第7話
「ようこそいらっしゃいました、ターキッシュ伯爵」
にっこりと微笑みながら現れたカプチーノの額に青筋が浮かんでいるのを見つめながら、モカはにこりと微笑んだ。
「唐突な訪問にも関わらずの出迎え感謝する、アメリカン夫人」
カプチーノの手を取り甲に口付けた麗しの伯爵に、カプチーノは頬を赤くした。
———流石なものね。
バタバタバタバタっ!!
元気の良い足音に気がついたモカは、良く言えば軽やかな、悪く言えば五月蝿い足音の主に顔を向ける。
陽光を受けてキラキラと光を含む白金の髪に、天真爛漫に輝くアクアマリンの瞳、ここ数年で豊満に育った胸元に目を向けたモカは、一瞬自らの慎ましやかなものに視線を向けてから何事もなかったかのように彼女に微笑みを向けた。
返ってきた無邪気な元気いっぱいの笑みは、彼女が18歳であることを忘れさせるくらいに幼さを感じさせるもので、けれど、その笑みは何よりも誰よりも彼女に似合っていた。
パステルピンクとパステルブルーの、リボンとフリルがたっぷりのふんわりとしたドレスを身につけた彼女は、小走りでやってきてモカに視線を向けることもなくエスプレッソに突進する。
「初めましてっ、エスプレッソさま!!わたくし、モカの妹のラテって言いますっ!!」
庇護欲を誘う見た目の使い方をここ3年で一気に磨き抜いたラテは、エスプレッソの爪の形まで完璧に整っている手を取ると、ぎゅっと自らの豊満な胸に押し付けるようにして握り込み、きらきらと上目遣いでエスプレッソのことを見上げた。
「っ、ラテッ!部屋にいなさいとあれほどっ!!」
カプチーノの焦ったような声を聞きながら、モカはゆっくりと階段の上にいるすっかりとやつれてしまった人に視線を向ける。
頬がげっそりとし、瞳の色を失い、まるで亡霊のようになってしまった彼は、ただ静かに意識があるのかないのかすらも定かではないような表情でモカたちのことを見つめていた。
———アート………、
今すぐに駆け出し衝動を抑えつけたモカは、ラテの前に跪いているエスプレッソに勝利の微笑みを浮かべた。
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