番外編 ラテの誤算

第1話

番外編 ラテの誤算


▫︎◇▫︎


 ラテは幸せの絶頂だった。


「エスプレッソ様、お姉様とはどこで出会ってどのくらいの交際期間を得てご婚約を結んだのですか?」


 自らの類稀なる愛らしさに惹かれて一瞬で婚約者をモカから交換した彼は、どのくらいの期間モカと付き合っていたのか、ふわっとした庇護欲を掻き立てる微笑みを浮かべたラテは彼のお屋敷に向かう道すがら尋ねる。


 あのお姉様の悲しそうな表情を見るに、相当長い年月お付き合いしていたはずだわ。

 お母様のお言い付けを守り続けたわたくしの愛らしさは、長期間の信頼関係をも上回る。


「昨日出会い、運命だと思い、そして昨日婚姻を申し込み、昨日婚約いたしました」

「———は………?」


 どういう、こと………?


「旦那様、到着いたしました」


 御者の声のせいで質問し損ねたラテは、エスプレッソに連れられて渋々馬車から降りる。カプチーノのご機嫌な様子から見て心配はないだろうけれど、どうしても心がざわつく。


『おかえりなさいませ』


 馬車から降りた瞬間耳に響いた声と光景に、ラテはひゅっと息を飲み込んだ。


 ラテの視線の先、そこには12人の美女がいた。

 様々な髪の色、様々な瞳の色、様々な顔立ち、様々な体付き………、全員が揃いも揃ってラテですらも埋もれてしまいそうな美女だった。


 なに、これ………?

 どういうこと………?


「ようこそ、ラテ」


 にたっと笑ったエスプレッソの表情に、ゾゾっと悪寒が走る。

 先程までの優しい声も、表情も、どこか遠くに行ってしまったエスプレッソはただただニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべている。それに、よくよく見てみると、ここにいる美女たちは皆美しいのにどこか人形のような空虚さを孕んでいる。


「あ、の………、」

「僕の愛しの13の妻」

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