第31話 『魔王』
「アレが
上空からアリシアが指差す。今俺たちは将軍から譲り受けた天馬で、異界の空を飛んでいる。これが便利で、地上にひしめくザコ敵をスルー出来たのは大きい。
俺たちは周囲を警戒しながら、地上に降りた。いかにもラスボス戦という雰囲気で、辺りは不気味なほど静まり返っていた。
「――母上っ!」
玉座の前に石化した一人の女性。パッと見、レティシアと区別ができないほど美しい。
『――来てはいけませんっ!』
脳裏に直接、“声”が響いた。今のは一体……? どうやら『声』は、二人にも聞こえたようだ。
「この声は……! 母上なのですかっ!?」
『……レティシアなのね? こんなに立派になって……』
「この
俺が訊くと、レティシアはこくりと頷いた。
「母上が異界へ赴いたのは、今から十年前……私が八歳の頃よ」
成程、道理で若いわけだ。ってことは、かなり長い間石化してるんだな……。
「母上っ、助けに
『レティシア……それに皆さん。私の為によくここまで来てくれました。大変感謝しております。既にご存知かと思いますが、私の石化を解けば魔王が復活してしまいます……』
「それは、将軍ってヤツから聞きました。ですが、貴女をこのままにしておくわけにはいかないでしょう」
『……いえ、そうではないのです』
女王はゆっくりと『否定』した。どういう意味だ……?
『魔王は……以前には感じなかった、“得体の知れない”の気配を感じます。それに日に日に、封印を“破る”力も強くなってます。私には、封印の他に“予知”スキルもあります』
……女王って、何でもこなすんだな。そりゃ国王は立場ないわ。
『……魔王が封印から解かれた際、“底知れぬ闇“が世界に
「そんな……ここまで来て、母上を救えないなんて……!」
「ていうか、私のパパはどーなったのよ!? 異界まで、戻ってきた意味がないじゃない……!」
絶望し、ガックリと膝をつく二人の皇女。俺はそんな二人の肩にポンと、それぞれ片手を置いた。
「「タクミ…………??」」
二人とも目を充血させながら、俺を見上げた。俺は二人を不安にさせないよう、ハッキリと告げた。
「大丈夫だ。俺がなんとかしてみせる」
「タクミ……けど、一体どうやって……?」
「でも、あなたなら本当になんとかしてくれそう。最後まで、タクミに頼ることになりそうだわ」
俺は静かに頷いて、破壊の聖剣を取り出した。狙うは、創作で編み出した『解呪』のスキル。あらゆる状態異常を『リセット』できる。
解呪に破壊の聖剣の魔力を上乗せすれば、女王の石化は解けるだろう。問題はその後だ。
魔王は、あの将軍が心酔してた。少なくとも、話が通じる相手ではありそうだ。後は俺の『説得』次第だな。
……気になるのは、女王や将軍が言ってた『底知れぬ闇』だ。一体、魔王に何が起きたのか……?
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