第29話 『ジョーカー』

「――くぞォ!」


 Aryaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッッ!!


 天をも揺るがす勢いで、怒涛どとうの軍勢が俺たちに押し寄せてきた! ヤベェ……こりゃガチでやりにきてるっ!


「……おいおいっ!? いくらなんでも三人相手に大げさだろっ!?」


「それだけ、タクミを認めてるってことよ!」


「固有結界か……! 本体ジェネラルを叩かなければ、無尽蔵に湧いて出るぞ!」


 厄介だな……! 将軍を狙おうにも、軍勢に阻まれてるし!


「タクミ、取り巻きは私たちで引きつけるわ!」

「タクミには近づけさせないっ!」


 レティシア、アリシア……すまねぇ。俺もすぐに合流するからな! 俺は『収納』から、破壊の聖剣を取り出した。

 

「ほぅ? この世に二つもない業物を引っげるとは。ならば、我も見合う宝具モノを見せようぞ!」


 将軍が一喝すると、身の丈以上の異様な十字槍が出現あらわれた! 見た目は槍斧ハルバードに近い感じだ。


「フフッ……かつて異界を制圧した時、魔王様から賜った逸品モノよ。うぬの獲物にも引けを取らぬぞッ!」


――ヴォンッ!


 たった一振りで、猛炎が俺を襲った! こりゃ闇竜のブレスにも匹敵するぞっ!? 俺は破壊の聖剣をかざし、全力で防御するも貫通した!


「今のに耐えるかッ!? ならば二つッ!」


 今度は十字槍を天にかざす将軍。黒い雷鳴がとどろき、俺は『三重加速トリプルアクセル』でなんとかかわす。このオッサン、下手したら魔王より強くね……?

 俺にまともに入れたのは、このオッサンが初めてだしな。しかも闇竜と違って、開幕から●しに来てるし。


 攻めなきゃやられる! そう直感した俺は、破壊の聖剣を振るった。


「――熱閃ファイアボルトっ!」


――ヴォンッ!


 切っ先から放たれた凄まじい一撃が、空を裂いた! 『闇』を吸収した聖剣は『回復機能』こそ失ったが、その分破壊力に特化していた。


「……………………」


 これには、流石の将軍も沈黙した。今ので仕留められたらベストだったが、如何せんまだ破壊の聖剣の扱いに慣れてなかった。


 こういう乱戦では味方を巻き込むので、切り札の『虚空渦ブラックホール』は使えない。かと言って、極小版ではこれだけの規模は呑み込めない。


 故に俺は、最後の『切り札』を切ることにした。虚空渦がエースなら、このスキルはまさに『ジョーカー』だ。


「フフフフフ……」


 将軍は小刻みに震えていた。それが恐怖によるものか、あるいは武者震いか定かではない。


「十二分に評価していたつもりだが、まさかその上をいくとはな……。このような益荒男ますらおと死合えるとは、毀誉褒貶きよほうへんこの上なしッ!」


 俺は直感した……将軍も『勝負』に出ると。


益荒男タクミよッ、これぞ我が乾坤一擲けんこんいってきの一撃よッ! でやぁあぁああああああああああああああああッッ!!」


 将軍から放たれる投擲とうてき! 定番通り投げ槍できたか! アレに打ちつには、コレしかない。アリシア戦では『試作版』だったが、今こそ解放する!



全て・・を喰らえ……弱肉強食ゴッドイーターっっ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る