第19話 『破壊の聖剣』

「さぁタクミっ、耐えてみせなさい! 終焉の焔メガフラッシャーっ!」


 やたら中◯病っぽいネーミングだが、威力は洒落にならん。俺は渾身の力を込めて、聖剣を振りかざした!


「――刀光剣影エインへリアルっっ!!」


 中◯病には、中◯病をぶつける。正面からぶつかる光と闇、状況は全くの五分だ。


「なんですって!? 私の『終焉の焔』に似てる……!?」


 せやろか? つい属性やん。とはいえ、やや押されぎみだ。ここで俺は、体力を全く消耗してない事に気づいた。

 これは聖剣の恩恵か? ならば、これを活用しない手はない!


「いい加減、諦めたらっ!? あなたは頑張った方よ、人間にしてはねっ!」


 勢いを増す終焉の焔。このままでは押し切られる……!


「ダメだ……呑み込まれる! うわぁあぁああああっっ!?!?」


 闇の波動は俺を聖剣ごと飲み込み、渦を巻いた。ガクリと膝をつくレティシア。


「タクミっ! そんな……」

「ハァ……ハァ……手こずらせてくれたじゃない?」


 肩で息をするアリシア。


「――貴様ぁ! 刺し違えてでも、貴様は私が討つ!」


「ハァ? 聖剣(笑)もないのにどーやって? 消耗はしても、今の貴女を片付けるなんて訳ないわ。にしても、妙ね……」


 アリシアはレティシアをあしらい、まだ・・渦巻いてる『闇』を見つめた。


「アレは対象を排除したら、消滅するんだけど。こんな現象初めて……っ!?」


 アリシアは、収縮・・していく闇を見て驚愕した。これには、レティシアも目を見張る。何が起きているのか、皆目検討もつかないだろう。


――俺以外・・・は。


聖剣つるぎよっ、闇を喰らいて刃と成せぃ!」


 青天井の玉座の間に響く、俺の中◯病丸出しの叫び。アリシアが目を剥く。


「まさか……あり得ないっ! 闇を吸収・・してるとでもいうの……!?」


「待たせたな。やっと動けるようになったぜ」


 俺はいかつい『闇の刃』を肩に預けながら呟いた。元『聖剣』は闇を吸収した影響で、原型を留めないくらい変形していた。


 美しい刀身は見る影もなく、ごっつい刃となった。それでいて驚くほど軽量かるく、常時『複数行動』が可能だ。

 某RPGを彷彿ほうふつさせる、通常では絶対にあり得ない『破壊の聖剣』誕生の瞬間だ。もっとも聖剣と言っても、当事者以外は誰も信じないだろうが。


「こんな事が……こんな事がぁ……!」


 アリシアはガクブルしながら、顔面蒼白だった。終焉の焔で大きく消耗したので、もう勝ち目はない。彼女の膝は笑っており、足元は濡れていた。まさか失◯したとか?


「さてと」

「――ヒッ!?」


 俺が視線を移すと、アリシアは尻もちを着きながら必死に後退りした。


「今回だけ・・見逃してやる。二度とちょっかい出すなよ?」


 俺が破壊の聖剣を一振りすると、空間に切れ目が入った。


「なっ……!? 次元を斬り裂いた……!?」


 エレナはもう訳が分からない、と半狂乱だ。


「こ……今回は大人しく、引き下げってあげる! けどタクミっ、私はあなたを諦めないわ!」


 捨て台詞を残してアリシアは、セレナと共に逃げるように裂け目に飛び込んだ。やれやれ……一昨日来やがれってんだ。


「タクミ、私は信じてたわ。あなたがやってくれると」

「あーレティシア……悪ぃ。聖剣を台無しにしちまった」


 バツの悪そうな俺に、レティシアは微笑んだ。


「タクミ、あなたは王国を救ったのよ。それに聖剣は、あなたに譲ろうと思うわ」

「え……? でも王国に代々伝わる剣なんだろ?」


「あなたの方が、聖剣を使いこなせるもの。それにその大きさじゃ、元のさやにも納まらないしね」


 成程、言い得て妙だ。俺の『収納』スキルなら、キレイに仕舞えるしな。


「んじゃ有り難く『借りとく』わ。それに今後の『創作』次第じゃ、元の姿に戻せるかもしれないしな」



「おぉタクミ殿! よくぞ憎き魔族の親玉を打ちのめしてくれた!」


 忘れた頃に出てくる国王。アンタ、今まで何してたんだ?


「いやぁワシも参戦したかったが、肝心な時に腹が痛くなっての? 戦いたかったのに残念じゃ」

頓智トンチの効いた大ボラ、吹かないでください。それより、帰還方法については任せましたよ?」


「タクミ殿、それがですな……」


 大臣が言いにくそうに挙手した。


「先の激戦で、王城の資料館が大破しまして……復元は『不可能』と専門家は申してます……」


 結局、そうなるのね……。となると、アリシアは見逃して正解だったな。元々、アイツに召還されたワケだし。


「タクミ、焦る必要はないわ。一つずつ、こなしていきましょう。私は『どこまで』も、あなたについていくわ」


「全てはここからじゃ! 『光の勇者』殿、万歳っっ!!」


 なんで何もしてない奴が締めるねん。しかも、ドラ◯エとF◯を適当に足したネーミング(呆)

 とはいえ、ようやく俺は『スタートライン』に立った。これから何が起きても、俺は『帰還』してみせる!



――俺の『創作』はここからだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る