第6話 メシウマ世界、最高だな!
――うっま! ソーセージうっま!
え、まじか。第二の人生では、まずいとは言わないが微妙に味気ない料理が多かったけど。でも今回は大当たりなのでは!?
弾力を感じるソーセージをナイフで切ると、肉汁をはらんだ艶やかな肉が姿を現し、同時に肉とスパイス、ハーブの素晴らしい匂いが湯気とともに鼻腔を刺激した。
口に入れたあとも、その匂いからくる期待を裏切らない、むしろ上をいく豚肉の強いうまみとハーブの爽やかさが口いっぱいに広がる。
しっかり熟成させたハード系のチーズも、味わい深いカンパーニュと相性抜群だ。
「どうですか? お口に合いましたか?」
「ええ、本当においしいです。さすが、人気店だけありますね」
「ありがとうございます。気に入っていただけてよかった……!」
お水を持って回っていた先ほどの少女は、俺の言葉に少し照れながらも満面の笑みを浮かべる。耳がうしろに倒れ、尻尾がパタパタ動いているのがまた可愛い。
こういうの何て言うんだっけ。たしか犬を飼ってた友人が、ヒコーキ耳とか何とか言ってたような。
野菜炒めも、キャベツと玉ねぎの甘さがしっかりと引き出されていて、そこにベーコンのうまみと塩気が程よく行き渡っている。エンドウ豆のホクホクとした食感もたまらない。絶対にまた来よう、うん。
すっかり完食し、会計を済ませるためレジへと向かう。
先ほどの少女は注文を取っている最中で、レジには別の初老の男性が立っていた。
「料理、お気に召してくださったようで何よりです。一部の商品は、道を挟んだ斜め前にある店でもお買い求めいただけますよ」
「ありがとうございます。おいしかったのであとで寄ってみます」
グレーの髪と髭を持つその男性は、この店の管理側の人間なのか、接客しているほかの店員とは違う服装をしていた。
白いワイシャツと品の良いベストがとても似合っており、貴族の屋敷で働く執事のような雰囲気を醸し出している。
――道を挟んだ斜め前にある店……ってあそこかな?
店から出てすぐの道を挟んだ斜め右には、「レスタショップ」と書かれた看板が下げられている店があった。
店の前では、先ほどのソーセージを串に刺した串焼きも販売されている。
「いらっしゃい。見かけない顔だね、旅人さんかい?」
「こんにちは。ええ、先ほどレスタで食事したら、店員さんがこの店のことを教えてくれて……」
「来てくれてありがとな。中にはいろんな商品があるから、ぜひ見てってくれ」
店はさほど大きくないが、店内にはパンや小麦、野菜、肉、チーズやソーセージなどの食材が所狭しと並んでいる。見た感じ、スーパーのような役割もあるのだろう。
――よし、食材はここで調達して帰ろう。
所有ポイントは少ないけど、所持金はまだたくさんあるし。
肉や魚が置かれた木箱の中は、いったいどんな仕組みなのか分からないが、不思議なくらいひんやりとしている。
恐らく、魔法か魔法を使ったアイテムの類なのだろう。
ちなみに今のところ、【ポータブルハウス】内以外ではコンセントの差込口を見ていない。レスタもレスタショップも店内は明るいが、その正体は壁際や天井にぼわっと灯っている謎の灯り――というより光の塊で、家電のようには見えなかった。
――なるほど。この世界自体には、家電はないってことなのか?
だとすると、一層【ポータブルハウス】の存在がありがたいな。
しかし、ポイント不足で家電の類はまだ購入できていない。
今のところポイントの獲得方法はレポートを提出することくらいだし、これは早急に魔法の修得を目指す必要がありそうだな。
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