第16話 『召還ガチャ』

「俺を『スカウト』するだって……?」


「……意味が解らないけど、お生憎さまね。タクミは既に……っ!?」


「ちょっと黙っててくれない? 私は彼と話してるんだから」


 アリシアが一瞥いちべつしただけで、レティシアは沈黙した。


「お前……何をしたっ!?」


「いちいち騒がないでよ。話が進まないから、黙ってもらったのよ。私の『具現化』スキルでね」


 具現化……だと?


「アリシア様は『イメージ』しただけで、空間に干渉できるのよ。凄いでしょ?」


 エレナが、我が物顔のようにドヤる。俺の『創作』スキルに似てる……!?


「さて……どこまで話したかしら? そうそう、タクミを私たち魔族側に引き抜くってところね」


「……あいにく俺は、もう冒険者に籍を置いてるんでね。そもそも魔族おまえたちの目的はなんだ?」


 俺はずっと気になってた事を訊いた。まず『敵』を知らなければ、対処しようがない。


「フフ……それはねタクミ。あなたに我が父、“魔王”の『封印』を解いてもらいたいのよ。地上を支配する為にね」


「なっ…………」


 あまりにも『ストレート』な要求に、俺は言葉を失った。さらにアリシアの『衝撃的』な話は続く。


「そもそもあなたをこちら側に『召還』したのは、他ならぬ私なんだから」


 は…………? 話が急展開すぎて、俺の思考が追いつかない。確かに俺は、なんでこの世界に居るのか気になってたが……。


「……召還だって? そんな『定番』でもあるまいし」


「この私が、ウソを吐いてるとでも? 私は異界で、強力な『波長』を感知したのよ。その波長の持ち主は、どうも『異なる世界』に居ると判明したわ」


 アリシアは、腕組みをしながら続けた。


「そこで私は、大規模な召還をり行ったわ。私の思惑通り、“異邦人”が多数来た。でもねぇ……」


 大きく嘆息するアリシア。


「何をどう勘違いしたか知らないけど、ほとんどが使い物にならなかったわ。それでも私は、根気よく召還を続けた。そして、百回目の召還でやっと『大当たり』を引いたのよ」


……んな『ガチャ』じゃあるまいし。


「……なんで俺が『大当たり』なんだ? それにダイヤどもは、ガチで俺たちを●そうとしてたが」


「それは失礼したわね。私もエレナからの報告を聞くまで、半信半疑だったわ。で、直接この目で確かめたくなったのよ」


「……そりゃ出張、ご苦労だな。で、なんで俺が魔王サマの封印解除と関係してるんだ?」


「あなたは人間とは思えないほど、スキルを使いこなしてるわ。あの闇竜を退けるくらいだもの。どうもあなたの『創作』スキルに、秘密があるみたい。私と組めば、父の復活も早まるわ。それに……」


 アリシアは、レティシアを鋭く睨んだ。


「私の父は、そこの女の『親族』に封じられたのだからね……!」



……レティシアの親族だって?

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