第36話 『同化』

 ☆評価、誠にありがとうございます(^-^ゞ【タイトルを変更】しました。より分かりやすくする為なので、ご了承くださいませ。


 ◆ ◆ ◆



「危ねぇ……障壁バリアを張っておいてよかったぜ」


 俺は魔竜王の胃袋の中(?)で、額の汗を拭った。あの野郎、しつこいくらい噛みやがって。俺はガムかっての。

 おまけに勝ち誇ったバカ笑い。やかましいったらありゃしない。けど、やっと『反撃』の好機チャンスが訪れた。


「さーて、どうしたもんだか」


『……誰じゃ? そこにおるのは』


 どこからともなく聞こえる『声』……魔竜王じゃない?


「誰だって言われてもな……お宅こそ何者だ?」


『余は……かつて“魔王”と呼ばれたモノなり』


 なんだって……? ってことは、アリシアの親父さんか! 俺の目の前には、今にも消えそうな灯火があった。



「け……けど、アンタは魔竜王アホンダラに『魂ごと』喰われたって聞いたぜ?」


『落ちぶれたとはいえ……余は魔王なり。奴に喰われる直前、魂を“分離”したのじゃ』


 有能じゃん。パクるしか能がない、アレとは大違いだ。魔王は俺に、思いもよらない『提案』を持ち掛けてきた。


『人間よ……余の“残骸”を取り込んではくれぬか?』


「なんだって……?」


 これには俺も驚いた。確かに、俺の『弱肉強食ゴッドイーター』を以てすれば可能だ。


『今の余を取り込んだところで、お主の強化パワーアップにはならんじゃろう。じゃが、奴を弱体化させる事は出来よう』


 成程……少なくとも、奴から『暴食』スキルをひっぺ剥がすことは出来る。


「でも、アンタはそれでいいのか……? 今度こそ『完全消滅』するぞ?」


『お主は信用できる。何より体を張って、余の娘アリシアを護ってくれた。心より礼を述べるぞ。余の娘アリシアを……よろしく頼む』


……なんか、魔王なのにえらく律儀だな。後は俺に任せな。アンタの無念も晴らしてやるぜ。



 ◇ ◇ ◇


『さてサテ、残り物・・・しかいなくなったが、我の“完全体”を祝って喰ってやろうッ』


「ふざけないでよっっ!! アンタは討ってやるっ、今ここでっ!」

「……初めて気が合ったな。まだ『勝算』はある」


 二人の皇女はボロボロだ。魔竜王は悦に浸って、ロクに聞いてなかった。


「へぇ? そんな妙案あんだ?」


「いいか、よく聞け。これがタクミの仇を討つラストチャンスだ。スキルの威力を『調整』しろ。私と全く同程度・・・・・に」


 アリシアは一瞬だけ驚いたが、すぐにレティシアの意図を理解した。


「ハハーン、読めたわ。でも、分かってんの? 成功する確率はごく僅かだし、失敗すれば私たちがお釈迦よ」

「ん? まさかとは思うが、闇の皇女ともあろう者が怖じ気づいたのか?」


 クスクスと笑う二人に、魔竜王が若干イラついた。


『……気でも触れたカ? ヨカろう、そこまで死に急ぐなら望み通りにシテやるッ!』


――ゴゴゴゴゴゴッッ!!


 光と闇のオーラが鳴動する! 魔力量、タイミングがビタ一でもズレると消滅を招く、まさしく『大博打』だ。

 二人から同時に放たれたスキルは『同化』し、未知のスキルとなった! それこそ創作スキルのように。


『なにぃ……!? これはァ……!?』



 ようやく反撃の狼煙のろしが上がった。

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