ウスターソースゲーム

 岬だ。

 この2話まったく反響がない。

 頑張ったのにな。

 どうすればいいんだろう? 有名になるって。


 +


『寺子屋遊戯・3話』


「最強の能力って何か考えてみてくれる? 冬林」

 そうですね……部長。

 自分に能力を教えてくれた人は絶対に攻撃しない能力。

「は? 能力を教える……殴られないけど情報売られる。教えない……攻撃される。え?」

 ふむ……?

「詰みじゃん! 何これ」

 教えて即殺す。これでOK。

「うーん……仲間一杯いるでしょ? 絶対この子」

 そっか……。確かに。

 逆に言えば「能力は無理に聞き出しません」って言ってるもんな……。

 んー?

 あれ?

 あれれれれ?

 いや、「是非教えて。教えないと攻撃します」って言ってるの?

 あれー。

 どっちだ……?


 +


《――次週。3話前に1個だけ台詞のあったモブ死す!》


「録画してない!」

「知るか! 何これ。身体が……!」


《うむ。覚醒したな》


 +


【キラカード】


「これ、ランク高いほど危険人物な能力だった……」

 納得。

「Dになってる……」

 はあ。

「偉ぶらない奴の方が偉い……。あかん。2号なのかな」

 養えません。

 そんなに、いい人いないんですか。

「あ」

 何。

「傘からビーム出す能力者とか死んでも嫌!」

 はあ。

「焦げるだけだけど……! 分かった。オーラ能力のおかげで男のランクが浮き彫りになったのよ! 嫌なの、あのゴミ能力者ども! 消去法であんた!」

 あー。

 女の子はランク低いと分かる方が逆に可愛いのか。

 困る。

 困るよ。

 確かにウチの妹を嫁にやれない……アイツらに。

 ルームメイト2人含めて。

「一般人は……?」

「能力ない人? 本当に素質がないのか、あの通知見ても来なかっただけなのか分からないのよ……」

「げ」

「ギャルゲで2個上の先輩ってねえの……」

 知るか。強化してみるかな……。うーん。やりたくないと言うか。

 戦闘する相手いないし。

 戦ってどうすると言うか。勉強出来ないから、せめてヤンキー世界で覇を唱えるしかないんだなあ。あ、ヤバイ。

「夢も希望もないな……」

「公務員ですか……」

「学閥だと思う。一種の」

「うわ……」

「お前ら母校の名前を汚すなよ」

 金目当てなんですけど。

「何でそんな能力?」

「んー。妹に使いたかったのかな……」

 このオーラ能力ってヤバイことに人間ランキング……。

 折れてる。僕含めて全員。

 どうしよう。これ。

 早い内に夢から覚めて幸せなのかな……。



 要の能力――

 5回使うと第2能力として固定されることが判明。


 研究班

「どれも要らんわ」


 第1能力は失わない。

 女子のみ全員能力2つに。


「逆に要る能力って何?」

「答える必要はない」

「予算ガメるために引き延ばしてるだろ」

「あ?」

「詐欺で賠償を要求する。検索してもヒット数少なすぎる。こんな大学学歴にならない」

「げ!」


「やめて……行く場所ない……」

「アリスさん」

「私からも……」

「部長……」

 どうすればいいんだよ。学歴か。

「……上に行きたい?」

 あー。

 中小企業にいいイメージがない。

「まあね……」

「分かってるわね……」

 だからと言ってエリートなあ。なってどうする。

 この研究班? 本当、僕よりうらなり。

 喧嘩して勝てるとは言わないけど。


「希望を奪われた……」

「ブラック会社入社マイナス6年目……」

 僕は8年目か。


「manxome、調べ直そうか……」

 ルイス・キャロルの造語らしいです。

「たぶん私の分解で合ってるのか……。とある敵の男たち」

 ふーん。

「戦争なんかやれるか!」


 +


「甲子園球児たちが空から降って来るサメに喰われながら試合する映画観ない?」

「【ロンリー=ガール】!」

「ごめん。サメライダーって映画もあるけど……」

「要るか! 謝罪になってない!」

「ペンはサメよりも強しのほうが良かった? 主人公は漫画家志望のくのいちで抜け忍。敵は里の追っ手のサメ使い忍者たち。4まで出てる」

「……OK。配給会社を滅ぼす」

「駄目よ。こんな神映画」


 進め 進め サメライダー お前の頭は1つだけ

 進め 進め サメライダー お前の胃袋無限大

 敵は地獄のタコ怪人 醤油とわさびを持って出撃だ

 銀シャリ怪人 空気読め そこは酢飯だ 常識で

 納豆まぜまぜまーぜまぜ これで貴様もご馳走だ


「2時間返せえええええええええええええええええええーっ!?」

「悪の秘密結社イケースか。頭領のイタマーエは逃げたわね……。2あるのかな」

「要らん! 生け簀と板前って何!? サントラ買うなああああああああああああああああああ!?」


 +


「【ロンリー=ガール】……封印したい」

 大人になったら消えるのかな、これ。

 能力封印能力はないっぽい……。


 +


《物語で意外性を出そうとするとな……殺すしかない。これ裏切り。タブー》


「何でネット小説って、ランクSSの4次元ポシェットを標準装備……?」

「自分の力量が分かるって達人よ。――能力値オール255! ボスはオール999!」


《弱い奴が活躍するのがエンタメだ。持久戦は無理なのだ》


「あー。うん。人生で3年くらいがMAX」

「その後は主人公引退。サブキャラ掘り下げで尺稼ぐ」


《うむ。覚醒したな。これで君たちは要のハーレムに入る資格を手に入れた》


 +


「【古物商】の能力が――進化するだと!?」

「俺の【エターナル=ウィークデイ】もか!」

 はい? 僕は?


 +


 駄目だ。

 一般人、オーラ能力がゴミばっかりだって知らない。

 どんなに私弱いんです! ってアピールしても怖がるんだ……最悪。

 オーラ能力者の女の子、オーラ能力者としか結婚出来ない。


 +


《ハーレムエンドが至高だが、ラノベ主人公に惚れる女に魅力があるわけないな》


「男が真人間じゃないと嫌い。真人間はハーレム作らん。厨二バトルもしない」

「……神絵師の美少女5・6人ゲット出来るなら、過去のどうでもいい遺恨やトラウマなんて喜んでぽーい」


《うむ。覚醒したな》


 +


 分かったよ……。必ず会いに行く。ご両親たちを説得して。

 ――全員運命の相手なのか。

 それにしても、この1年間は大恋愛だった。

 この学校はアイツと戦うために作られたなんて。

 皆、無事で本当に良かった。アリスも。

 必ず勝つ。

 ――待っていろ。アール・コッペリア。


「てりゃ!」

「くたばれー!」

「ヒャッハー!」

「MOOON!」

 異能力高校は掛け声だけで今日も何のエフェクトもないのだった。


 しかし――影では僕たちデッドリークラスがサンバドールギネレータをパリイしてアードルゲールクロマールをフェネションしないようにマリゲリフト参加型ガルルラシアを――。


 +


《この世界を頼む――要。お前の妻たちと子供たちはこの「サウンドレス」が守ろう》


 +


『ワシは間違っていた! アレは配給品! 給食利権! タダだから不味くても文句を言わない! 普通程度の味であれば! それで良かったのか、ワシは! 違うじゃろ! パン作りに捧げたこの歳月! 髪もすっかり白くなり老いぼれて! このままでは神の元に行けぬ! 我に寿命と挑戦を! 究極のアンパンを! うぐいすパンを! カニパンを! マヨロール! ベーコンエピを! トルティーヤを! ピザパンを! カレーパンを! 食パンを! メロンパンを! コッペパンを! チョココロネを! クリームパンを! クロワッサンを! フランスパンを! ありとあらゆる惣菜パンを! 風よ吹け! 嵐となれ! 高まるがいい! ワシを究極の職人にして経営者の高みまで連れて行け! くぉおおおおおおおお!』


 レイモンド=ガンバルマン。権利書を取り返す――。

 レイチェル=マラカスボンバー。検察を逆起訴。

 ピリオド=エンド。オーラ能力名も【ピリオド=エンド】。

 ありがとう。3人とも。

 コアラ=マンドリン博士もよろしく頼む。

 本当に厳しい戦いだった。

 離れていても君たちが戦友だったことは忘れない。

 アールコッペリア・マーク2。お前ですら哀れな捨て石に過ぎなかったとは――。

 真の黒幕(28回目)の名は――太田あすなろ。


 +


 ――……馬鹿なっ! ピッパラーピークラスに昇格したこの僕が……! アリスさん、ごめん、部長、ごめん、皆、ごめん……子供が平均8人いるのに――。


「覚悟……! 駄目だ! 何、この気持ち……。これが愛……!」


 +


 これが……天界と冥界の真実なのか……。全ての妻を救うために僕は――!

 あえて世界の――敵になる!


「裏切者め! 追え――!」

「そっちだ!」

「回り込め!」

 負けられない――……!


《よろしい。親衛隊合格――》


 ? 頑張れの反対なーんだ。レバンガさ。いい響きだろう? 行きな。俺の【足切りポーカー】。


 邪神レバンガ ほう。我が名を呼ぶか。恐れを知らぬ。なあ、妻よ。

 堕天使もどきメレイノール 戦いの予感。


「ぐわああああああああああああああ!? 馬鹿な! ガンガラーガ料理大会3連続優勝のこの俺があああああああああ!? オリハルコンの土鍋をやすやすと!?」


 +


 ? ベイビー。しばらく眠ってもらう。

「ぐえ……」

 …………。助かった。

 あなたは一体……。


 ? 鍛えてやるよ。きのえから始まりみずのとをクリアしてようやく「三千世界の白ガラス」様との契約に向かう資格がある。――リディア=ガラス。人を殺人鬼に変えるお前のデルタオーラ能力【魂響】で彼のパーパッパギュオーレの覚醒を助けろ。俺の名は――……。


 木下光弘取締役か……。【足切りポーカー】に【利鞘検定】だと?

 ミカン=セレナーデ天使専門弁護士さんの【どきどきハート】の逆の能力があるなんて――。ランクはぶっちぎりのトリプルS。


 +


 ? 何故、取締役が今までで最強の能力を持っている?

 ? 肩書きの強い奴は死ぬ。つまり更なる強敵が――。

 ? メタ読み禁止だ。ヴァルカン。

 ? 死か。もはや生きることは醜悪だ。


 +


 サース=ガルラ【悪妻弁当】

 ランクTEA。

 ギン=ガルラ【そわそわ】

 ランクOMEGA。

 ボイド=ガルラ【魔女っ娘これくしょん】

 ランクDEADLY。


 異世界の巫女キンカ【四季砲】

 ランクFLOWER。


 マルガリータ坂下ロバート坂上【DIY】

 ランクUNDERFLOW。裏能力【町内会戦争】


 現在の要のランク……NEVER MAX。


 +


 邪神レバンガのまたいとこの親友の甥 契約の対価――今こそ支払ってもらおうか!

「くっ!」

 仲間が35人しかいない!

 最低でも100人! ピンピトレーランクには……。


 +


 くっ! 僕たちクィーンアーク親衛隊の情報が漏れている――? アリス! 今こそ【死亡フラグ回避ペンダント】の能力で――!


 +


 その頃のピリオド=エンド(16歳。超美少女だが男勝り) べ、べべべ、別に俺之介様は、てめえちゃんのためにやってるわけではないんだからね! 要お兄様に言われたから仕方なくサメね――! この戦いが終わったら第8922夫人になれるかなあ……好きなんです、どうしても。お兄様……俺之介ちゃんは……今はいい! 行け、俺之介さん俺太郎の【ピリオド=エンドACT4】!

 バンバラギータと呼ばれる守護霊のような存在(一般人には見えない) OK。マスター。砂糖醤油せんべいを許さないと言ったことを撤回します――。我らの魂を――舐めるな。


 デレルギールの腹違いの兄 まさかあ奴らですら、ただの捨て駒だったとは――。悲しいよ。なあ、俺の愛しいポチ。国際法によりドッグフード禁止されていた犠牲者よ。


 ピリオド=エンド 勝利!

 ACT4 では書き留めで請求書を送って参ります。


 ギン 俺の昔の名は「節約番長」。お前も知っている「領収書上様禁止流」の跡取りだ――。パノステの名前は「ファーヴニル」。猫ちゃんの抜け毛をぬいぐるみの綿代わりにするタイプの能力者に特効。ただし、あみぐるみの場合は呪いが俺に跳ね返る。一長一短ってのは、このことさ――。


 +


 ミシェール=スノーブルーサファイア。

 要の親友。

 ――ネット麻雀で初めて天和を和了る。しかも七対子。

 裏能力名【乙女山荘殺人事件】。

 キャンパス=ミールの【炎の高枝切りバサミ】とコンボすると無限に中年のオッサンの中身のない手柄話を聞き出せる。


 +


 タンポポが 青々茂る 元畑

 河岸や 夏日ぎらぎら 鴨三羽


 +


 モンハントで好きな武器は?

『素手!』


 +


 WHY BOMB BY COOKING


 +


「旦那がプレキュアなんか観てるんです!」

 真の敵 ほう。女児向けアニメを観てはならぬと申すか――。


 +


 ? 来たか。この日が……ぐえー!

 ? くくく。奴は4天王最強。大人しく3人とも降伏します。


 4天王の3人が仲間になった! ラストバトルは近い。


 +


「……サメシリーズの歌が泣けるようになって来た」

「アリスさん。愛しています」

 他の皆も。子供たちも。――僕たちの人生はここからだ。


 真の敵【雷是怨ライゼオンレプリカ】


「奥義! 【燕返さない】!」


 ついに戦いは終わった――。しかし人間同士の内紛が起こる。


 +


 出会い 運命

 死 運命

 別離 運命

 敗北 運命

 輪廻 運命

 呪縛 運命

 運命という言葉を考えた奴を連れて来い


 永遠の孤独 踏み潰して来た敵の方が好きなんだ


 +


《最強の能力か。麻雀牌とサイコロ操作。いや、冗談だ》


「お騒がせしました。皆様。引き続きお楽しみください」

「雀荘に黒服はいません……」


《うむ。RANK UPだ》


 +


《天命天命復天命 春夏秋冬無限か否か 一杯一杯復一杯 一献一献復一献》


 +


 ……? 寝てた。

 どうしようかな。この超能力の学校行ってみるべきなんだろうか。


 高校1年生――

「あの……」

「はい?」

「私……」

 梨村アリス先輩か。新聞部の2年生? はあ。

「私、どうしてこんな風に……」

 はあ。どうしよう。

 

 新聞部2年 梨村アリス

【プロテア=ドリーム】

 並行世界を見れる。


 ……こんな美人さんがどうして僕の彼女に。周りの見る目が痛い。

 どうなるんだ僕。ふーん。アリスの詩と魏志倭人伝か……。天才だなあ。この人。

 へえ。卒業した初代生徒会長の【クリスタライズ】?

 能力をアイテム化して欲しい人に売る? えーと。女の子たち全員にタダで……。

 僕のオーラ能力名は【カカリア】。

 敬語を使って来ない奴をオーラショットで射殺します。こっちも敬語を使うこと。

 皆近寄って来なくなったな……。まあ、いいけど。

 はあ。別れたいですか。

 いいですけどね。身軽だから。大事に使ってください。クリスタル。

 うーん。

 勉強頑張ろう。


 アニメ『2人はワーキングプアリキュア! ぶっちゃけこの給料ありえなーい!』


 面白い先輩に出会った。

 能力を推理出来るまで敵が攻撃して来ないオーラ能力。

【ブラック=カトレア】

 秋川流先輩。2年生。

 所属、園芸部。

 僕もお世話になるとしよう……。


 菊池秀則部長。3年生。

【キング=カルセオラリア】

 衣服を掴まれても離させる。他人でも射程10メートル。


 +


 特に何も起きない3年間だった。最後の1年間は部長として充実していた。


 はあ。付き合って欲しいですか。

 まあ、もう大学生ですし……。


 +


 は。夢か。

 うーん。

 僕、この超能力の学校行ってみるべきかなあ。

 どんな能力になるんだろう。


 +


 あーらよいよい よいよいよいよい 異世界転生どれもゴミ

 チートは何がよろしいですか チート無双 かっこ物理

 チート無双 かっこ魔法 チート無双 かっこ思念

 チート無双 かっこギャンブル 相手が逃げればそれまでです

 これはゲームじゃないんだよ 相手は経験値じゃないんだよ

 お前が経験値になるんだよ 犯罪者なら狩っていい


 真相を教えろ? やめてくれ。死んでもらう。行け――【青銅の盾】。


 +


【ローンクライ】VS【ネバークライ】

【アイドルノイズ】VS【チャンバラ】


【ノーペイマネー】VS【軍配芭蕉扇】


【完全主義】VS【グラグラグラ】


【エンジェルライ】VS【セクシー】


【ダモクレス】VS【ガルガンチュア】


【トゥインクル】VS【灰色オセロ】


【投票ビンゴ】VS【百花繚乱花いちもんめ】


 +


 色んなオーラ能力者を見て来ましたがサメに勝てる実力者は0でした。僕以外。

 妹よ。お前はどうするんだろうねえ……。

 こら暴れるな。【青銅の盾】。お前の発動条件をアレにしてて良かったよ。でなきゃ【少年よサメであれ】に狩られてた――。

《マスター……。マリオネットルーレット開始! ここからが本番だ! ――首無し死体がありました。犯人一体誰でしょう!》

「?」

《答えられたらMARRY ME!》


 +


 ここまでが3話。

 頑張ってるんだけどなあ。

 54話まで書いて、まったく反響がないんだよ……。

 率直に言ってくれ。俺の何が悪いんだろう?

 サメ映画でも観て勉強しよう。

 ペンはサメより強しか。

 1は死ぬほど観たから、2から4を。


 +


 あー。

 創作か。

 10代のガキが嫌いなんだ。俺。

「僕は……」じゃねえんだよ。

 どのアニメの真似っ子だ。その1人称。

 普通「俺」だろ。

 あー。

 4話読みたい? そうかそうか。

 実は「サインとハンコをコピーする能力者」がサブキャラに出て来る。

 死ぬほど強い!

 ここから面白くなるんだよ。


 +


『寺子屋遊戯・4話』


「ここは……?」

 目覚めると。

 そこは人っ子1人いない薄暗い森のすぐ外だったのです。

 ……やっべえ。

 何だこりゃ。

「異世界転生……?」

 しばらく思案。

「ステータス!」

 しーん……。

 何も起こりません。

「アイテムボックス!」

 しーん……。

 やっぱり何も起こりません。

(チート能力ねえ……)

 アレは使えるのでしょうか。

 試してみます。

 その辺に落ちていた木の枝を拾う。

 地面にごりごりごりと書きます――「鶴賀まりん」と。

「良し!」

 地面に書かれた文字に対してわたしは――

「【深淵を覗く契約者】!」

 久しぶりに使う。次の瞬間。地面に書かれた「鶴賀まりん」というわたしの名前のすぐ下に同じような引っ掻き傷で「鶴賀まりん」という同じ名前。

(ふーむ……)

 わたしは直筆で書いたサインをコピーして偽造する能力を持っています。ハンコや拇印が押されていれば、それも可能。

 能力名は【深淵を覗く契約者】。転生特典などではありません。わたしの通ってた高校は生徒全員が超能力者なのです。しかし――

「役に立つかなぁ、これ……」


 +


 森に入る度胸はありません。外周を恐る恐る進んでいました。

「誰かー? 誰かー? いませんかー? ひっ!?」

 バサバサ、と。

 鳥が飛び立つ音。太陽は中天。

(太陽はあるのですね……)

 このまま朽ちていくのでしょうか。誰か出て来い。出来れば文明人でお願いします。

 内心で舌打ちをしたその時。

(!?)

 がさごそと。

 前方の草むらから音。

「何ですか……!?」

 動物? 蛇?

 さほど背の高い草むらではありません。大きな生き物の可能性は低い。

(でも……)

 虎や狼なんぞが出て来たら死ぬかもなー……。どうして戦闘向きの能力じゃないんだ。

(やばいな……)

 わたしは文明人です。あの学校にいた頃も前線に立ったことなどない。

 がさごそと。

 草が鳴る。

 様々な敵の姿を、わたしの頭は想像してしまい――

「あれ……?」

「は?」

 眼鏡が、ずり落ちそうになりました。

「きょ、きょきょきょ、きょじんさんです!」

「あー……いえ。誰ですか。あなたたち」

 現れたのは、5名くらいの――小人たち。粗末な毛皮の服をまとっていて、わたしから見ればつまようじくらいの石槍らしき物を持っています。

「うわぁ、なんじゃこりゃあ!」

「ばけものです! にげるです!」

「てんしんてんしんー!」

「かみさま、おたすけー!」

「えーと……」

 パニックになる小人さんたち。

 逆にわたしの頭は冷静になっています。

(なるほど……)

 とりあえず元の世界ではなさそう。

 言葉が通じるタイプの異世界転生なのか……。この子たちを味方に?

「あの……皆さん?」

「ひっ!」

「しゃ、しゃべったです!」

「にげろ、にげろ、にげろ!」

「かみさま、おたすけー!」

「おれ、しゅうらくにこんやくしゃをのこしてるんだ……!」

 やばいな。

 こいつらに逃げられると、ややこしいことになりそうな。

 とっさに出た言葉は――

「わたしが神です!」

『!?』

 動きが止まった。

 草むらに逃げ込まれる直前に、恐る恐るこちらを振り向く。

(ふむ……)

 小人さんの顔つきは人間のそれに近いですねえ。だけど、妙に子供っぽいと言うか、マスコットっぽいと言うか。ひげなんか生やしてますけど。あんまし人間味がねえなあ。ぬいぐるみが動いているみたいだ。

「かみさま……?」

「神です」

「うそをつけ! ぼくたちのしゅうらくには、すでにかみさまがいるです!」

「どんな奴です? わたしみたいな姿ですか?」

 もしも別の異世界人がいるのなら協力し合えるかも。男だったら……子供産むのか?

 旦那いるのに。

「どうおもうです?」

「いわれてみれば……このひと、ぼくたちにそっくりです!」

「おんなみたいですね。めがへんですけど」

「ふくもへんです。ぺちゃぱいです」

「ぺちゃぱいですなー。しょうじき、あそこがびんびんにならねーです。しょぼいめすです。はらませたいとおもわねえ」

 ……悪口か。一応ガキは2人いるんだが。

(それと……)

 もしかして、これ異世界転生じゃないのではありません?

 えーと……古典文学。作者はスウィフト。

 思い出した。ガリバー旅行記! アイルランドの人です。

 あの有名作品のタイトルが咄嗟に出て来ないとは……。

「かみさま! あなたはかみさまなのですね!」

「ええ、神です」

 どうしましょうねえ……。

「ならば、ぼくたちのしゅうらくにあんないするです! いまいるかみさまとしょうぶして、どっちのほんとうのかみさまか、しろくろつけやがれです!」

「えー……」

 バトル展開は勘弁して欲しいんですけど。


 +


 草むらの中を歩く小人さんたちを見失わないよう注意しつつ、うっかり歩幅が狂いでもすれば踏み潰してしまいそうでした。

(どこまで行くんですかねえ……)

 彼らの集落まで案内してくれるという。

 腹が減った。食べ物を強奪? しかし、腹の足しになるでしょうか。

 小人さんたちの世界。

「ぼくたちをたべるです……?」

「食べませんよ。神は下々には優しいのです」

「なんと……!」

 ひそひそと小声で話し合う気配。おい、急に止まるな。踏んづけるぞ。

「かみさまは、ひとをたべないかみさまなのですね……?」

「人を食べる神様がいやがるのですか」

「いやがります!」

「ぼくたちのしゅうらくのかみがそれです!」

 は?

「ていきてきに、いけにえをささげてるです! あのかみさまをやっつけてくれるなら、かみさまのことをおまつりします!」

 うおーい……。

 大事になってきたんですけど。

 バックレてえな……。

 バトル展開はわたしの仕事じゃねーよ……。

 もっと活躍出来そうな世界に転生させてくれよ。

 ――【深淵を覗く契約者】。

 サインとハンコを偽造する能力しか持たないで、どう立ち回れっちゅーねん。

「みなのしゅう! またせたな!」

「うわー!? きょじんさんです!?」

 そこは木の柵に囲まれた小さな村でした。

 家々の数は100もなさげ。縄文時代のような茅葺きの粗末な住まい。

 わたしの目から見れば、古き良き時代の特撮などに使うジオラマのよう。

 毛皮を纏った小人さんたち。皆、家からぞろぞろ出て来て、わたしのことを見上げています。弥生時代だったら勾玉などの宝飾品を着けていたと聞きますが、そういうキラキラした物も、特にはないようですねえ……。

 知識が怪しかったら失礼。

「おどろけ! このおかたはかみさまです!」

「どうも。神です」

「いまいるじゃしんをたおしてくれます! もういけにえをささげなくてもよくなるのです!」

 うわー! と。

 歓声が波のように伝わっていきました。

「なんじゃ、このさわぎは!」

 一際でかい家から白い髭を生やした小人さんが出てきました。

 恐らく村長か長老ですね。キラキラした飾りをつけてる。

「ちょうろう!」

 当たった。

「べつのかみさまをつれてきました! いまいるかみさまをたおしてくれます!」

「なにをぬかすか! かみをたおすなど、おそれおおいことじゃ!」

 あー、揉めてる揉めてる。

 口から出任せですし。

「よろしい、ならば、かみをたおしてみせろ!」

「そうです! よのなかは、けっかがすべてです!」

 話が纏まっていたっぽい。

 わたしは案内されて、集落から少し離れた岩場に連れて行かれました。

「ここが、かみのおわすすまいです……!」

「ここですか」

「ちょうろう! かみをよぶのです!」

「うむ……。しかし、いけにえをささげるわけでもないのによびだすのは、かみのいかりをかうおそれが……」

「うるせえ、たまなし! おめえ、それでもおとこかです!」

「なにをぬかすか! はーちゃもっちゃうんぱっぱ、こーりゃぽりゃあれーぴょ……」

 怪しい祝詞のような言葉が流れると、場の空気が一変しました。

 神とやらは一体……。

「きたぞ!」

「うわー、かみさま!」

 ずるずると。

 這い出て来たのは何と1匹の蛇でした。

(あれー……?)

 地味な色です。

 わたしの知識が正しいのなら青大将かな? 2股の舌をちろちろさせている。

「ていっ!」

 革靴で頭を踏み砕きます。

 蛇は死んだ。

「おお……! かみが……! かみがしんだ! あらたなかみに、たおされたのじゃ!」

「おお、おお! かたりつがねばです……! このこうけいを! ししそんそんまで!」

「きせきじゃー、きせきじゃー!」

 ぐぅ、と。

 お腹が鳴ります。

「すみません。焚き木は自分で調達しますので火を貸してもらえませんか?」

「? なににつかうです?」

「こいつを食べます」

 蛇の死体を指差すわたし。

『ひょぇええええええええええええええええええええっ!?』

「た、た、た、たべるのですか! かみさまを! かみさまが!」

「たかが蛇ではありませんか。神様がどうだとか、ちゃんちゃらおかしい」

「おい……ちょうろう。どーゆーことだ?」

「こいつがかみさまじゃねーだと……? おめえ、うそをついてたです?」

「ちがう! うそなどついていない! あれはまごうかたなき、かみさまなのじゃ!」

「かみはしんだ! あらたなかみによって!」

「そしてくわれる! でんせつがはじまる!」

「おめえ、かみのこえがきこえるのはじぶんだけじゃー! とかいって、すきほうだいしていたなー? おとしまえをつけやがれです、おらおらおら!」

「うぎゃー! おたすけー!」

「あ……おい」

 白い髭の老人が屈強な若者たちにぼこすかぼこすか。

 ぬいぐるみ同士がじゃれ合ってるようにしか見えねえ。

 あ。

 長老の首が曲がってはいけない方向に。

「じゃあくなかみにつかえていた、あくとうはしんだ!」

「あらたなじだいがはじまるです! かみはひをごしょもうじゃ!」

「おれたちがつぎのせだいのしさいです! このとっけんを、ししそんそんまでどくせんするのじゃ!」

「うぉおおおおおおおおおおお! ちいとけんりょく! よめをにじゅうにんくらいもらうです!」

「おい。あんたら……」

 集落のほうに駆けていく小人さんたち。

 どうしよう。

 彼らの歴史に干渉してしまった気がする。

「みよ! じゃあくなるかみが、あらたなかみによって!」

「このこうけいを、ししそんそんまでかたりつぐです!」

「きせきじゃ! かみのこうせきをたたえるのじゃ!」

「あなたたち、食べ物はどのように確保しておりますか」

「? かりにいくです!」

「おんなたちは、はえてるくさやきのみをとってくるです!」

「ときどき、うみにりょうにいくです! だけど、でっかいさかながいて、きけんです!」

「海ね……」

 魚がでかいというのは、いいことを聞いた。どうにかして網を作りましょう。

「文字はないのですか?」

「もじ……?」

「この世界の1年は何日です?」

「いちねん……? なにそれ……?」

「あなたたちに文字を教えましょう」

『はい……?』

「暦を作りましょう。太陽の高さ、日の出・日の入りを観測するための神殿を建てるのです。あなたたちは畑を耕して生きるのです。家畜も飼って育てるのです」

『ははー! よくわかりませんけど、おおせのままに!』

 狩猟採集民族であるこいつらを農耕民族に。

 そして出来上がる作物の上前を撥ねて腹の足しにしよう。


 +


 数年が過ぎました。

 視界一面に広がる畑……。

(感無量ですね……)

「かみさま、ことしのおそなえです」

「もうそんな時期ですか。ありがとう」


「ごちそうさま。美味しかったですよ」

「ははー! ありがたきしあわせ!」


 +


「おーおー、かかっとるかかっとる」

 海に仕掛けた網。ちょうどいい強度の繊維が見つかった。

 魚を捌くのは鉄で出来たナイフです。

 わたしの手に合う物を小人さんたちに鍛えさせました。

 青銅器文明をすっ飛ばして鉄文明に。


 +


 続く。

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