第9話
「ラテっ!あなたは既婚者です!!そんな事許されるわけがッ、」
「許さるわ、お母様。だって、わたくしとアフォガート様は白い結婚だもの。ちょうど昨日、結婚の白紙撤廃が成立しているわ」
妖艶に微笑んだラテに、カプチーノが絶望している。
「うふふっ、昨日お姉様のお手紙を読んで、わたくし思ったの。お姉様みたいな可愛くなくてつまんない女性よりも、わたくしみたいに可愛くて可憐な乙女の方が伯爵であらせられるエスプレッソ様にはピッタリだって。だからね、ものすっごく急いで白紙撤廃したのよ」
うふふっと胸を張った彼女は、カプチーノにきらきらと純粋な瞳を向ける。
「お母様、ちゃんと褒めて。わたくし、これでお母様のお言い付け通りにずぅーっとお姉様よりも上に立っていられるわ。ね、わたくしとぉーっても良い子でしょ?」
とろけそうなぐらいに美しい笑みを浮かべた彼女に、エスプレッソが口付けを送る。
その様子を蒼白な表情で見守っていたカプチーノの耳元に、モカはくちびるを寄せる。
「よかったですね、お義母様。エスプレッソ様は近衛騎士にして、現在序列3位の国王陛下にも一目置かれている出世頭のお方だそうです。これで田舎臭い場所ではなく王都で散財し放題ですよ」
モカの言葉にきらっと深緑の瞳を輝かせたカプチーノの表情はみるみるうちに明るくなっていく。
「あらまあ、では“あの噂”は嘘だったのね。あらまあ、よかったわ。ふふふっ、あはははっ!!」
寂しそうに強がりな微笑みを浮かべるモカに見下すような視線を向けたカプチーノは、伯爵にキリッとした表情を向けてぺちゃくちゃと話し始める。
先程までの警戒はどこに行ったのやら。
その口調はとても軽々しく、ラテの婚姻を心から喜んでいた。
「私、娘のことがとても心配で………。ラテはずっと甘やかして育ててきたのでできれば王都まで一緒に向かいたいのですが………、」
「構いませんよ、お義母様。是非ともいらしてください」
トントン拍子に進んで行ったお話はあっという間にまとまり、エスプレッソ、ラテ、カプチーノはその日のうちに使用人の半数を連れてアメリカン子爵邸から出て行ったのだった———。
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