第20話 アリシア再び

 俺は瀬名 拓海せな たくみ、底辺作家で異世界に『召還』された。俺を召還したのは闇の皇女アリシアで、目的は人間界の地上を支配する為だ。


 そのアリシアは俺を『スカウト』すべく、直接王国に乗り込んできた。結果的に惨敗して、逃げ帰ったわけだが。


 俺は帰還の方法を探すべく、相棒で皇女でもあるレティシアの城に世話になっている。なんでも国王から国を救った『英雄』と祭り上げられ、厚待遇を受けていた。


 てか俺、まだ異世界こっちに来て、一日しか働いてない。ええんかこれで? しかもどういうわけか、俺は今玉座・・に座っている。


「タクミ殿、今日の予定じゃが……」

「ていうか、いつまでこんな茶番・・を続けるんッスか?」


 アリシア撃退後、なぜか俺と国王の立場は逆転していた。王城の復旧に忙しいハズだが、俺とレティシアが中心にやっている。


「ハハハ、タクミ殿。ワシに再建という大役など、こなせるわけなかろう」

「単なる公務放棄でしょうがっ!? ちゃんと国王らしく振る舞ってくださいよ」


「タクミ、それは難しい。父上は女王である、母上の尻に敷かれてたわ」

「うぅ……レティシア、それは言わんでぷりーず……」


 皇女むすめにここまで言われるとは。王族としてのプライドないんかい。とはいえ、レティシアの手腕は大したものだ。王城の再建は、予想以上のペースで進んでいる。


 俺は補助サポートをする傍ら、色々と動いていた。まず魔族は、あれから動きはない。闇の皇女であるアリシアが敗れたので、ショックを受けたのだろうか? そのまま大人してほしいもんだ。


 続いて、本来の目的である『帰還方法』……こちらは難航している。やはり、資料館がやられたのが痛い。おまけに過去の『異邦人』についても、ほとんどデータがない。参ったね、こりゃ……


「もももも……申し上げますっ!」


 突然、兵士が血相を変えて、玉座の間にきた。


「何事じゃ? ワシは今、イジけておるのじゃぞ?」

「国王っ、それどころではありません! 闇の皇女を名乗る者が、タクミ殿に会わせろと門の前に居ますっ!」


「「なっ…………!?!?」」


 俺とレティシアは、顔を見合わせた。闇の皇女って、アリシアだよな? なんで今さら……? 俺とレティシアは話し合い、慎重に通すように言った。


 もし少しでも妙な動きをすれば、今度こそ拘束しなければならない。



 ◇ ◇ ◇


「ハロータクミ、元気してた?」

「お前……ふざけるなよ?」


 あっけらかんとしているアリシアを、俺は睨みつけた。レティシアも、険しい表情になっている。


「……今さら我が城になんの用だ? 返答次第では、タダでは済まさんぞ……!」


「なんだか無性に、タクミの顔が見たくなってね」


 アリシアはレティシアをガン無視しつつ、俺を見つめた。


「俺はお前に用なんてないけどな。そもそも異界を放ったらかしてまで、何しに来たんだ?」


「そ、それは……」


 何故か口ごもるアリシア。


「どうした? 言いたいことがあるのなら、ハッキリと申してみよ!」


「つ……」

「……つ?」


 レティシアに気圧けおされ、アリシアは口を開いた。



「追放されたのよっ、異界をね! タクミ、アンタに敗れたせいで!」


…………『追放』だって?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る