第7話 ウェスタ町散策(ついでに買い出し)
「――ソーセージセットとパン二つ、チーズ、玉ねぎ、キャベツ、トマト、小麦粉、塩、黒コショウで合計2250ボックルです」
レスタショップでの買い物を済ませ、人に見られない場所でアイテムボックスに突っ込んで、俺はウェスタ町を散策することにした。
物価については、女神が1ボックル1円と言っていただけあって、第一の人生で培った感覚が大いに役立っている。
しばらく歩いていると、「ミスレイ雑貨店」と書かれた店を発見した。
ミスレイ雑貨店は三階建てになっていて、その全てが店として活用されているようだ。けっこう広い。
――へえ、いろんなものが売ってるんだな。さすが雑貨店。
店内には、文房具やアクセサリー、インテリア雑貨、調理器具や食器、掃除用具、日用品などが置かれている。
魔法に関する情報があればと思ったが、そういうものは置かれていなかった。
店が違うのかもしれない。――と、そこで。
ゴーン! ゴーン! ゴーン!
どこかから鐘の音が聞こえてきた。
周囲の人の反応を確認してみたが、特に何か動じている様子はない。
タイミングからいって、恐らくお昼を知らせる鐘か何かだろう。
どうやらこの世界も、鐘の音が時間を知らせてくれるシステムらしい。
でもレスタの店内にはあったよな、時計。
「お客様、何かお探しですか?」
俺があまりにキョロキョロしていたせいか、品出しをしていたガタイのいい若い男性店員がそう声をかけてきた。
身長も、170センチ前後だと思われる俺より十センチは高く、威圧感がすごい。
「いえ、すみません。ここへは初めて来たんですが、すごい品揃えだなと」
「ああ、ミスレイ雑貨店はこの村唯一の雑貨店ですからね。お客様の要望を聞きながらいろんなものを仕入れてたら、気がついたらこうなってました」
男性店員は、店内を見回しながらそう笑う。
怪しまれたかと思ったが、純粋に困っていると思って声をかけてくれただけなのかもしれない。
「あの、時計は置いてないんですか?」
「……時計? 時計は時計店でしか扱えないので、さすがにうちでは取り扱いはないです。南地区に店があるので、そこに行けば手に入りますよ」
男の話によると、ウェスタ町は東西南北を分ける大きな通りによって、東地区、西地区、南地区、北地区と四つに分かれているらしい。
ちなみに今いるミスレイ雑貨店があるのが東地区、北地区には領主様のお屋敷があり、許可なく立ち入ることはできないと教えてくれた。
「いろいろと教えてくださってありがとうございました」
「いえ。小さな町ですが、楽しんでいってください」
男は品出し後の木箱を積み上げると、手慣れた様子でひょいっと持ち上げ、「何か分からないことがあればお声がけください」と言い残して去ってしまった。
俺はフライパン、鍋、包丁、まな板、それから大小二種類の平皿とスープ皿、ナイフ、フォーク、スプーンが各五つずつセットになっている食器セット、それから食器を洗うためのたわしと石鹸、タオル五枚、歯ブラシ、を購入した。全部で8600ボックルだった。
スポンジや食器用洗剤、洗濯用洗剤は見当たらなかったので、この世界にはないのかもしれない。
このあとも服屋「クロス」で替えの下着や服、パジャマを購入し(計10600ボックル)、念のために宿屋の場所を確認して予約を入れた。
実際には【ポータブルハウス】を使うにしても、旅人としてここにいる以上、怪しまれないためにも宿泊施設の利用は必須だろう。こういう小さな町では、変な噂が立てば広まるのは一瞬だ。
「えーっと、あとは――ん? あ、あれは――!」
本のイラストとともに「ブクス」と描かれている看板を見つけた。本屋だ。
こういう世界では、本が手に入らないパターンもあるかと思ったが、ミスレイ雑貨店に紙が比較的お手軽な価格で売られていたため、もしかしてと期待していたのだ。ちなみに第二の人生では、本は貴重品扱いだった。
本があれば、この世界のことが分かる。
さらにありがたいことに、店の壁には「魔法書あります」と書かれている。
魔法書! これで魔法が覚えられるぞ!
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