第30話 共存への路

 すみません! 遅くなりましたm(_ _)m


 ◆ ◆ ◆


 将軍から放たれた投擲とうてきと俺の『弱肉強食ゴッドイーター』が、正面からぶつかった!


――ゴゴゴゴゴゴ……!


 あまりの衝撃に空間が歪んだ。投擲は物理法則を完全に無視して、俺に直進した!


「その槍は、一度放たば必殺必中ッ! 何者にも避けることは叶わぬッ!」


 だろうな……想定済みだ。つまり、避けなければ・・・・・・ノープロブレム!


 俺の前方空間に亀裂が入り、割れ目から『穴』があらわれた! これぞ俺のジョーカー、アリシアの『終焉の焔』もこれで凌いだ。


 虚空渦との違いは範囲こそ限定されるが、対象を完全に『取り込める』点だ。モノによって『吸収』に時間が掛かるが、完全に取り込めば以降『自分のスキル』として再利用できる。


 やっぱ、“補食”系のスキルは強ぇわ。将軍の十字槍は、吸い込まれるように穴に消えた。


「…………ッッ!?!? 何が……えぇい、戻れッ!」


 慌てて槍を呼び戻そうとするも、将軍の手元に戻ることはなかった。狼狽ろうばいする将軍。その隙を見逃す俺ではない!


「――刀光剣影エインへリアルっっ!!」


 無防備の将軍に渾身の一撃カウンターを放つ! 将軍は大技の反動で動けないし、槍を失い防ぐ手立てもなかった。


「フッ……」


 最期の瞬間、将軍は微笑わらっていた。その表情かおは満更でもなかった。



 ◇ ◇ ◇


 将軍がたおされたことで、固有結界は消滅した。あれほどいた軍勢は、きれいにいなくなった。恐らく将軍のスキルにより、遠方から召還されたのだろう。


 レティシアもアリシアも、満身創痍まんしんそういだった。本当によく耐えたもんだ。俺は二人をねぎらいつつ、収納に備蓄してた回復剤ポーションを渡した。


 そして、俺たちの目の前には……大の字に倒れている将軍の姿。全身ボロボロで、もう目もロクに見えてないだろう。


「……見事なり、タクミ・セナ。こうなるとは、最初から解っていた……将軍ジャックキングに敵おうハズがない。それでも……うぬは『全力』で、小生と向き合ってくれた。悔いはないぞ……」


「オッサン……」


「用心せよ……。封じられたとはいえ、我は魔王様の『声』を聞いていた。だが……何か『違和感』を感じた。上手くは言えぬが、魔王様であって魔王様ではない・・・・……そんな感じがしたのだ」


「……何よそれ。どういう意味?」


「……詳しくは分かりませぬ。ですが、封印を解く際は、細心の注意を払われたし」


 意味深なことを言う将軍。違和感ってのは何なんだ……? ブルルル……将軍の愛馬が近寄ってきた。仇討ちかと思ったが、戦意はまるで感じなかった。


「どうやら、タクミ殿を『新たな主人』と認めたようだ。異界屈指の名馬……魔王様の元まで、一っ飛びですぞ」


「オッサン……俺は魔族でも、オッサンみたいなのがいるって分かった。人間と魔族が、“共存”できるみちを探ってみるよ」


「フフ……来るといいですなぁ……。そんな夢のような時代が……」


 オッサンは粒子となり、そらへと還った。後は任せな……アンタの分も背負ってやるよ。

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