第5話 パンと野菜炒め、ソーセージとチーズの盛り合わせ
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいね。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
メニュー表、それから木のカップに入った水とおしぼりを置いて、少女はやわらかな笑顔で会釈して去って行った。
水とおしぼり、出るんだ……!
俺は世界各国の文化に詳しいタイプではなかったが、飲食店で水やおしぼりが無償提供される国は、第一の人生を過ごした世界でも限られていたはずだ。
メニュー表には、さまざまな料理が並んでいる。
*****
【食べ物】
麦粥……50ボックル
パン……200ボックル
サラダ……300ボックル
燻製肉とキャベツのスープ……400ボックル
シチュー……500ボックル
野菜炒め……350ボックル
ソーセージとチーズの盛り合わせ……500ボックル
白身魚のフライ……600ボックル
ミートパイ……800ボックル
チキンステーキ……800ボックル
牛肉のステーキ……2000ボックル
【ドリンク】
蜂蜜酒……300ボックル
ビール……350ボックル
赤ワイン……400ボックル
白ワイン……400ボックル
ぶどうジュース……300ボックル
炭酸水……200ボックル
*****
――メニュー、思ったより豊富だな。
この世界には紙幣がなく、日本の「円」と同じ刻み方で1ボックル~10000ボックル硬貨として存在している。ちなみに2000ボックル硬貨はない。
「すみませーん!」
「はーい! ご注文、お決まりになりましたか?」
「おすすめの料理はありますか? この辺りに来るのは初めてで……」
「あっ、でしたらソーセージはいかがですか? ウェスタ
先ほどの少女は、そう言いながらメニューの「ソーセージとチーズの盛り合わせ」と書かれた場所を指差した。
ちなみにウェスタ町というのは、この町の名前のようだ。
「じゃあ……パンと野菜炒め、それからそのソーセージとチーズの盛り合わせをお願いします」
「かしこまりました♪」
開店時間を過ぎたのか、ちらほらと店内に客が入り出した。
メニューを見ながら何にしようかと考えている客もいれば、店員を待つこともなく「いつものな!」と叫ぶ常連っぽい客もいる。
いつの間にか店員の数も増え、お昼時に備えて準備を始めていた。
「おまたせいたしました。パンと野菜炒め、ソーセージとチーズの盛り合わせです」
おお、うまそう……!
パンはハード系で、カンパーニュのような見た目をしている。
注文時には足りるだろうかと考えたが、直径十五センチはありそうなカンパーニュを二センチほどにスライスしたものが三枚載っており、けっこうボリュームがある。
野菜炒めはキャベツと玉ねぎ、エンドウ豆に加えて、少量のベーコンも一緒に炒められていた。艶やかかつ色鮮やかで食欲をそそるビジュアルだ。
そしてこの町の名物だという、「ソーセージとチーズの盛り合わせ」!
ソーセージの長さは二十センチくらいあり、太さも二センチ以上はありそうだ。
うっかりビールを頼みたくなったが、これから町をまわる予定があるため、今は水で我慢することにした。
「ソーセージ、大きいですね。それにめちゃくちゃうまそう!」
「ふふ、ありがとうございます♪ ここのソーセージ、スパイスやハーブが効いていておいしいって人気なんですよ。ごゆっくりお召し上がりくださいね♪」
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