眼鏡にぴっちりと結んだ髪、そしてマーメイドラインのドレスを身につけた美女が嘲笑うように言う。


「お前はいつまで正気でいられるのかしらね?」


 プリンセスラインのドレスにギチギチに巻かれた縦ロール、吊り上がった瞳の気位の高い姫君のような美女は、ラテの事を嘲笑う。


「まあ、あの母親はもう使い物にならなさそうだし、この子も早いのではなくて?侍女も連れてきていないようだし、自分のことを自分でしないといけないとなると、やっぱり老けるのって早いでしょう?アレの時みたいに、あっという間に奴隷行きじゃないかしら?」


 お姉様と似た優しい雰囲気を纏った美女は刺々しい口調で当たり前のことのように恐ろしい事を口ずさむ。

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