第27話 『婚約破棄』(ざまぁ回②)

「お前たちッ、出番だよ!」


『――イエス、マムッッ!!』


 エレナの号令で、どこからともなく武装集団が突進してきた! 流石に部屋じゃ狭いので、城の外に場所を移している。


「ちょっとエレナっ、なに人任せにしてるのよ! アンタが直接、戦いなさいよっ!」

「ハァ? 頭脳派インテリのアタシが、働くわけねーだろボケッ!」


 そーいや冒険者時代も後列で、あれこれ指示してたな。リーダーのレティシアに注意され、しぶしぶ補助のスキルを使っていた。


「あーもぅ! 暑っ苦しいのよ、アンタ達っ!」


 アリシアが巨大な火球を放つ! が、武装集団の厚い壁に阻まれた! 恐らくエレナが、号令で強化バフを掛けているのだろう。


「どーしたよアリシアァ! もっと気張らねぇと、アタシに届かねぇぞッ!?」

「安全圏で、なにのたまってんのよっ! 『お友達』がいなくなった時が、アンタの最期よ!」


 アリシアが次々と火球を放つも、軍勢はまるで衰えない。それどころか、勢いを増している!?


……まずいな。このままだと最悪、圧し切られるぞ。


「アリシアは手を出すな、って言ってたけど……」

「ええ……ここで貸しを一つ、作っておくのもいいでしょう」


 俺とレティシアが前に出ようとするも、アリシアはこれを手で制した。意地を張ってる場合か!


「オイおいアリシアァ!? 素直にお仲間に媚びたらどうだッ!? 無知無能ポンコツの私めを、助けてくだひゃいってなァアァ!?」


……完全に調子に乗ってるな。アリシアもそろそろ限界だろ。俺は『二重加速ダブルアクセル』で、アリシアの元に駆けつけた。


「タクミ……!? 何よ、アンタまで私を笑いにきたの?」

「あのなぁアリシア……お前がやられるのを、指くわえて見てろってか?」


 俺は優しく、アリシアの頭を撫でた。


「……ぁ……」


「少しは頼れよ、お前の『仲間』を」


「おうオウッ!? 相変わらずイキってんじゃねーの、王子様(爆笑)いくらオメーでも、この物量かずをどーにか出来ると思ってんのかッ!?」


 何やら喚いているエレナを放置し、俺は無言で片手を頭上に上げた。瞬時に膨大な熱量が打ち上がり、無数に分裂して有象無象を蹂躙じゅうりんした!

 以前、ダイヤにお見舞いした『分裂弾バレットスピリッツ』の強化版だ。分裂した光線は追尾ホーミング付きで、魔族の頭部や心臓を穿うがち一撃で絶命した。


 あれほど居た軍勢は、きれいに掃討された。残るはエレナのみ……まー故意ワザと狙わなかったんだが。


「なななな……」


 イキ残ったエレナは、金魚みたく口をパクパクしていた。


「何なんだお前はぁあぁああああッッ!?!? チートにも程があんだろぉおぉおおおおッッ!?!?」

「何を今さら……知ってたろ? 俺は『まとめて倒す』のが得意だって」


 なんせダンジョンでは、こいつもダイヤもロクに働かなかったからな。まー俺的には、色々と『創作』を試せたワケだが。


「エレナァ」

「――ヒッ!?」


 静かだが、●気のこもった声にエレナは硬直した。


「信用して貸した、小生の軍勢を台無しにしてくれたなぁ?」

「そ……それはタクミがやって……(冷や汗)助けてダ~リン♪」


 エレナが、最後の悪あがきをするも……


「エレナァ! 貴様との『婚約』を破棄するッッ!!」


「ずっごぉおぉおおおおおおおおんッッ!?!? そりゃねぇだろハ◯ッ! アタシの『安泰した』余生はどーなるッ!? 将軍でもなければ、誰がお前みてぇなハ◯になびくかってンだ……ペッ(#゜Д゜)」


 あっさりと『本性』を現すエレナ。まぁそんな事だろーと思ったよ。


「そういえば、冒険者時代もギルドから多額の借金をしてたな。表向きは『研究費用』だったが、な夜な『男遊び』に興じてたとか噂だったぞ?」


……マジかよ。ロゼさんが知ったら、異界まで取り立てに来そうだ(ガクブル)


「つーか、いきなり『婚約破棄』ってナンだよッ!? ラ◯ベじゃあるめーし! ハ◯にはしこたま働いてもらわねーと、◯職になったアタシが困るだろーがッ!」


「……この期に及んで、開き直るとはな。普通に働いたらどうだ?」


「アタシは『働けない』病気なんよ。冒険者時代にギルドにナ◯ポ申請したら、ロゼに『頭おか』呼ばわりされて危うく出禁食らいそーになったゼ」


「思いっきり不正受給じゃねーか! G3働いて」


「人のことG呼ばわりすんなやッ、気分悪いわ!」


「「「G3ごめんね(゜∇^d)!!」」」



 ◇ ◇ ◇


 その後、G3の姿を見た者はいない。何でもバックれようとしたところ、将軍の手の者にとっ捕まり『地下労働施設』に強制送還されたとか。まぁアレがどーなろうが、興味もないが。

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