第32話 『復活』

「――解呪ディスペルっ!」


 俺は渾身の力を込めて、解除のスキルを放った! 石化の女王が、目映まばゆく発光する。女王から感じる膨大な魔力……そりゃ魔王を封じるくらいだしな。


 さらに女王の石化は、予想以上に複雑な保護プロテクトが掛かっていた。万が一、石化を解かれる際の対処だろう。

 女王は全てをなげうって、魔王の封印に踏み切ったのだ。さぞ孤独だっただろうな……後は俺に任せろ!


――キュポーンッ!


 独特の効果音が鳴り、ついに女王の石化が解かれた。思ったより、手こずったな……崩れ落ちる女王を、レティシアが受け止めた。


「母上……!」

「ん……レティシア」


 十年ぶりの母娘おやこの対面……二人は抱き合って、再会を喜んだ。よし、まずは『第一段階』クリアだ。


――ゴゴゴゴゴゴッッ!!


 ほぼ同時に、魔王城全体に震動が走った! 魔王の玉座や瓦礫などが浮遊し、木っ端微塵となる! 俺たちも、身を守るのが精一杯だった。


 やがて空間に割れ目が入り、巨体がその身をあらわにした。二メートルは優に超える巨体、紫の肌色にムキムキの筋肉と二本角、それに凶悪な面構え。


……こいつが『魔王』か。言っちゃ悪いが、アリシアとは似ても似つかない。


「パパ……!」


 今度はアリシアが、魔王の元へと駆け寄った。こちらも十年ぶりの再会か。魔王はゆっくりと目を開け、その鋭い双眸そうぼうでアリシアを見つめた。端から見ると、怖いけど……。


「おぉアリシア……! 随分と久しいなぁ! 汝が、を復活させてくれたのか!?」


「……? うぅん。パパを復活させたのは、あそこにいる人間のタクミ・セナよ」


「ほぅ……ほぅほぅほぅ! 人間……しかもタクミ・セナ! いや、結構結構ッ!」


 魔王は俺を見つめながら、何度も頷いた。なんだ……?


「パパ……?」


「よもや、我の封印を解く人間が現れようとは。実に愉快なりッ! アリシアよ、再会を祝して我が胸に飛び込んでまいれ!」


 両手を広げる魔王。アリシアは飛び込むどころか、魔王を鋭く睨みつけた。次の瞬間、にわかに信じがたいことを口にした。



「……誰なの・・・?」



 え…………?


 俺はアリシアが、何を言ったか分からなかった。それは、レティシアと女王も同じだろう。言われた魔王本人も、きょとんとしていた。


「な……何を言っておるのだ、アリシア? まさか父の顔を忘れなんだ……?」

「そんなワケないでしょ。私には解る……アンタはパパであって、パパじゃない・・・・・・……!」


……そーいや、女王や将軍も似たような事を言ってたな。


「な……何を根拠にそんな事を? 我が魔王でなければ、何だと言うのだ?」


「それはこっちの台詞よっ! パパは自分のことを『余』って言うわ! 『我』なんて聞いたことがない! アンタ、何者・・なの……!?」


 成程……案外、あっさりと襤褸ボロが出たな。やはり、クセまでは誤魔化せないか。本人に成りきるなど不可能だ。


 しかし魔王でなければ、は何なのか……?

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